要介護の”傾向と対策”!

2023/03/01

 蒼野としては皆様が全員、ピンピンコロリの人生が全うできたら良いなあと思わない日はありません。しかし日本人は平均で男性9年、12年の要介護生活を送った後に亡くなると言うのが実情です。少子高齢化が進む社会では、高齢になって介護が必要になると、自分が働けなくなるばかりか、介護する人の労働機会も奪ってしまうことになります。

 今後ますます働き手が少なくなってゆく日本の社会を成立させるためには、一人ひとりが要介護にはならず、可能であれば死ぬまで働いて、自分の食べる分は自分で稼ぐと言うのが理想ですよね! 蒼野自身も、妻はもちろん、娘たちや若い人たちの負担にならないように、ずっと元気で働き続けたいと思っています。

 もちろん要介護になりたい人はいませんよね! 介護度が高い要介護4、5ともなると介護者は一日中介護している人が半数を占めてきます。2016~2017年の1年間を見ても、介護のために離職した人は9.9万人もおられるそうです。家族の負担は大きく、家族の人生を変えてしまうことにもなりかねません。

 厚生労働省のデータによると、2021年の日本人の要介護の割合は、70-74歳: 10.0%、75-79歳: 16.1%、80-84歳: 26.4%、85-89歳: 41.4%、90歳以上: 62.1%となっています。そこで今日は、その原因と対策について考えてみましょう。令和1年の内閣府の発表した高齢化の状況によると、要介護の原因としては次のように男女差があります。

 男性の場合1位脳卒中23.0%、2位認知症15.2%、3位フレイルサルコペニア10.6%、4位骨折転倒7.1%、5位、6位が同率で心疾患と関節疾患で5.4%です。男性の場合、メタボなどの生活習慣病が原因となる、脳卒中や心疾患が28.4%と多く、筋肉関節系の衰えから動けなくなる人は23.1%です。

 女性は1位認知症20.5%、2位フレイルサルコペニア15.4%、3位骨折転倒15.2%、4位関節疾患12.6%、5位脳卒中11.2%、6位心疾患4.3%です。認知症が男性よりも多いのも特徴ですが、筋肉関節系の衰えが目立ち、43.2%が運動系の障害で要介護となっています。

 生活習慣病については、それこそ生活習慣に気をつけるしか無いのですが、運動器疾患に関しては、やはり日頃の運動習慣が重要になります。2017年の運動習慣のある者の割合は、65~74歳で男性48.6%、女性39.8%、75歳以上で男性43.3%、女性38.0%でした。

 歩いたり、体操したり、ちょとした筋トレ習慣をつけるだけで、特に女性においては、要介護になる人が減るのでは無いかと思います。運動し慣れない人にとっては、ハードルが高いのでしょうね。年取ってから始めるのは大変だとは思うので、できれば50代くらいからは少しずつ運動の習慣をつけてもらいたいものです。

 運動と言っても、しっかり良い姿勢で過ごすことと、毎日しっかり歩くことが基本になると思います。加齢と共に筋力低下は進みます。特に下肢で進みやすく、進んでしまうと歩くのが億劫になり、ますます歩かなくなります。その悪循環が続くことで、転倒しやすくなり、大腿骨骨折で寝たきりになったり、尻餅をついて腰椎圧迫骨折になる人が本当に多いのです。

 歩くときの筋肉に注目してみましょう。主な筋肉は次の通りです。

1、大腿四頭筋:大腿部の前面にある4つの筋肉で、膝を伸ばす働きをします。

2、ハムストリングス:大腿部の後面にある3つの筋肉で、膝を曲げる働きをします。

3、大臀筋:お尻の大きな筋肉で、膝を伸ばす働きをします。

4、腓腹筋:脚の下半分にある筋肉で、つま先立ちや歩行中に脚を伸ばす働きをします。

5、腰椎部の筋肉:脊柱の両側にある筋肉で、体幹を支えて歩行時の姿勢を維持します。

 そして特にサルコペニアで衰えやすいのが、1~4の筋肉です。これらが協調して、スムーズに動き、バランスを保つためには関節の可動域を保っておくことも、とても重要です。運動習慣の無い人は、関節可動域を広げることから取り組むのが、怪我も防げるためオススメです。

