100歳生きる人は小太りではありません!

2023/02/10

 蒼野は『小太りは長生き』というデータ1)が引っかかっています。メタボが様々な生活習慣病の原因となるという考え方と、どうしても相反するように感じ、納得ができ無いのです。ニュースで見たことのある100歳越えのお年寄りは、きんさんぎんさんにしても、泉 重千代さんにしても本郷かまとさんにしてもみんな痩せていたことも納得できない理由です。

 そこで今日は普通の長生きに注目するのではなく、健康長寿のスーパーエリートである、百寿者の研究で、百寿者の特徴について調べ、本当に小太りは長生きなのか調べてみました。

 人生100年時代と言われていますが、日本の場合は国民皆保険と医療の発達によって、数年間の要介護の時期を経て、亡くなるというのが常識となっています。寝たきりのまま、胃瘻チューブからの栄養で生かされる100歳もいれば、自分のことは自分でできる100歳もいます。どちらを目指したいかと言われれば、皆様も後者を望まれていると思います。

 慶應大学や、東京都健康長寿医療センターが、1980年代後半から、共同で行なっている百寿者の研究結果を知っておくことが、実際に我々が100歳を迎えるにあたっての参考になると思います2)、3)。調査によれば、100歳を超てADLが完全に自立(Barthel Index 100点)していた方は男性で18.5%,女性で 5.9%という数値になっています。

 寝たきりは男性で20.0%、女性で33.9%であり,全体として約8割の百寿者が日常生活に何らかの介護を必要としていました。我々が目指したい自立した百寿者については、100歳で自立していれば、105歳、110歳に到達する確率が高いことが報告されています。

 肥満の指標とされるBMIについては、百寿者では男性20.5±3.0、女性19.5 ± 3.1kg/m2で、若者の理想値が21~22であることを考えるとやはり痩せています。小太りは長生きと言われるBMI25を超えている人は男女ともに5%程度しか居られませんでした。

 遺伝の影響はある程度大きいようです。両親の死亡年齢を調べると、男性百寿者の父親の42%、母親の49% は71歳以上で亡くなったそうです。女性百寿者ではそれぞれ25%、35%が71歳以上生きておられました。特に男性では影響が大きいようですね。

 生活を見てゆくと、子供と同居している男性百寿者66.3%、 女性53.4%、子供の配偶者との同居は男性 50.0%、女性 33.8%で、本人の配偶者との同居している人は男性、10.8% 女性0.8%で、夫婦揃って長生きというのは少ないようです。若い人と同居して大切にされるというのは、長寿に影響しそうですね!

 医療機関への通院については、入院している人は1割、定期的な通院で4割、何かあったときだけという人が5割です。多くの人は大病はされておられず、薬も多くはありません。転倒経験は男性で31.5%、女性で47.8%で、転倒による骨折も、大腿骨骨折が男性の22.5%、女性の42.9%。腰椎骨折が男性7.1%、女性11.1%で、やはり筋力低下による転倒リスク、骨粗鬆症による骨折リスクは女性に多いため、十分な注意が必要です。

 食事は男女共に9割の人が3食キチンと食べています。完食する人は半数です。食欲があり自分から進んで食べる人は男性88.4%、女性76.0%、家族と同じものを食べる人も男性57.2%、女性40.9%でした。やはりしっかり食べることが長寿の条件のように感じます。

 ご飯、パン、麺などの主食は9割は毎食食べており、芋は最低週1回、おかずは魚を毎日食べる人が多く、牛乳・乳製品を食べる人も65%以上、卵、豆、豆製品、海藻を毎日食べる人は5割で、全員が週一回以上は食べていました。野菜を毎日食べる人は9割、果物を毎日食べる人は6割で、植物性の食品に、様々なタンパク質を食べていることが窺われます。

 一番好きな物のアンケートでは、1位、果物18.5%、2位、魚12.3%、3位、甘い物10.7%、4位、刺身9.5%、5位、寿司6.4%でした。蒼野も魚は大好きなので(肉も好きですが…)もっと意識して食べたいと思います。

 よく眠れる人は男女共に9割、平均睡眠時間は、男性8.9 ± 2.2時間、女性9.1 ± 2.1時間。「いつも定時に自分から起床する」者は男性で4.8%、女性で61.2%で、たっぷり眠って、体内時計に従って、毎日のリズムを保ちながら過ごしている人が長生きするようです。

