今日は最近蒼野が感じている、肥満と糖尿病の共通原因について書いてみたいと思います。どちらも一時的に上手くコントロールできても、すぐにリバウンドしたり、血糖値が上がったりする事はとてもよく似ています。根性だけではダイエットも治療も上手くいかない事は共通しています。その本質から考えて対策する必要があります。
糖尿病情報センターのホームページによると、『糖尿病はインスリンが十分に働かないために血糖が上昇する病気』と書かれています。高血糖の状態を放置していると、体内で糖化や酸化が起こり続けるため、血管内皮の細胞が傷害され、心臓病や失明、腎不全や下肢切断などにつながる命に関わる合併症が幾つも起こってゆく病気です。
蒼野もなりたくありませんし、家族や友人にもなってほしくはありません。インスリンが十分に働かない原因には二つあります。膵臓の病気(自己免疫疾患や原因不明)などで血糖値を下げるホルモンであるインスリンが作られなくなるために、血糖値が上がってしまうのが1型糖尿病です。インスリンの注射が必要となる糖尿病です。
もう一つが2型糖尿病です。インスリンの効きが悪くなる、インスリン抵抗性の状態が続くと、インスリンをもっと作る必要が出てきます。インスリンを過剰に作る期間が続いてゆくと、インスリン分泌細胞である、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が疲弊してしまい、必要なインスリンが作れなくなってゆきます。さらに血糖のコントロールが悪くなり、合併症につながってゆく事になります。
圧倒的に2型糖尿病が多く、割合としては糖尿病全体の90-95%が2型糖尿病です。疫学で見ても日本の1型糖尿病の患者数は10~14万人。一方2型糖尿病は令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、疾患が疑われる人を含めると、日本人の5~6人にひとりと考えられており、現時点で2000万人を超えていると考えられています。
世界では成人の10人に1人が糖尿病で、ここ20年で右肩上がりの3.6倍に増加しており、2021年には5億3,700万人になりました。試算によると2045年には7億8,300万人に増加すると予測されています。ちょっとピンとこない数値ではありますが、日本人は遺伝的にも糖尿病になりやすく、世界でも第9位の患者数になってしまいました。
医学は進み、世界の頭脳がその撲滅に取り組んでいるにも関わらず、どんどん増加しているのには理由があるはずです。コロナ禍で家に閉じこもることが多くなった子供や若年者の糖尿病患者は、アメリカではコロナ前の77%増との報告もあります1)。生活習慣が変わるだけで、子供でも糖尿病を発症してしまうのです。
この病気の根本にある原因の一つは、飢餓の歴史を生き抜いてきた人間の本能にあると思います。食べ物がない時期を生き抜くために、ヒトはカロリーの多い糖質や脂肪を美味しいと感じ、目の前にあれば、無理をしてでも口に入れることで、脳が快感と報酬を受け取る様にできています。この能力が弱い人間は餓死する確率が高く、この遺伝子が現代人にも息づいているのです。
また必要が無ければ運動したくないというのも、エネルギーを少しでも浪費しないためには重要な本能です。これが急速に豊かになった現代では、肥満や糖尿病につながってしまうのです。改善するためには、うまく本能との折り合いをつける必要があります。
しかし脳が欲するカロリーが高いものをいつまでも我慢できるでしょうか?モチベーションの高い時や、我慢強い人は、一時的には可能かもしれません。でも一生続け無ければいけないとしたら、人生楽しくないのではないでしょうか? それがダイエットのリバウンドであり、糖尿病が生活習慣で治せない人が多い理由なのです。
糖尿病が増えるのは、現代のデフォルトになっている生活習慣にあります。交通機関が発達し、マイカーでの移動が普通になれば、意識しなければ歩きません。仕事も肉体労働よりも、デスクワークの人が多くなっています。忙しい中で運動が続けられる人は一握りだと思います。
食べ物で言えば、我々が食べたくなる、脳が快感を感じるものが売れますし、実際に食べられています。忙しい現代生活で、毎日素材から料理を作ってバランスよく食べている人も一握りでしょう。TVでもネットでも、注意や興味をそそられるものは、スイーツやB級グルメ、手軽に食べられるファーストフードやインスタント、冷凍食品などです。
日本はバブル崩壊から暗黒の40年に入っていて、単価が安いものが多く食べられています。糖質が豊富なお菓子や粉物(小麦製品)、白米などが食の中心になっています。これらを本能のままにお腹いっぱい食べていたら、食後の血糖値は急上昇します。また毎日食べることで糖質の依存症になっている人も多いのです。
高血糖は血管を傷めることから、すぐに改善する必要があります。膵臓はインスリンをジャンジャン分泌し、血糖を中性脂肪に変え脂肪細胞に貯めていきます。皮下脂肪だけでなく、内臓脂肪や脂肪肝も合併してゆきます。肥満の始まりはインスリン分泌が多くなることからなのです。
高インスリンの状態が続くと、身体の細胞はインスリンに反応しにくくなります。血糖が高くても細胞内に血糖が取り込まれないため、血糖が下がりにくくなってくるのです。これがインスリン抵抗性です。脳細胞にインスリン抵抗性が生じれば、脳はエネルギー不足で働きにくくなり、認知機能が低下します。これはアルツハイマー型認知症に見られる現象なのです。
インスリン抵抗性の状態が長く続くと、膵臓のβ細胞が疲弊しインスリンの分泌が落ちてきます。この状態になると、血糖のコントロールはかなり難しくなります。糖尿病の進行で、インスリン注射が必要になってくるのです。そして高血糖の時間が長くなれば、恐ろしい糖尿病の合併症が、同時多発テロの様に起こってきて、辛い時間が多くなってしまいます。
生活が便利になり、身体を動かすことが減り、売られている物が変化しています。夜遅くまで働く人も多く、忙しい上に生活リズムが不規則になり、給料も上がりません。食べやすいものは糖質中心のものや、加工食品やお菓子という生活です。ストレスや睡眠不足でも食欲は増してしまいます。意識しなければ肥満しますし、糖尿病にもなります。これは個人の意志力の問題ではないのです。
糖尿病の原因は一般的には食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣7割に、元々の遺伝的な要素が3割ほど関与していると言われています。じゃあ食べ過ぎを止める、運動を増やす、痩せる、ストレスを発散する生活に、一生変え続けられる人がどれ程いるのかという事になるのです。
ダイエットでリバウンドしない人の割合は、アメリカの研究ではたったの5%です。一生本能に逆らい続けられる人はほとんどいないのは当たり前でしょう。逆に無理なダイエットで、鬱になる人はダイエットをしない人に比べて80%も高いというデータも出ています。ダイエットにはストレスがつきものなのです。
今日は肥満と糖尿病の多くが、便利になった社会と、営利を追求する社会にその原因があると思われる事について書かせて頂きました。これをどうやって改善するのかについては、蒼野が工夫していることも含めて、明日書かせて頂きます。
豊かになることで、病気が増えるというのは皮肉な事ですよね。豊かさを鵜呑みにせずに、豊かさも享受しながら、敢えて昔ながらの生活の中にも、楽しみを見つけたい蒼野でした。
参考ページ: 糖尿病情報センター https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html
参考文献:
1)The Coronavirus Disease 2019 Pandemic is Associated with a Substantial Rise in Frequency and Severity of Presentation of Youth-Onset Type 2 Diabetes. ; The Journal of Pediatrics Vol.251, P51-59.E2, 2022
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