血圧低下を促すライフスタイル!

2023/02/23

 昨日テレビで、落語家でタレントだった笑福亭笑瓶さんが、大動脈解離で急死されたと言うニュースを知りました。ご冥福をお祈り致します。66歳、蒼野と4つしか違わないことに、少し動揺しました。死因は急性大動脈解離とのこと、原因には動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症などが考えられます。本当に怖いですね!

 まさに生活習慣病による突然死のパターンなのだと思います。今日は基本に立ち帰って、中でも一番のリスクになる、高血圧について考えてみたいと思います。『高血圧は沈黙の殺し屋』と言われています。自覚症状はほとんど無いのに、ある日突然起こる脳卒中や心血管疾患、大動脈解離などの病気で突然死する原因になるからです。

 基本的な高血圧の基準値としては、収縮期が140mmHg以上、拡張期が90mmHg以上です。2017年のデータでは、日本人の約4300万人が高血圧であると推定され、その3人に1人、1400万人は高血圧に気づいていません。適切にコントロールされている人は1200万人、450万人は放置していて、1250万人は薬物コントロールが不良です。

 血圧は加齢と共に高くなる傾向となります。40~70歳の高血圧有病率(140/90mmHg以上または降圧薬服用中)は、男性で60%、女性では40%。閉経後は女性も高くなり、75歳以上では、男性の74%、女性の70%が高血圧に該当する事態となっています。

 周りの人みんなが高ければ、大丈夫かもと思ってしまいやすいかも知れません。笑瓶さんは2017年に一度、大動脈解離を経験しておられますが、幸い2週間で復帰できています。以来3~4箱吸っていたタバコをやめ、血圧コントロールを開始、生活習慣も気をつけておられたとのことです。大動脈解離は発症すると治療にかかる前に6割以上が亡くなる病気ですので、今回の再発を乗り越えることは難しかったのでしょうね!

 もちろん血圧が高い人が全員発症する訳ではありませんが、血圧が高いと、動脈の内壁にかかる力は強くなります。血管の内壁についた傷が広がり、大動脈の内壁と外壁の間が剥がれて血液が流れ込むことで、大動脈から臓器へ出てくる血管が閉塞したり、大動脈の血流が障害されて、全身に血が巡らなくなったり、場合によっては薄くなった外壁が破裂したりするのです。本当に重篤な病態です。

 高血圧がある場合は、もちろん血圧の薬を飲む、と言うのが一番簡単です。しかし薬で下げ過ぎの副作用が出る場合もありますし、生活習慣が整わなければ、かえって血圧変動が激しくなり、余計に血管に負荷がかかる場合もあります。軽度の高血圧であれば、理想は生活習慣で、自然に下がると言うのが一番です。

 血圧目標値は、個人の状態や年齢によって変わるので、まずはクリニックで相談するべきです。症状が無いからと言って、働き盛りの方が150を超えるような血圧のまま、生活改善だけに取り組むと言うのはやはり自殺行為だと思います。健診で引っかかった方は、ひとまず薬を飲み始め、生活改善で下がって来たら止めれば良いと思います。

 血圧の薬を飲み始めたら、一生飲まなければいけないと言うのは嘘です。それで躊躇して飲まないと言うのは、危ないことを知っておいて下さい。蒼野もデスクワーク中心の生活になった50代後半から血圧が140を超え始め、薬を飲み始めました。

 事故後に生活改善を徹底し、運動や睡眠が増えてから、体重は6kgくらい落ちました。半年くらいすると、立ちくらみするようになり、測ってみると血圧が100を切っていました。以来降圧剤は止めて現在に至ります。今朝の血圧も120/72mmHgでした。

 それでは血圧を上げないためにはどんな生活をしたら良いのかについてご紹介します。もう一度調べてみましたが、食事、運動、睡眠、ストレスコントロールという、当たり前の4点に集約されます。

 まずはよく言われる減塩です。37のランダム化研究のメタアナリシスで、減塩が血圧や脳卒中、心血管病に及ぼす影響を評価したところ、減塩により収縮期血圧が平均で1.27mmHg、拡張期血圧が平均で2.63mmHg低下していました1)。