 蒼野は若い頃から身体が硬く、大学のサッカー部では、膝の高さまでしか曲がらない前屈や、上を向くだけの後屈が、飲み会の芸になっていました。しかし最近は身体の動きは前屈と後屈、側屈と身体回しであることを習い、毎日行っています。今では前屈で、指の根元まで床につくようになり、姿勢も良くなった気がしています。

 サルコペニアは、基本的には年齢とともに進行する疾患で、一般的には50歳を過ぎた頃から起こり始めます。しかし、人によっては40歳代からサルコペニアが発症することもあり、特に運動習慣の無い女性では、更年期後に急速に進行することがあるので要注意です。

 運動習慣は、気合を入れて、時間をとってやろうと思うと、ついつい後回しになったり、モチベーションが下がって、できなくなる確率は高いです。最初は何かのついでにやると言うのが良いですね。歯を磨きながら片足立ちしたり、踵上げしたり、テレビのCMの時は椅子からの立ち上がりを3回だけする、とかから始めると良いと思います。

 朝軽くジャンプするのも良いですね。家用のトランポリンも最高です。関節への刺激で、ヒートショックプロテインが分泌され、変形性関節症を予防してくれます。既に痛い場合には、ジャンプは強すぎるので、水中歩行や、痛く無い範囲のウォーキング、エアロバイクなどが良いでしょう。

 サルコペニアの予防には、大きな筋肉から動かすのが効率が良いです。少し運動に慣れてきたら、スクワットやランジ、踵上げや足の横上げ、片足立ち1分ずつなどのレジスタンス運動を加えてゆくと良いですね(健康長寿ネット参照)。とにかく継続こそ力です。できない日があっても良いので、せめて週2回くらいはトライしましょう。毎日の散歩を日課にしましょう。

 タンパク摂取は1.2~1.5g/kgを目標にしましょう。骨も同時に強くしたいので、小魚などのカルシウムや日光浴(朝散歩=ビタミンD)、納豆(ビタミンK )やプルーンなども重要です。基本的にはバランスの良い和食や地中海食を心がけたいですね。食材の種類を増やすことが、腸内細菌にとっても重要です。

 良い睡眠が筋肉維持には不可欠です。睡眠中に筋肉の回復と再生を促す成長ホルモンが分泌されますが、睡眠不足だと、成長ホルモンが減少し、筋肉を分解するコルチゾールの分泌が促されてしまいます。筋トレで鍛えるだけでなく、しっかり修復する時間を持つことがとても重要です。

 もちろん喫煙や飲酒はサルコペニアを助長します。意外に知られていないのが、肝臓と筋肉の関係です。飲酒や糖質過多などで肝機能が低下すると、エネルギー供給が低下し、筋肉内の分岐鎖アミノ酸(BCAA)が動員され筋肉量が減りやすくなります。また有害物質の代謝が低下すると、筋肉内でアンモニアなどの有害物質を処理する際に、BCAAが多く使われてしまいます1)。

 脂肪肝などで、肝臓に負担をかけないことは、筋肉を維持するのにも重要なのです。加齢と共にアルコールの代謝機能も低下しますので、アルコールも糖質も、少量だけ楽しむように変えて行けると良いですね! 閉経後、骨粗鬆症も筋力低下も起こしやすい女性は、特に注意してほしいと思います。

 先日の法事で、1ヶ月ぶりに90歳の母親に会い、要介護という言葉に、敏感に反応してしまう蒼野でした。いろいろ書いたものの、なかなか毎日運動してもらうのは難しいですね!

参考ページ: 
内閣府  令和元年版高齢社会白書 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_2_2.html

健康長寿ネット  レジスタンス運動の効果と方法  https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/resistance.html

参考文献
1)Consilience in sarcopenia of cirrhosis. ; J Cachexia Sarcopenia Muscle 3(4); 225-237, 2012

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