今日は論文もたくさん出ていて、身体に良いことが確実な食べ物、ナッツのお話を書いてみます。ダイエットの時のおやつでも、蒼野も患者様によく勧めています。ナッツと言っても種類があるので、何をどれくらい食べたら良いのかまで知っている人は少ないかもしれません。
ナッツは1日20~28g食べると、様々な病気のリスクを低下させてくれる事がわかっています。有名な論文としては、30,000人以上のキリスト教アドベンティスト派信者を12年にわたって追跡した結果、ナッツを週に少なくとも5回食べる者は、週に1回未満しか食べない者よりも虚血性心疾患による死亡リスクが48%、非致死性心筋梗塞のリスクが51%低いという結果が出ています1)。
もともとこの信者の集団は喫煙率が低く、飽和脂肪が少ない、健康的な生活をしているものが多い中で、この違いが出たというのは、ナッツの効果はとても大きいと考えられたのです。他の研究でも、同様のナッツ摂取で、虚血性心疾患の死亡リスクが39%低いことが検証されています2)。
86000人以上の看護師を14年間追跡した前向き研究でも、週142g以上ナッツを食べる群は、月に28g以下の群よりも、虚血性心疾患の罹患リスクが35%低かったこと3)や、21000人以上の男性医師による17年間の研究で、週に2回以上ナッツを食べる群は、ほとんど食べない群に比べて心臓突然死が53%低くなることも報告されています4)。
ナッツは心血管病の薬と言っても良いくらいの効果がありそうです。高血圧や糖尿病、高脂血症や肥満など、血管病リスクがある人は、ナッツ習慣をつけておくと、急な心臓発作が防げる確率は上がると考えられます。
またナッツはその他の炎症が関わる疾患や老化にも効果がありそうです。ナッツや種子を頻繁に食べる集団の炎症性バイオマーカーの値は低くなります5)。もちろんこれは動脈硬化を防ぐ効果にもつながるため、心血管病を予防することにもつながっていると思われます。
先ほどの看護師の研究では、週5回28g以上のナッツ摂取で、2型糖尿病の発症リスクは27%低下、週5回のピーナッツバター摂取でも21%低下していました。ナッツは高カロリーで太りやすいイメージなのに不思議ですよね。これにはナッツに含まれるオメガ3を中心とした良質の不飽和脂肪酸、食物繊維、マグネシウムが影響していると考察されています。
実はナッツを食べても太りません。アドベンティスト派信者の研究でも、看護師の研究でも、習慣的にナッツを摂取する者は体重が低い傾向があることが示されています。それを検証するためにスペインで行われた8865人の28ヶ月の前向き研究でも、ナッツを食べる方が体重増加のリスクが31%低く、増加しても増加幅が半分で済むことが判明しています6)。タンパク質や食物繊維などの栄養豊富なナッツが、インスリンを安定させ、食欲を満たすことで、食べ過ぎを防ぐ事が指摘されています。確かにダイエットに最適なおやつですね!
これまでの大規模研究をレビュー分析した結果、1つかみのナッツを毎日食べる人は、まったく食べない人に比べて、30年間の全死因死亡率が20%低いことや、週1回未満しか食べない人でも、まったく食べない人に比べれば死亡率は7%低くなることが示されています。内訳としては、がん、心臓疾患、呼吸器疾患による死亡率に大幅な低下が認められました。平均余命で考えると、ナッツの常食には1.5~2.5年寿命を延ばす効果があるとされています。
ナッツが脳機能に影響する研究も出てきています。ナッツを食べることで、瞑想時やゾーンに入った時に活性化するγ波が多くなることが分かっています。γ波は認知処理、情報保持、学習、感覚などの向上に寄与するとされており、食べるだけでγ波が増えるのは嬉しい事です。
ロマリンダ大学の研究で、被験者にカシューナッツ、クルミ、ペカン、アーモンド、ピーナッツ、ピスタチオをそれぞれ食べさせて、脳波を測定したところ、最もγ波が増えたのはピスタチオだったそうです。深い睡眠や免疫系の健康に関わる脳波であるδ波はピーナッツで増えていました7)。
マウスの実験では、脳萎縮が進んだアルツハイマーモデルマウスに、人では手のひら一握り30g相当のクルミを1年間食べさせる群と普通の餌の群で比較したところ、クルミ群で認知機能テストの成績が上昇したとの報告があります。試験管内では、クルミ抽出物が、アミロイドβの塊を溶かす作用が確認されており、クルミの認知症予防効果が期待されています8)。
ナッツは豊富な抗酸化力を有するフラボノイドを大量に含み、抗炎症効果を有することから、動脈硬化を予防し、老化を遅らせ、心血管疾患のリスクを下げ、癌を予防し、脳にも到達して脳機能改善に効果がある可能性が期待できます。そしてダイエットにも有利な健康長寿食材です。
中でもクルミはαリノレン酸というオメガ3脂肪酸が特に豊富で、抗炎症作用、心臓保護作用、脳機能保護作用、動脈硬化予防、老化予防に効果が有ると考えられます。ナッツの中で含有糖質量も最も少ないため、ダイエット効果も高いナッツです。
ピスタチオにも、豊富に抗酸化物質が含まれています。ルテインやゼアキサンチンと呼ばれるカロテノイドの一種が多く、特に目の老化性疾患(加齢黄斑変性や白内障など)に有効です。ブルーライトのダメージも軽減してくれるので、スマホ依存かもという人には是非取り入れて欲しいナッツです。
