今日も蒼野の疑問解決シリーズです。健康長寿にタンパク質摂取が必要であることは、皆様ご存知の事と思います。近年は様々な肉ブームやタンパク質ブームが起こっており、糖質制限がポピュラーになったこともあって、毎日肉ばかり食べる人も結構居られたりします。そこで食事が偏るのは健康には悪いと信じている蒼野としては、どんなタンパク質の摂り方が理想なのかを調べてみました。
タンパク質ブームには、研究の裏付けがベースにありますのでここでおさらいしておきます。人生100年時代となり、いかに老年期を元気に過ごすかということが最近の注目の的となっています。2020年に改訂された厚生労働省「日本人の食事摂取基準」で50歳以上の“たんぱく質の目標量”の下限が引き上げられています。皆様はご存知だったでしょうか?
これまでは全世代のたんぱく質の摂取目標量は、エネルギー量の13~20%とされていましたが、2020年版では、50~64歳は14~20%、65歳以上は15~20%と下限が引き上げられることになったのです。これは要介護前状態であるフレイルを防ぐのに重要だというデータが出てきていることからです。
厚生労働省のデータによると、身体活動レベルが普通の50~64歳男性なら、必要カロリーは2600Kcal、65~74歳で2400kcal、75歳以上で2100kcalです。その最低タンパク質量を計算すると、50~64歳で91g、65~74歳で90g、75歳以上で78.75gです。
身体活動レベルが普通の女性では必要カロリーが、50~64歳1950Kcal、65~74歳で1850kcal、75歳以上で1650kcalなので、その最低タンパク質量は、50~64歳で68.25g、65~74歳で69.375g、75歳以上で61.875gです。
65歳以上の日本人女性2,108人が対象の研究1)で、1日のたんぱく質摂取量が70g以上の場合、63g未満の人と比較して、フレイル率が最大4割減少したと発表されています。7gですごい差ですよね。そして男性で90g、女性で70gはかなりハードルが高い様に感じてしまいます。
タンパク質90gは、タンパク質の塊のような肉を食べるとしても、1日450gです。ゆで卵なら14個弱、納豆で18パック、米だけで食べようと思ったら、なんと1475gも食べないといけません。かなり効率良く組み合わせて、食べる必要があることがお分かりいただけると思います。
いうまでも無いことですが、身体を作る栄養として、タンパク質は重要です。筋肉の80%、皮膚の60%、腸や心臓の60%、脳の45%、骨の30%がタンパク質でできているからです。そして毎日の新陳代謝は大人でも起こっており、1日に約3%のタンパク質が入れ替わっています。体重70kgでは約250gから300gが入れ替わるのです。
原料となるタンパク質の内、オートファジーで再生されて作られるタンパク質が最大で240g程度です。現代の食生活ではオートファジーは最大化はなかなかできないと考えられるため、常に材料不足になる事無く、ちゃんとした身体の組織を作ろうと思えば、先ほどのような量のタンパク質を食べる必要があるのだと考えます。
1972-73年に100歳に達した高齢者の食事を調べた研究があります。この時点での平均的日本人のタンパク質摂取はエネルギー量の14.6%、しかし100歳に達した男性は16.0%、女性は16.9%もタンパク質を食べていました。そして総タンパク量に占める動物性タンパク量の比率は、平均的日本人では48.7%だったのに対し、男性59.6%、女性57.6%でした。
日本人の平均寿命が50歳を超えたのが1947年、戦前のご飯と味噌汁、漬物と魚(塩鮭?)という食生活の時代は明らかに短命だったのです。肉や牛乳などの消費が急増し米と塩分の消費が減少し始めてから、脳血管障害での死亡は激減しています。高齢になると肉などは食べにくくなる人も多いのですが、百寿者は動物性蛋白を多めに摂っているのです。
蒼野は健康長寿のための、タンパク質の植物性と動物性の割合が知りたくなって、調べ始めたのですが、これが一つの答えかも知れませんね! よく耳にする、朝からステーキを食べるお年寄りは元気というのは、正しいのだと思います。動物性脂肪が増えるのが気になる方もおられるかも知れませんが、脂肪摂取も、動物性脂肪と植物性脂肪をほぼ1:1の割合で摂取することが理想的なのです。
高齢者では生活習慣病の問題よりも、低栄養が健康上の大きな問題になりやすいです。死因として肺炎(2021年第5位)が増えてきていますが、低栄養、タンパク不足による免疫力低下が原因になっていることが多いのです。90歳以上の低アルブミン血症の割合は、男性17%、女性14%弱と加齢と共に激増します。
