蒼野の頭痛外来には、時々不登校の小中学生や高校生が受診されます。朝起きられない子が多く、無理に起こしてもぼーっとして、頭痛や倦怠感が強く、横になっている方が楽なので、学校に行けなくなっているのです。血圧は低めの子が多く、立ちくらみもあり、朝食も食べれません。
西洋医学的には、起立性調節障害、自律神経失調などの病名になりやすく、悩みがあったりすると、うつ病、神経症、身体表現性障害などが疑われ、倦怠が強い場合には、慢性疲労症候群などの病名がついたりします。
しかし、蒼野が尊敬する、漢方の山本 巌先生によると、これらは体質の問題だと言われています。人は早起きが得意で活気があり、寝付きも良いヒバリ型と、朝が苦手で、午後3時以降にようやく元気になるフクロウ型に、大別されるとのことです。
不登校になるのは、体力のないフクロウ型が多いのです。問診してみると、夜になると元気になり、ゲームをしたりして、夜更かしする子が多く、フクロウ型を知らなかった蒼野は、生活習慣からくるものだと思っていました。採血や画像診断で異常は見つからず、西洋医学的には『生活をきちんとして、様子を見ましょう』と言われてしまいがちな病態です。
フクロウ型は、朝は苦手で、いつまでも寝ていたい。運動不足で、肩こりや首こりが強く、日曜、休日は昼近くまで寝ている人が多いです。目覚めが悪く、目覚まし時計が鳴っても無意識に止めてしまう。いつも学校や会社に遅刻しがちです。朝は食欲がないのが普通で、食べる時間もありません。
午前中は頭が重く、ぼーっとして仕事がはかどりません。しかし、午後からだんだん調子が上がってきて、午後の3時を過ぎるころから元気がではじめ、夕方から夜にかけては最高調となります。食欲がでてきて、夕食はなんでもおいしく、たくさん食べられます。夜早く寝ようと思っても、頭がさえて眠れません。夜中の1時ころになってやっと眠りにつくというタイプです。
最近のイギリスの研究で、朝型か夜型かは、体内時計に関連する遺伝子で決まっており、それに逆らって生活するのは困難と報告しています。夜型の人間が、社会生活上、朝早く起きることを強いられることで、フクロウ型体質に見られる体調不良が起きてくるようです。
文部科学省白書における、2020年度の不登校は、「小中学生が19万6127人と過去最高記録を更新、学年が上がるごとに増えていました。高等生は少し減少傾向で、4万3千人と報告されています。起立性調節障害という視点でみると、不登校の約4割が起立性調節障害を伴い、また起立性調節障害の約半数に、不登校を伴っていると報告されています。
こうしてみると、不登校の子の体質として、フクロウ型の体質の関与が考えやすく、フクロウ型を緩和する治療を行うことで、ある程度の問題が解決する可能性がありそうです。久留米大医療センターで漢方医学を専攻する精神科医の恵紙(えがみ)英昭教授が開設している「フクロウ外来」は、朝が苦手な体質を、漢方治療も含めて改善する治療を行なっています。
実は、恵紙先生自身がフクロウ体質で、小中学校時代から遅刻しがちで、高校になると徹夜で勉強するのが得意でした。医師になってから勧められた苓桂朮甘湯で、体が軽くなり、驚くほどすっきり目覚められるようになった経験をお持ちの様です。
蒼野の頭痛外来を、訪れるお子様の頭痛も、朝起床後に痛くなり、昼過ぎまで調子が悪く、3時くらいから元気になるものが多い印象です。フクロウ頭痛とも呼ばれています。午後からは元気になるので、怠け病と言われて、自己肯定感が低くなっていたり、学校の授業が遅れてしまうと考えて悩んでしまい、気分が落ち込んでいる子も多い印象です。
スマホはベッドに持ち込んでいる子が多く、ブルーライトを目に入れることで、さらに夜ふかしになり、眠りにくく、昼夜逆転が進んでいる印象です。首こりが強く、運動不足になっている子も多いのです。
こういう患者様をみると、思春期は自律神経がまだ未熟で、体内時計が狂いやすいため、毎日とにかく起きて、朝日を浴びて散歩し、その後朝食をゆっくりよく噛んで、摂ってゆくように説明します。頚肩こりに鍼治療としてパイオネックスを貼り、漢方治療を始めてみます。
主に使う漢方は苓桂朮甘湯が多く、全身倦怠もある場合には補中益気湯を併用します。粉薬が飲めない患児も多く、そういう時には、錠剤タイプの漢方を利用します。苓桂朮甘湯は首こりからのめまいにも良く効く薬で、自律神経も整えてくれて、起立性調節障害も改善させる効果もあるのです。
一方補中益気湯も、元気がない子に使って、身体を楽にすることで、学校に行く意欲を起こしてくれます。苓桂朮甘湯と一緒で、錠剤もありますので、続けて飲んでもらい様子を見ています。女の子で、生理が始まった後から、元気がなくなってきた様な症例では、鉄不足が隠れていることがあり、鉄剤を補充することで改善が見られる症例も認めます。
漢方の力も借りながら、生活習慣をなるべく朝方に近づくように整えてゆくと、2~3ヶ月はかかりますが、学校に行ける様になってくる子もいます。片頭痛の要素がある子には、片頭痛予防薬と治療薬も含めて処方します、
山本漢方では、ヒバリ型とフクロウ型の体質は、大人になって以降の生き方でも、大きく違っているため、元気に過ごすには、それぞれ気をつけなければいけないポイントがある様です。
フクロウ型の人は、若い頃苦労される方が多いため、健康に気をつけて過ごす人が多く、40歳をすぎると体調不良の訴えが減り、60歳以降は元気になります。70歳、80歳と元気で長生きする人も多いのです。
逆にヒバリ型は、生まれつき体は丈夫なため、若いうちはめったに病気にかかりません。胃腸も丈夫で、食欲も盛んで、すこしくらい食べすぎてもお腹をこわしません。体格もしっかりしていて、体力があり、スポーツも得意で、仕事や勉強もはかどります。
しかし、丈夫なだけに、無理をかさねがちで、働き過ぎとなりやすいのです。元気なために健康に関心がなく、過食、飽食、アルコール過飲などから、肥満、高脂血症、脂肪肝、高尿酸血症、高血圧、2型糖尿病などの、生活習慣病にかかりやすい傾向があります。中高年以降は動脈硬化性疾患、心臓病や脳血管障害で倒れる人が多くなる傾向にあるとのことです。
別の言葉で言うと、日本漢方で言う虚証がフクロウ型にあたり、実証がヒバリ型とも言えます。蒼野は元々は実証タイブで、朝も起きれるヒバリ型だったと思います。しかし証は生き方で変わってくることもあるとのことです。蒼野は事故以来寒がりになり、かなり痩せて、時々ふらっとしたりするので、虚証タイプに傾いた様に思います。
漢方での健康長寿は、それぞれの証に合わせた養生が大切だと教えています。若い頃は身体が弱く、休みがちなフクロウ型も、生活リズムを整えて、養生してゆけば、元気で長生きできる証に変わって行けるのです。
もちろんフクロウ型で、不登校になっている子や、その家族の悩みは深いと感じています。漢方の助けを借りて、運動で身体を鍛え、生活習慣を変えて、養生してゆけば、体質が変わって元気が出て、学校にも行けるようになると思いますので、焦らずに頑張りましょうね。なかなか西洋的な治療では良くならない体質ですので、しっかり養生してゆきましょう。
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