痛みと糖質の意外な関係!

2022/03/19

 腰痛、膝痛、肩関節痛など、年齢を重ねると、多くの人を悩ませる運動器疾患の症状ですが、多くのケースで、糖質過多の食事が原因になっていることを『栄養整形外科』のDr.が主張されておられます。今日は痛みと糖質について書いてみたいと思います。

 蒼野は幸い、肩も腰も膝も痛くありません。もう10年も前から、軽い糖質制限を続けてきたおかげかもしれませんね。伝統的に穀物を多食してきた私たち日本人は、米や小麦、イモ類など高糖質食が大好きです。もちろん蒼野も大好きです。

 『栄養整形外科』のDr.によれば、この高糖質食こそ「腰痛や関節痛の重大原因」なのだと言われます。糖質の摂りすぎはビタミンB群不足を招き、筋疲労の原因となり、筋肉自体が硬くなります。局所血流も悪くなり、痛み物質が溜まりやすくなるのです。

 さらに摂りすぎた糖質は、体内でコラーゲンなどのタンパク質と結びつき、AGEs(糖化最終生成物)という老化物質に変化します。これは骨、軟骨、筋肉、腱、椎間板などにある、正常のコラーゲンに蓄積してゆくことで、硬く、脆くなり、炎症を起こしやすくなるのです。

 AGEsは、変形性関節症の原因にもなり、痛みや関節の動きにくさに関係します。関節が糖で焦げて変性すると、スムーズに動かなくなるのです。5件の研究、13万1431人のメタアナリシスでは、糖尿病がない人と比較して、糖尿病があると腰痛が35%以上起こりやすいことが報告されています。

 また加齢により起こりやすくなるのは筋肉量の減少と筋力低下です。進行すれば「サルコペニア」という病態となり、転倒や骨折、そして寝たきりに至る可能性が高くなり、生活の質を著しく低下させてしまいます。実は糖質摂取が多いことが、その一因になっていることも指摘されています。

 筋肉の内で、瞬発力を司る速筋(白筋)から多く分泌されている、マイオスタチン(ミオスタチン)というホルモンは、成長の過程で不適切に筋肉が増加しすぎるのを防ぐ役割があります。筋肉の増加を妨げるホルモンです。血糖値が高くなると、インスリンが多く分泌され、マイオスタチンが増加します。

 インスリンによって、遅筋よりも速筋の比率が高くなることでも、マイオスタチンが多くなります。インスリン過多によるインスリン抵抗性と、IGF‐1(インスリン様成長因子)過多によるIGF‐1抵抗性が起こり、筋肉合成の低下および分解促進が起きるので、糖質過剰摂取では筋肉が減少してしまうのです。

 「サルコペニア」はその他にも、様々な誘因が指摘されていて、慢性炎症とか、酸化ストレスの増加も大きな誘因です。これらも高血糖、高インスリン血症で誘発されます。また、加齢で食欲が落ちてきている状態で、糖質を過剰に摂取すると、お腹はいっぱいとなり、タンパク質摂取が減りやすいのです。筋肉を作るのはタンパク質ですから、タンパク質が不足すると「サルコペニア」が進行します。糖質過多の食生活は、肥満になりやすく、筋肉が減って脂肪に置き換わったりしてしまうのです。

 慢性腰痛の原因はわからないと言われていますが、脊椎の周りの筋肉の筋肉量、質の低下が関与している可能性は高いようです。高インスリン血症、インスリン抵抗性では、脊椎の周りの筋肉の一部が脂肪に変性してしまいます。有効な筋肉量の減少と筋肉の質の低下によって、慢性の腰痛に悩まされることになるのです。

 「栄養整形医学」を実践する大友通明医師によると、関節痛や腰痛など整形外科にかかわる不調を抱える人の多くは、「食事は糖質中心でとくにパンが多い」「トマトジュースやスムージーで野菜不足を補っている」「赤身肉を摂る量が少ない」などの食傾向が見られると言います。

 まさに糖質過多で、タンパク不足、栄養不足の食事で、腰痛、膝痛、肩関節痛などは起こりやすくなるようです。そこで栄養療法を導入する整形外科も増えてきています。皆様もスポーツ栄養クリニックなどと標榜している整形外科を見たことがあるのではないでしょうか?

 痛みを減らす食事の基本は糖質制限です。糖質を減らす分はタンパク質と脂肪の増量が必要となります。グルテンは慢性炎症の原因になるため、小麦の摂取は避けましょう。食べるならお米の方がベターです。筋肉を減らさないために重要なのは、タンパク質・鉄・ビタミンCです。

 赤身肉はタンパク質と鉄のほかに、ビタミンB群や亜鉛も多く含まれているので積極的に食べましょう。魚や大豆製品も積極的に摂りましょう。ビタミンCは鉄の吸収を助け、骨や軟骨のコラーゲン再生に働きます。骨も強くしてくれるため、赤身肉といっしょに生野菜や果物も摂取しましょう。

 現実的には、日本人の全世代において、7割の人がたんぱく質不足、厚生労働省が定めるたんぱく質目標量を、3人に2人は達成できていないと言う事実があります。成人男性で60g、女性で50gが「タンパク質推奨量」です。生活習慣病やフレイルの発病予防のためには推奨量の1.4~2倍が必要であることがわかっており、新たに「タンパク質目標量」とされました。

 年齢や体重、身体活動レベルによって目標量は変わりますが、仮に100gのタンパク質が必要とすると、納豆で12パック、卵なら17個が必要です。工夫しないと摂りにくいことが分かると思います。加齢とともに筋肉の合成が遅くなるため、歳を重ねるとより一層のたんぱく質が必要になることにも注意が必要です。

 栄養療法を取り入れたリハビリ、運動療法によって、驚くような効果が見られているようです。大友通明医師によると、血糖コントロールの悪い糖尿病の患者さんの、肩の痛みは治りづらいのですが、糖質制限食指導をおこなったところ、みるみるうちに痛みが改善しました。

 変形性膝関節症の患者様にも、同様に糖質の過剰摂取を控えてもらったところ、一ヶ月で今まで痛かった階段の降りる時の膝の痛みが軽減し、ゴルフまでできるようになりました。

 高血糖と関節痛の間には密接な関連があるに違いないと考え、難治性の腰痛や関節痛の患者さんにも適応を広げ、食事と運動を指導することで、手術を受けても消えなかった頑固な痛みやしびれが軽くなり、「鎮痛薬がやめられた」「杖なしで歩けるようになった」などの喜びの声が多数寄せられたとのことです。

 具体的な、糖質制限食は、主食をやめ、おかずや間食でとる糖質も控えます。それとともに、関節組織の修復に不可欠な、ビタミンCや鉄分を十分に補うように、肉・魚・葉物野菜をしっかり食べてもらいます。すると早ければ一ヵ月、遅くとも三ヵ月ほどで症状改善の兆しが現れてくる場合が多いようです。

 蒼野の外来に来られるお年寄りも、膝や腰が痛くて、運動ができないと言われる方が多いです。薬手帳を見ると、ずっとNSAIDsなどの鎮痛剤が処方されていることも多く、腎機能も気になります。時間がある時には、食事について説明しますが、忙しい時にはできません。

 糖質を適量に抑えることは、様々な健康効果があり、健康長寿にも必要な食事法です。もし痛みがあるようなら、糖質を減らして、タンパク質と脂肪を増やしてみませんか? 蒼野は糖質を減らすだけで、頭痛が激減することは何度も経験しています。糖質は様々な痛みに関係していると思います。

 美味しい糖質は、食事の最後に少し食べて、満足感を得ている蒼野でした。

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