 嗜好品ではタバコを吸う人は男性5.6%、女性0.8%。アルコールは男性21.9%、女性5.9%でした。アルコールの種類は日本酒52.3%、ビール27.5%でしたが、量は日本酒で1 合未満の人が92.6%と、適量が守られていました。

 普通に会話が成り立つ人は男性53.1%、女性36.3%。日付が分かる人は男性45.1%、女性23.1%で、女性にアルツハイマーが多いことを反映している結果です。しかし60歳までに仕事を辞めた人は男女ともに2割程度で、平均で70歳過ぎまで仕事をしている人が多く、農業や林業の人はもっと高齢まで仕事をしていました。

 健康だと感じている人、毎日気分よく過ごせている人は、男女とも6~8割で、周りの家族や友人、親戚ともうまくいっていると感じている人が、男性80.0%、女性72.8%でした。将来に不安を感じない人は8割、寂しさや無力感を感じない人も6割と、穏やかな日々が続いているからこそ長生きされている印象です。

 また、これからのことに夢や希望を持っている人は、男性で31.3%、女性で14.4%で、生きがいを持っている人も男性43.6%、女性25.8%で、家族や健康で楽しく過ごすことが生きがいと答えておられます。素晴らしいことだと思いますし、100歳になっても、人生は楽しいんだと思える結果で勇気づけられます!

 ここまで見てくると、長生きと言っても、特別長生きな人の特徴が分かってきますね。100歳越えを目指すには、やはりお腹ぽっこりでは無くて、むしろ少し痩せているくらいが良さそうです。BMIは単に体重と身長から割り出す数値ですので、内臓脂肪と皮下脂肪、筋肉の区別はつきません。BMIに拘らず、内臓脂肪を減らす生活が大事なのです。

 BMIと全死亡のリスクの研究では、BMI18.5以下のヤセは死亡リスクが1.78倍高い結果になっています。65歳以上でBMIが低い人は、身体活動量が落ち、タンパク摂取も不足気味で、いわゆるサルコペニアになっている人を多く含んでいます。また高齢では太って動かない人も短命になります、こちらはいわゆるサルコペニア肥満です。

 肥満も様々です。女性に多い皮下脂肪型の肥満は、体内の炎症反応をあげませんが、男性に多い内臓肥満は、腸の近くにある脂肪細胞が異物と認識されるため、免疫細胞に攻撃されて常に炎症を起こす状態になってしまいます。百寿者は炎症反応が低く、糖尿病や動脈硬化も進んでいない人がほとんどです。このことからもBMIは長寿の基準にはなりにくい様に感じます。

 百寿者の8割が女性で、2割は男性ですが、女性は閉経後に太る人は多く、筋肉を保てる人も一握りです。太っても皮下脂肪だけであれば、寿命への影響は少ないのです。100歳以上になれる男性は、筋肉質な人が多く、本当に元気であることは、今日書いた特徴からも分かると思います。内臓脂肪の多い人は100歳になる前にみんななくなってしまうのでしょうね!

 皆様がもし元気な100歳を目指すのなら、ヒントは今までの百寿者の生活にあるはずです。若い人と同居して活発にコミュニケーションをとり、食欲旺盛で、植物性食品と魚を中心に摂り、タバコは吸わず、お酒は控えめに、出来る限り長い間仕事をして、毎日歩き、希望を持って、毎日規則正しく、気分よく過ごすことが100歳の秘訣です!

 男女ともに高齢になっても運動を欠かさず、筋肉を維持し、心肺機能を鍛えておくことがポイントです。特に女性は運動していないと筋肉が落ちやすく、介護の必要性が増してしまうため、若い頃からの運動習慣=貯筋が本当に大事ですね! そして今日勉強してみて、自立したままの100歳はかなり難しい目標であることが分かりました。 

 蒼野は100歳にこだわりはありませんが、死ぬ間際まで自立して、元気に自分で動きたいです。百寿者を観察すると、小太りにはならなくても良い様ですので、現在の体重と筋肉量を維持しながら、常に生活を整えてゆきたいと思いました!

参考文献:
1)Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies.   J Epidemiol. 2011;21(6):417-30

2) 百寿者研究の現状と展望  日老医誌 1999; 36: 219-228

参考ページ: 
3)全国100歳老人の1/2サンプルの横断的研究」報告 A
cross-sectional study of thecentenarians in Japan
https://www.health-net.or.jp/tyousa/houkoku/pdf/h13_hyakujyusya.pdf

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