 さらに減塩だけではなく、血圧を下げる様々な食材を取り入れるDASH食を組み合わせるとさらに血圧は下がります。減塩とDASHダイエットを組み合わせたランダム化試験では、併用群では、高Na群と比べると20.8mmHgも収縮期血圧が下がっていました2)。

 DASH食で増やす栄養素は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、たんばく質。特に減らす成分は、飽和脂肪酸とコレステロールです。野菜(イモ、緑黄色野菜)キノコ、果物、低脂肪の乳製品、魚介類、豆(大豆製品やナッツ)、海藻を増やし、肉やコレステロールが多い食品を減らすことが重要です。

 特におやつとしても取り入れやすいナッツも、それぞれ論文による降圧効果が確認されています。降圧効果は『ピーナッツ』収縮期血圧2.4mmHg/拡張期血圧1.8mmHg低下3)。『アーモンド』2.2mmHg/1.6mmHg低下4)。『ピスタチオ』2.8mmHg/1.6mmHg低下5)。『カシューナッツ』3.5mmHg/1.9mmHg低下6)。などが報告されています。ナッツはカロリーが多いので、太って血圧を上げないよう、注意は必要です。 

 定期的な運動習慣は血圧を大きく下げてくれます。特に有酸素運動が有効です。運動によって、心臓や血管の機能が改善され、交感神経活動が低下し、副交感神経活動が増加することで、血圧が下がるのです。多くの研究ありますが、13のランダム化比較試験を分析したメタアナリシスでも、平均で収縮期血圧3.84mmHg/拡張期血圧2.58mmHg低下していました7)。

 睡眠の影響も大きいです。こちらも多くの研究があります。睡眠不足や過剰な睡眠時間が、高血圧のリスクを増加させます。睡眠不足によるストレスの増加、交感神経活動の亢進、コルチゾールやアドレナリンが増加、炎症反応による血管内皮機能を低下などが、血圧上昇につながります。

 一方、過剰に寝る人の場合も、活動量の低下などから肥満や糖尿病などの代謝異常に繋がり、血圧を上昇させることが分かっています。一般的には7~9時間の睡眠時間の確保が、高血圧予防に有効です。4810人を10年間追跡した研究でも、睡眠不足は高血圧リスクを2.1倍に上昇させています8)。

 血圧コントロールにはストレスコントロールは必須です。ストレスは交感神経活動を増加させ、心拍数を上げ、血管を収縮させるため、血圧が上昇する要素しかありません。ストレス軽減のためには、柔軟な考え方、リラクゼーション法やマインドフルネス、運動、十分な睡眠などの方法が有効です。

 本当に身近な生活習慣病でもある『高血圧』。放置して、運が悪ければ、突然死の原因になることは意識しておいてほしいと思います。今日書ききれなかったので、明日は血圧が高い人が避けるべき習慣について書きたいと思います。

 生活習慣で降圧剤が必要なくなるのを、自分自身で体験した蒼野でした!

参考文献:
1)Effect of lower sodium intake on health: systematic review and meta-analyses. BMJ. 2013 Apr 3;346:f1326. doi: 10.1136/bmj.f1326.

2)Effects of sodium reduction and the DASH diet in relation to baseline blood pressure. ; N Engl J Med. 2001 Jan 4;344(1):3-10.

3)Peanuts Lower Blood Pressure in High-Risk Individuals. ; J Nutr. 2016 Feb;146(2):389S-394

4)Effects of tree nuts on blood lipids, apolipoproteins, and blood pressure: systematic review, meta-analysis, and dose-response of 61 controlled intervention trials. ; Am J Clin Nutr. 2019 Mar 1;109(3):865-882

5)Pistachio nuts reduce systolic blood pressure and vascular responses to acute stress in healthy adults. ; Asia Pac J Clin Nutr. 2016;25(2):399-405

6)Effect of cashew consumption on blood pressure and lipid profile: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. ; J Hum Nutr Diet. 2020 Oct;33(5):641-651

7) Effect of aerobic exercise on blood pressure: a meta-analysis of randomized, controlled trials. Annals of internal medicine, 136(7), 493-503. 2002

8)Short sleep duration as a risk factor for hypertension: analyses of the first National Health and Nutrition Examination Survey. Hypertension, 47(5), 833-839. 2006

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