不老不死の薬は、何時の時代においても、人類が欲しがってきた魔法の薬というイメージですよね! しかし近年、抗老化に有効と言われる薬がいくつも発見され、すでに発売されていたりします。今日はその中でも、NMNについて書いてみたいと思います。
これはビタミンB₃からつくられた食品成分で、その発端となったのは、米国ワシントン大学の今井眞一郎教授らが、マウスを使って実施した研究です。生後5カ月から1年間、マウスにNMNを飲ませたところ、ヒトの60代に相当する17カ月齢になっても、体の代謝が保たれて中年太りせず、若いときと同じように活発に動き、骨格筋、肝臓、脂肪において加齢に伴って起こる遺伝子の変化が抑えられるなど、抗老化効果がみられました。
NMNを飲ませたマウスは、飲まなかった対照群に比べて、血糖値を下げるインスリン感受性が高く、老化に伴って低下する目の網膜の機能、骨密度、免疫細胞が保たれるなどの抗老化効果も確認されています。
また他の研究グループによる、マウスを用いたアルツハイマー型認知症の研究では、NMNを10日間飲ませただけで認知機能が回復し、記憶を司る脳の海馬の細胞死が、健康なマウスに近いレベルに回復した、と報告されているのです。動物実験ではありますが、健康長寿を皆様にプロデュースしたい蒼野としては、放っておけない情報です。
我々の身体の中には、老化や寿命を制御している酵素があり、サーチュイン(長寿遺伝子)と呼ばれています。NMNは、体内に入るとすぐに、NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)という、私たちが生きていく上で欠かせない補酵素に変換されて、サーチュインの働きが活性化することが発見されました。
哺乳類にはSIRT1(サーティワン)からSIRT 7まで7種類のサーチュインがあります。老化を制御する上で特に重要なのが、糖や脂肪の代謝を改善し神経細胞を守る働きがあるSIRT1です。視床下部で、SIRT1の機能を高めた遺伝子改変マウスは、老化による症状や病気の発症が遅くなり、メスでは16.4%、オスでは9.1%、健康寿命が延びました。
マウスにおける16%の健康寿命の延長は、ヒトの13~14年、9.1%は7~8年に相当します。2021年時点での日本人の健康寿命と平均寿命の差は、女性が12.06年、男性が8.73年でした。もしもヒトの視床下部でSIRT1の機能を高められれば、健康寿命と平均寿命との差を埋められる可能性があるのです。
視床下部のSIRT1の機能を高める方法で、現在わかっているのは、食事の摂取量を減らすカロリー制限、ファスティング、少しきつい運動や温熱や寒冷の刺激、そしてNMNの摂取などで、NADを増やす方法です。中でも万人が実践しやすいのは、若返り薬であるNMNを摂る事ではないでしょうか?
このような米国を中心に進んでいる、最先端の抗老化研究の成果を、生活に取り入れてゆくことで、老化による症状や病気の出現を遅らせ、多くの人がピンピンコロリを実現できる時代がすぐそこまで来ている、と今井教授は語っています。ちょっと夢のある話ではないでしょうか?
今井教授によると、NMNと以外にも有力だと考えている抗老化研究があるそうです。まずはNADの合成に不可欠なNAMPT(ナムピーティ/ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素を高める方法があります。
血液の中のNAMPTは加齢と共に減少しますが、この酵素を維持するように遺伝子改変したマウスは、老齢になっても若いマウスと同じように活動的で、眠るべきときに熟睡し、記憶力・認知機能も保たれました。オスでは普通のマウスと差がなかったものの、メスの健康寿命は13%も延びたそうです。
それ以外にも、臓器や組織にたまっている老化細胞を除去する『セノリティクス』(老化細胞除去剤)、免疫抑制剤のラパマイシンの誘導体である『ラパローグ』、糖尿病薬としても用いられている『メトホルミン』なども、抗老化作用のある薬物になりますが、これらは処方薬としての開発段階にあり、誰もが使えるサプリメントとして、NMNの役割は大きいと考えられます。
NMNカプセルは既に市販されており、蒼野も色々物色しています。まずは自分で試してみないとと思っているからです。しかし現在市販されているNMNカプセルの品質は玉石混交とのことで、値段もピンキリです。月に数万円から5000円台までで様々です。とりあえず、1万円以内の物を飲んでみているのですが、飲み始めて4ヶ月くらいですが、他にも色々な事もやっているので、正直よくわかりません。
インスリン抵抗性を改善するため、糖尿病の人にはより効果がある可能性があるようです。飲んでいると、24時間周期で、きちんと起きる、寝る、といった体の活動と非活動の状態をきっちり整える作用があり、夜になると自然に眠たくなる作用があるようです。そう言えば、蒼野も寝つきが良くなったり、中途覚醒が少なくなった感じはしています。
NMNに関しては、まだヒトに対する抗老化のデータが揃っている訳ではなく、今もまだ研究中です。マウスの研究から考えると、体内のNADが減少し、様々な老化現象を実感し始める50代くらいから使うとよいのではないか。1日100~300㎎程度が妥当ではないか、と考えられているようです。
NADはサーカディアンリズム(概日リズム)に合わせて変動しているため、最も活動量の多い日中に上がるように、NMNカプセルは朝か午前中に飲むのが勧められています。現時点では、どのメーカーのNMNが良いというデータは無いため、信頼性の薄い(安い??)NMN カプセルをわざわざ飲むよりは、体内のNADを高める、筋肉トレーニングや有酸素運動を続けたり、微量なNMNが含まれるブロッコリー、枝豆、アボガド、トマトを毎日の食事に取り入れるという方法の方が良いのかもしれません。
NADを増やし、SIRT1の機能を高めることが、健康寿命を大幅に延ばすカギを握ることは間違いないことのようです。自分の健康寿命を伸ばして、死ぬ間際まで、元気に活動したいんだ!と思われる方は、カロリー制限、ファスティング、少しきつい運動や温熱や寒冷の刺激、そしてNMNの摂取などにトライしてみましょうね。
日本で開発が進められ、品質の面でも優位に立つNMNは、海外製品は少なく、iHarbなどの海外通販サイトではいつも売り切れ状態です。リーズナブルな日本メーカーのものを、これからも試していこうかなと思っている蒼野でした。
参考書籍: 開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線 今井 眞一郎
LIFESPAN 老いなき世界 デビッド・A・シンクレア