パイオネックス

2021/12/08

 今日は、鍼治療について書いてみようと思います。鍼灸治療は2000年以上の長い歴史を有する東洋古来の伝統医療であり、様々な疾患や症状に対する効果が期待できる治療法です。 

 今から25年位前、蒼野がまだ30代半ばだった頃、エアロビクスクラスに入って踊るのが趣味だったことがあります。張り切って背中を反らしすぎた後に、ひどい腰痛を発症してしまい、翌日の仕事は大変でした。その時に初めて鍼治療を受けたのですが、先生が、『筋肉の機嫌をとっていく』という表現で次々に鍼を立てて揺らしてゆくと、驚いたことに帰る頃には、ほとんど痛みがなくなっていたのを覚えています。

 その頃から蒼野は自分でも鍼が使える様になりたいなあと、漠然と憧れていました。それが何の巡り合わせか、今年の4月から働いているクリニックでは、頭痛治療に、保険外で円皮鍼を使っていたのです。1枚100円ですから、ちょっと、ぼったくってます。

 まず患者様に貼る前に、自分で貼ってみました。蒼野はほとんど頭痛はないので、最初は効果が分かりにくかったのですが、剥がしてみた後で、首肩凝りが、貼っていた時よりも強くなっているのに気づく様になりました。次に、家族に貼ってみたところ、22歳の娘は貼った直後から、肩首に血がドクンドクン流れるのがわかると言いました。

 それから、患者様にも貼付する様になったのですが、これが好評で、来院されるたびに希望される方もおられます。一つ前のクリニックから、ついてきてくれた患者さんに、どうしても治せなかった目眩が、鍼でピタッと止まった方もおられます。中には、腰痛や膝痛にも、貼ると和らぐから貼って欲しいと言われ、貼る様になり、蒼野は鍼も使える脳外科医になったのでした。

 使っている鍼は、セイリン社製円皮鍼(PYONEX 0.6mm)です。針の部分は短く、垂直に貼る分にはほとんど痛みはありません。左右に動かすと引っ掻くので少しチクっとしますが、すぐに治ります。肌が弱い人は痒くなることがあるので、長く貼れないため、効果が分からない方もおられます。痒くなければ、貼ったまま入浴もできますし、2~3週間、剥がれるまで貼っておいて問題ありません。

 調べてみると、鍼治療の作用について、いくつか論文も見つけました。針の刺激により、主に感覚神経終末からカルシトニン遺伝子関連ペプタイド(CGRP)やサブスタンス Pなどの血管拡張物質によって局所の血管拡張が起こると考えられているそうです。局所の末梢循環の改善により,酸素,栄養物質の供給や発痛物質,疲労物質の除去が促進されます。閉塞性動脈硬化症,レイノー病,冷え症,肩こりなど 末梢循環障害に起因する疾患や、局所の痛みなどの症状に効果があると考えられています。

 片頭痛に対しての研究では、鍼治療によって頭痛日数は減少し、痛みの程度も減少しています。首肩凝りも改善が見られました。MRIを用いた実験では片頭痛患者は鍼刺激で視床、視床下部、弁蓋部、帯状回や島で脳血流量が増加しました。健康成人と比べると、血流の左右差が強かったのですが、鍼刺激で健常者のパターンに近づくことがわかりました。

 緊張型頭痛に関しても、局所の凝りの緩和だけでなく、鍼刺激で副交感神経が亢進していることが示され、脳の高位中枢に対する影響も認められています。もちろん、鍼刺激によって、筋の血流、皮膚血流は共には上昇しました。鍼治療は後頚部や肩甲間部の金軍の過緊張を緩和し、循環動態を正常化することで、頭痛を改善することが示されました。

 しかし面白いことに、片頭痛患者や、緊張型頭痛患者に見られる、脳の高位中枢に対する血流改善作用は、健常者では認められず、鍼治療は、漢方薬と同じように、生体に対する正常化作用を有するもので、副作用はより少ない可能性が示唆されています。

 使い勝手の良い針治療であるセイリン社製円皮鍼(PYONEX 0.6mm)は、Amazonなどで普通に買うことができます。他人に対する治療ではもちろん、鍼灸師や医師以外は許されないことになっているのですが、自己責任で自分に使うことは可能です。蒼野の使用経験では、重大な副作用の可能性は、とても少ないと感じています。

 貼り方は、凝った部分の皮膚を押してみて、しこりがあったり、圧痛が強かったりする部分に貼ると、しこりがほぐれて柔らかくなってきます。『痛いところに貼る』、『押して気持ちの良いところに貼る』のが基本です。皮膚が脂性だったりすると、剥げやすい人はいる様ですが、蒼野の場合は3週間くらい持ちます。頭痛、肩凝り、首こり、腰痛や膝痛には、試してみる価値があるかも知れません。

 ちなみに、フィギュアの羽生結弦選手が、首や胸に付けているものがまさしくこのPYONEXです。
オリンピック競技後のコメントによれば、鍼の効果により呼吸が楽になり、あのすばらしい演技が可能となってメダルが獲れたということです。(ネットに写真もあります)

 アスリートがパフォーマンス向上のために貼る場合には、貼ってすぐのほうが効果があるため、2~3日で、こまめに貼り替えている様です。貼ってから時間が経つと、刺激に慣れて反応が薄れてくるためです。

  東洋医学は不思議ですね! 興味がある方は是非、お試しあれ!!

セイリン社製円皮鍼(PYONEX 0.6mm)

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参考文献:  神経疾患に対する鍼治療とその作用機序    神経治療 Vol.35 N0.4 445-449(2018)