今日は大事な大事な睡眠の質を上げるために、影響する要素について書きたいと思います。その要素は主に三つ、体温とホルモンと音です。意識してこの3要素を整えれば、睡眠の質が上がり、ぐっすり眠りやすくなると思うので、皆様の知識にお届けしたいと思います。
まず体温からです。寒い日が続いていますが、皆様は湯船に入っておられるでしょうか?睡眠に入る1.5~2時間前くらいに一旦深部体温を1度ほど上げておくと良いと言われています。布団に入って眠りにつくまでの間に体温は0.2~0.4度程下がります。深い眠りに落ちてゆくに従ってさらに体温は下がってゆくのです。
赤ちゃんが眠たくなると、熱くなるのは経験された方も多いと思います。前持って体温を上げることで眠りやすくしているのです。睡眠の質が高い程、睡眠中の体温の低下幅は大きくなります。湯船で温まってから床に就くことがポイントになるのです。
我々の体温の調節で、汗以外で体温を下げるのは皮膚血管です。深部で温められた血液が、体表面の皮膚血管を通る時に、体外に熱を伝えて体温が下がります。この機能を高めるのが皮膚血管の拡張です。血管内皮細胞から分泌される一酸化窒素は、血管平滑筋を緩めて血管が拡張するのに大きな役割を果たします。
しかし一酸化窒素は、加齢と共に産生が少なくなってきます。一例が加齢による勃起不全です。海綿体の血管が拡張しにくくなると、硬く勃起出来なくなってくるのです。ED治療薬には、血管の一酸化窒素産生を増やすものがありますが、現時点では、これを入眠のために使うことはできません。
蒼野は1~2週に一度は近くの日帰り温泉に行って、炭酸泉に入ります。実はこの炭酸泉が一酸化窒素を増やしてくれる作用があるのです。確かに温泉に入った日はよく眠れます。炭酸泉の重炭酸イオンが皮膚から吸収され、皮膚血管に入ると、二酸化炭素濃度が高まります。血液中の酸素と二酸化炭素濃度のバランスは重要ですので、バランスを補正するために血管壁からの一酸化窒素の分泌が促され、皮膚血管は拡張するのです。
炭酸泉はぬるめのお湯ですが、20分ほど入っていると皮膚が真っ赤になり、血管が拡張していることが実感できます。これは蒼野の様に一酸化窒素分泌が低下してきている中高年の方が実感しやすい様です。普段使いするのであれば、シュワシュワ泡の出る入浴剤を使うと、眠りやすさが高まるはずです。
次はホルモンです。睡眠を高めるホルモンはメラトニンということはご存知の方も多いと思います。朝太陽を浴びて目に光を入れたり、リズム運動したり、食事をしたりして高まるセロトニンが、夜になると変化してメラトニンになります。セロトニン分泌の16時間後にメラトニン濃度が高まり、眠たくなるのです。
ですから睡眠には、規則正しい毎日の朝散歩と朝食が大きく影響します。健康には体内時計に従って一定のリズムで生活することが何よりも大事です。1日の中で様々なホルモンが時間毎に分泌されて、我々の身体機能やパフォーマンスを高めてくれるからです。ですから休みの日もペースを崩さず、同じ時間に起きて散歩することが毎日気持ちよく過ごす決め手になります。
いつも寝不足なので、休みの日は遅くまで寝たいよという方も居られると思いますが、普段の寝不足は、日中のパフォーマンスを下げ、同じ仕事をしても時間が掛かってしまいます。残業で時間が無くなり、帰るのが遅くなり、睡眠時間を削るのでは悪循環です。60歳までであれば、最低6時間半は眠れると良いと思います。
子供の時は8~10時間、睡眠時間が必要なように、60歳過ぎると平均的には6時間くらいの睡眠時間になる方が多い様です。代謝や活動量が減れば、必要とする睡眠時間も短くなります。また睡眠時間には個人差が大きいため、必ずしも7時間眠らなければいけないといいうことも無い様です。昼間眠くなくて元気でいられる自分の睡眠時間が把握できると良いですね!
週の中で睡眠時間がバラバラになると、ソーシャルジェットラグという時差ボケの状態になり、戻すのに平気で3日くらい掛かってしまうので、休みの日に多く寝る人は、週の半分のパフォーマンスを下げてしまっていることになります。
メラトニンは、目の網膜が光を感じると分泌が止まってしまう性質があります。夜の照明は明るくない優しい光にしておく方が寝やすくなりますし、就寝後は真っ暗にするのが重要です。寝る前のスマホやパソコンなどのブルーライトは特に良くないです。使う時にはナイトモードで使ったり、ブルーライトカットを行なっておくことがお勧めです。間違ってもベッドにスマホは持ち込まないことです。
昼間の覚醒の時のホルモンはオレキシンです。オレキシンは明け方から血中濃度が上昇し始め我々を覚醒させます。集中力などパフォーマンスにも大きく影響し、基礎代謝も上げてくれるホルモンです。その分泌には適度なストレスが必要です。適度な緊張がある方がパフォーマンスが高まりますが、昼間にオレキシンを高めることが関わっているのです。
しかし夜間のストレスは、覚醒を促し眠れなくなってしまいます。昼間にはオレキシン、夜間にはメラトニンというメリハリが大事なのです。そういう意味で昼間の心身のストレスは重要です。体のストレスでもオレキシンには同様の影響があるため、昼間眠くなったら体を動かすというのはとても良い方法です。昼間にはグタグタせずに、活動的に動きましょう。これは定年で引退後の生活では特に重要です。昼間に頭や身体を使って活動的に動くことで、夜間ぐっすり眠れるのです。
そしてストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールも目覚めと共に上昇し、血糖値を上昇させ、体内時計によって夕方から下がってくるホルモンです。しかしコルチゾールはストレスがある状態では下がってきません。皆様も心配事がある夜は眠れなかった経験があるのではないでしょうか?
慢性ストレスへの対処は、脈が早くなる様な運動です。日頃から運動を生活習慣に取り入れられていれば、運動後にコルチゾールはすぐに下がる様になります。慢性的なストレスの時期には、昼間の運動は特に重要です。
最後は音環境です。うるさい中では眠れませんし、かといって無音の部屋では自分の心臓の鼓動が気になったりします。安眠できる音は、1/fゆらぎと呼ばれる、自然が奏でる音です。風の音、雨の音、波の音や虫の音、鳥の鳴き声などが癒しの音となるのです。
スマホのアプリにもこうした音や音楽が聴けるものがあります。蒼野も毎晩自然の音を聞きながら眠っています。自分の体感では、心が落ち着く様に感じます。もし聴覚過敏があって眠れない人は調音パネルの設置が有効の様です。不要な雑音を吸収する調音パネルは、使うと有意にメラトニン分泌が増えるといいう研究があります1)。
使ったことがないので調べてみましたが、調音パネルは1枚6万円くらいします。何枚か必要な様なのでちょっと気合が入りそうです。しかし聴覚が過敏で、物音ですぐに目が覚めてしまうような人にとっては、素晴らしい発明の様です。
ぐっすり眠るのは人生の幸せの一つですよね! 寝室の環境を整えるのも、幸せになる方法の一つだと思いました。炭酸入浴剤や、自然音は簡単に取り入れられますので、ぜひ皆様もお試し頂きたいです! 年と共に寝室にこだわりが強くなっている蒼野でした。
参考文献:
1)Effect of the newly developed articulatory panels (Aural Sonic): A pilot clinical trial. ; Glycative Stress Research 7(2) 123-131,2020
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