ワンコと一緒に認知症予防!

2023/10/27

 今日はペットが認知症を予防してくれるという、日本の論文を見つけたので、皆様に紹介したいと思います。2016年から、日本の11194人の高齢者を4年間観察した前向き研究です。犬や猫の所有と認知症による新たな障害の関連について調べています。

 11194人の平均年齢は74.2歳、現在犬を飼っている人は959人で全体の8.6%、猫は704人で6.3%、124人はどちらも飼っていました。認知症発症に影響する可能性のある、性別、年齢、世帯人数、結婚状況、学歴、同等の収入、雇用、慢性疾患の既往(肺の呼吸器疾患、がん)、過去1年間の入院歴、過去1年間の転倒歴、アルコール摂取、喫煙状況、TMIG-ICスコア、移動制限、運動能力スケール、フレイルティ状態、隣人との交流、社会的孤立、隣人への信頼、主観的幸福感などの要素を、統計的に条件を揃えた上で、飼い主とそうでない人の認知症発症を比較しています。

 約4年の追跡期間中、現在の犬の飼い主と、過去または犬を飼ったことがない人々の認知症発症率は、それぞれ3.6%と5.1%でした。また現在の猫の飼い主と、過去または猫を飼ったことがない人々では、4.5%と5.0%でした。猫の場合には有意差はありませんでしたが、犬を飼うことによって、認知症発症リスクは約40%低下することがわかりました1)。

 その理由ですが、毎日の犬の世話を通じて、運動習慣や社会参加を含む身体活動が多くなることが本質ではないかと考えられています。2015年の調査でも、犬を散歩させる犬の飼い主は、少なくとも週に150分の中等度の身体活動を達成する確率が、普通の人の2.5倍高かったと報告されています2)。

 また犬の散歩は、高齢者の心理的健康を向上させ、社会的な交流の機会を増やす手段としても有効であると報告されています。蒼野もうちの柴犬と歩いていると、同じようにワンコと歩いている人と立ち話をすることがあります。社会と繋がりが少なく、身体を動かさない高齢者は、認知機能が低下し、認知症発症率が高まることもWHOのガイドラインで報告されています3)。

 犬を飼っていなくても、毎日の運動習慣があり、社会的孤立がなければ、認知症発症は下がるのですが、コロナ禍もあり、犬がいる事で、否応なく散歩に出かける人が多い事が、認知症発症を下げることにつながっていると考えられます。

 ただ犬を飼っていても、身体を動かさず、社会的に孤立した人では、認知症予防効果は認められませんでしたし、猫の飼い主であることも、認知症の予防に効果的ではありませんでした。この研究で示されたのは、運動習慣があり、社会的孤立がない犬の飼い主は、認知症のリスクが著しく低いことだったということです。

 認知症に限らず、ペット所有に関しては、日常生活活動が改善されたという報告や4)、系統的レビューとメタ分析でも、犬の所有は長期間での死亡リスクが低いと結論されています5)。日本の研究でも、犬や猫を飼っていた高齢者は、フレイルの発症リスクが低く、特に犬を飼っている人は、2年の追跡期間中にフレイルを発症するリスクが19%低下することが報告されています6)。

 確かに住宅事情はそれぞれですので、犬を飼うのが難しい人は居られると思います。蒼野家でもここ25年近く、3代にわたってワンコを飼ってきているので、結構な出費になることもわかっています。しかしワンコを可愛がって、散歩していたら認知症が40%も少なくなるのは、凄くないですか?

 先日ご紹介した新しいアルツハイマーの薬は、薬剤費だけでアメリカでは385万円/年かかります。これを軽度認知障害の人に1年半使った時の、認知症の進行予防効果が27%です。もちろん対象がこの研究の群とは異なるため、比較するのは無理はあります。しかしその1割を負担して、副作用を心配しながら注射し続けるよりも、まずは犬を飼う方が良いのでは?と蒼野は思ってしまうのです。

 少子高齢化の世の中となり、医療費の増大、特に高齢者の医療費増大が、増税を含む政策決定に影響し、我々の生活に大きな影響をもたらしているのは、大きな問題だと思っています。地球より重い生命はどんなことをしてでも救わないといけないと言うのは、理想論だと思います。そのために生活が苦しくなり、自殺する若い人が増える世の中はおかしいと思うのです。

 人口比率が現在と圧倒的に違う時代にできた医療システムは、状況に合わせて変えるべきです。誤解を恐れずに言わせて頂ければ、国民皆保険で、適応さえ守れば、どんどん高い薬も保険で使えると言うのでは、外国の製薬会社は喜びますが、日本はこれからも、どんどん貧しくなるように感じています。

 生活習慣病を治したり、加齢による病気をなるべく先延ばししたりするには、生活習慣を変えるのが一番です。それがどんな薬よりも効果があるのは、自分の経験を含め、沢山の患者様を見てきてもそう思います。これからも生活習慣について、探求してゆきたいと思う蒼野でした。

参考文献:
1)Protective effects of dog ownership against the onset of disabling dementia in older community-dwelling Japanese: A longitudinal study. ; Prev Med Rep. 2023: 36 :102465. doi: 10.1016/ j.pmedr.2023.102465. 

2)Odds of Getting Adequate Physical Activity by Dog Walking. ; J. Phys. Act. Health, 2015  12 (1), 102-109

3)Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019

4)Activities of Daily Living. ;  Encyclopedia of the Neurological Sciences (Second Edition), 2014

5)Dog Ownership and Survival: A Systematic Review and Meta-Analysis. ; Circ. Cardiovasc. Qual. Outcomes, 12 (2019), p. e005554

6)Associations between Pet Ownership and Frailty: A Systematic Review. ; Geriatrics (Basel), 5 (2020), p. 89

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