先週末、蒼野は91歳の一人暮らしの母親の実家の片付けに帰省していました。梅雨時期に悪い物を食べないよう、今回は特に食べ物を中心に整理してきました。封の開いたお好み焼き粉やチヂミ粉で、開けた時期が分からないものは、全部捨てて来ました。常温保存の粉物は、アレルギーの原因になる場合があるからです。

　頻度は少ないものの、アナフィラキシー発作を起こす場合があるので、今日は粉物のリスクについて書いておきたいと思います。アレルギー反応を起こすものが身体に入ると、皮膚ではかゆみや蕁麻疹、粘膜の充血や喉の違和感、くしゃみや咳、息苦しさ、腹痛や吐き気、重篤な場合には血圧低下や脈の不整、頭痛や意識障害まで起こす事があります。

　強いアレルギー症状によってショック状態となると、命に関わる場合があるのです。2010年の報告では、粉物を食べた後、1時間以内にアナフィラキシーショックを起こした症例が59例ほど報告されているようです。滅多にはありませんが、一人暮らしで救急車を呼ばないでいたりしたら、本当に危ないですよね！

　その原因はズバリ『ダニ』の繁殖です。ダニは蜘蛛の仲間で、メスは一度に50～100個の卵を産みます。良い生育環境に紛れ込むと、10週間でダニの数は約300倍になるそうです。そして繁殖しやすい餌がたっぷりある環境が、粉物の袋ということになります。粉は生きているダニだけでなく、その死骸や糞尿でアレルギーの元が増えてゆくのです。

　小麦粉やお好み焼き粉、チヂミ粉やたこ焼き粉、ホットケーキやパンケーキミックス、大豆粉やきな粉、オートミールやプロテイン、ココア、砂糖やオリゴ糖などでも繁殖してしまいます。コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなど、ヒョウヒダニ類は、普通にハウスダストの中の主要なダニです。通年性の花粉症の人は、ダニが原因であることも多く、そんな人が食べ物に含まれる大量のダニ成分を一度に摂取すると、激しい症状を起こしやすいのです。

　ダニアレルギーを疑う所見としては、埃っぽいところで咳が止まらなくなる。1年中鼻水が出ていて、掃除の時に悪化する。掃除をサボると咳や鼻水、目の痒みがひどくなる。咳、鼻水、くしゃみは屋内の方が酷くなる。などです。検査でダニのアレルギーが出ていれば、確定します。こういった方は、ダニだらけの粉物を食べると、ひどい症状が出るリスクが高いため、特に注意が必要です。

　調べていて恐ろしいのは、母親の実家だけではなく、蒼野の家にも、開けたまま何ヶ月も食べきれないでいる粉物の袋は結構置いてあるなあ、という事です。皆様の台所は大丈夫でしょうか？　プロテインの大きな袋は、６パックを目指して買ったものの、筋トレした日にしか飲まないので、もう長い間、棚の上に置きっぱなしになっています。

　ダニは室温が25～30℃、湿度が60～80％の環境では餌さえあればどんどん増殖します。ちょうど今の時期が危ない感じです。ダニが死んでいても、反応は起こります。お好み焼きのようによく焼いても、アナフィラキシーショックは起こるのです。食べてから1時間以内というのが、一つの目安になります。

　対策としては、小さい物を買い、なるべく早く使い切る。開封したらビニールやタッパーなどの密封容器に袋ごと入れて、冷蔵庫で保存すると良いです。しかしデカいプロテインや、小麦粉を全て収納しようと思ったら、冷蔵庫がもう一つ必要になりそうです。低温では増殖しにくくなるため、例え紛れ込んだとしても、大量のダニ摂取には繋がりにくいのです。

　室温でしばらく放置した物は、すでにダニが増殖していれば、そこから冷蔵庫に入れても手遅れです。黒い紙や皿などに、保存していた粉を薄くまぶすと、もし増殖していれば、ダニを肉眼で確認する事ができるようです。これからは割高でもなるべく小分けになった粉製品を買って、使い切るのが良さそうです。

　海外ではPancake症候群という病名もついています。欧米では大半のケースで Pancake用の小麦粉が、本症の原因となっているからです１）。一方日本ではお好み焼き粉での発症が多いと報告されています２）。皆様も常温保存している古い粉物がないか、確認してみてくださいね！　

　早く梅雨が明けると良いですね！　広島では母親と、久しぶりに有名なお好み焼き屋さんの『みっちゃん』で舌鼓を打って来ました。さすがに短期間で使い切る店の粉は大丈夫だと思います。今日帰ったら自宅の粉物の処分に取り掛かろうと思っている蒼野でした。

参照文献：　
１）Anaphylaxis after ingestion of beignets contaminated with Dermatophagoides farinae. ; J Allergy Clin Immunol . 1993;92:846-9.

２）お好み焼き粉に繁殖したダニによる即時的アレルギーの２例．日皮会誌，120(9): 1893-1900. 2010 

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