それでは肉ばかり食べる生活についてはどうでしょうか?間違った糖質制限として、肉ならいくら食べても良いと思っている患者様は、外来で話していると時々おられます。プロテインスコアが高く素晴らしい食材ではありますが、肉は身体の成長を加速する食べ物です。若い時なら良いのですが、中高年以降は、成長する食べ物=老化する食べ物とも言えるのです。
また動物性タンパク質は消化に酵素を多く必要とします。食べ過ぎて消化しきれなかった動物性タンパク質は、大腸で悪玉菌の餌になるのみならず、腐敗して大量の毒素や活性酸素を作ります。焼肉食べ放題の翌日のオナラは臭いのです。これらを解毒するためにさらに酵素が浪費され、肝臓に負担がかかります。
過剰に摂取したタンパク質は、最後は尿で排泄されるのですが、血中のアミノ酸が増えると、血液が酸性に傾き、中和のために骨や歯から多量のカルシウムが出てきます。ここでも大量の酵素を消費しながら、余分なタンパク質は、体から多量の水分をカルシウムを道連れに排出され流ことになるのです。やはりそればかり食べる食べ方は、害の方が大きくなるのです。
また消化の問題もあります。十分な量のたんぱく質を摂取しても、消化吸収しなければ意味がありません。50歳前後になると、消化酵素の活性が急激に減少するため、日頃からお腹の調子を整える事はとても重要なのです。
やはり腸内細菌叢を豊かにするためにも、やはりバランスが大事だと思います。100歳を目指すなら、動物性6割、植物性4割を意識してみましょう。そのためにはこの二つを同時に摂るダブル蛋白質摂取がお勧めです。
植物蛋白の代表は大豆です。大豆たんぱく質には、女性の健康・美容に働きかける大豆イソフラボン、抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富です。吸収速度がゆっくりしているため、血中タンパク濃度を長く保てます。筋肉分解を減らしやすくなるのです。ご飯の代わりに豆腐を食べるのもお勧めです。
ダブル蛋白と動物性蛋白のみで、筋肉分解を比べたラットの研究では、腓腹筋もヒラメ筋もダブル蛋白摂取の方が減りが少ないことが判明しました。吸収の早い動物性と吸収がゆっくりの植物性の組み合わせによって、筋タンパク質の合成率も高まることが、証明されています3)。
料理としたら麻婆豆腐とか納豆オムレツ、豆腐ハンバーグなどはどうでしょうか? プロテインもホエイ6対ソイ4で飲んでみると良い気がします? また2019年の研究では、3食のうち1食でも蛋白が不足する(0.24g/kg以下)と、除脂肪体重が減少する(筋肉が少ない)という研究もあります4)。朝食のタンパク摂取も大切ですね! 菓子パンなどで済ませないことが重要です。
16時間ファスティングでの筋肉減少が気になるため、朝はお茶とHMBサプリを飲んでいた蒼野です。今日勉強してホエイしか家にないので、ソイプロテインも買って一緒に飲んでみようと思っています!
参考文献
1)High protein intake is associated with low prevalence of frailty among old Japanese women: a multicenter cross-sectional study. Nutrition Journal 2013, 12;164
2)Nutrition for the Japanese Elderly. Nutrition and Health 8: 165-175, 1992
3)Protein Blend Ingestion Following Resistance Exercise Promotes Human Muscle Protein Synthesis. : The Journal of Nutrition, 143,(4), 410–416. 2013
4)Association of Protein Intake in Three Meals with Muscle Mass in Healthy Young Subjects: A Cross-Sectional Study. : Nutrients 11(3), 612 2019
参考ページ: 長生きしている高齢者は何を食べているか? 健康長寿ネット
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