またピスタチオ摂取によって、「総コレステロール値」と「LDLコレステロール」が減少し、「HDLコレステロール」が増加したという研究結果もあります9)。ピスタチオに含まれているアミノ酸アルギニンは、一酸化窒素に変換され、血管の内皮を弛緩させるため、血流も改善します。
アーモンドはビタミンEが豊富で、シミ、シワ、くすみなどの肌トラブルや血管の健康に関与するオレイン酸が豊富です。カシューナッツには鉄分、ビタミンB1、亜鉛、マグネシウム、パントテン酸が豊富で、めまいや貧血に有効です。マカデミアナッツはパルミトレイン酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸や、銅、マグネシウムが豊富で、腸蠕動を促進します。
その他様々なナッツがありますが、いずれも健康食材と言ってよいものばかりです。蒼野のお勧めは一つのナッツだけではなく、ミックスナッツで、様々なナッツを食べることで様々な栄養が供給されると思います。目安は片手一握り、一日30gまでが良いと思います。(沢山だとお金もかかります…)
食物繊維が豊富で、腸内の善玉菌を増やしてくれる効果も証明されています。まだ証明はされていませんが、ナッツは人類が古くから食べてきたものでもあり、腸内細菌との相性も良い食べ物なのだと思います。
大袋で買うと安くはなりますが、袋を開けて時間が経つと味が落ちてくるので、蒼野は300gくらいの袋を愛用しています。20gちょっとの小分けになったものも使いやすいです! 1日1回夕食時に一握り食べると、夕食の食べ過ぎが防ぎやすいと感じます。皆様もポテチの代わりにナッツを準備しておくのはいかがでしょうか?
参照文献:
1)A possible protective effect of nut consumption on risk of coronary heart disease. The Adventist Health Study. Arch Intern Med. 1992;152(7):1416-1424.
2)Risk factors for all-cause and coronary heart disease mortality in the oldest-old. The Adventist Health Study. Arch Intern Med. 1997;157(19):2249-2258.
3)Frequent nut consumption and risk of coronary heart disease in women : prospective cohort study. BMJ. 1998;317(7169):1341-1345.
4)Nut consumption and decreased risk of sudden cardiac death in the Physicians’ Health Study. Arch Intern Med. 2002;162(12):1382-1387.
5)Nut and Seed Consumption and Inflammatory Markers in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis. Am J Epidemiol. 2005;163(3):222-31.
6)Nut consumption and weight gain in a Mediterranean cohort: The SUN study. Obesity (Silver Spring). 2007;15(1):107-116.
7)Nuts and Brain Health: Nuts Increase EEG Power Spectral Density (μV&[sup2]) for Delta Frequency (1–3Hz) and Gamma Frequency (31–40 Hz) Associated with Deep Meditation, Empathy, Healing, as well as Neural Synchronization, Enhanced Cognitive Processing, Recall, and Memory All Beneficial For Brain Health. ; 2018 https://doi.org/10.1096/fasebj.31.1_supplement.636.24
8)Dietary Supplementation of Walnuts Improves Memory Deficits and Learning Skills in Transgenic Mouse Model of Alzheimer’s Disease. ; Journal of Alzheimer’s Disease, vol. 42, no. 4, pp. 1397-1405, 2014
9)More pistachio nuts for improving the blood lipid profile. Systematic review of epidemiological evidence. ; Acta Biomed. 2016 May 6;87(1):5-12.
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