HLAと運命の赤い糸!

2023/01/19

 今日は我々の遺伝子について、蒼野が面白いなあと思った知識を書いてみたいと思います。免疫の反応で最も重要なことは、自己と非自己を区別して認識することです。これは我々の細胞の遺伝子=主要組織適合性複合体(MHC)が発現して抗原を作り、認識の指標となることで可能になります。

 この遺伝子が最初に見つかったのは1954年、白血球の表面にある抗原として発見されました。HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)と名付けられました。その後赤血球を除くほぼ全ての細胞と体液に分布している事が分かり、HLAがMHCから作られることが判明しました。

 人は2種類のHLAの組み合わせを持っていて、父親と母親の型を1つずつから受け継いでいます。なので子供には2×2の4種類のHLAタイプが生まれることになります。長い歴史のうちに、その種類は増えて行き、現在HLAタイプは数万通りあると言われています。

 免疫細胞がこのHLA抗原を確認することで、自己と非自己が判別できます。そして自分以外の非自己である細菌や、ウイルス、カビや癌細胞などを攻撃して排除し、感染症や病気を防いているのです。移植手術においても、他人の臓器や皮膚などが、自分の組織とHLAが異なるため拒否反応が起きます。これが免疫の本質です。

 しかしウイルス等は、宿主に排除されないように、変異を繰り返し、免疫をすり抜けようとします。宿主の方もそのウイルスが入ってこないように、なるべく今までとは違うHLAを持つ様に、何代もかけて変異してゆくのです。長い生物の歴史で、侵入した微生物を非自己と認識して排除できた生物が生き残り、排除出来なかった生物は絶滅してきました。

 日本人のHLAを分析し、世界の人々と比べることで、科学的に日本人がどこから来たのかを調べる研究も行われています。その結果から今のところ、日本人は、ロシアのバイカル湖畔の人々とのHLAの関連性が高いことが判明しています。日本人の源流がロシアにあるというのは、とても興味深いと思います。

 もっと面白いと思ったのは、HLAと恋愛の関係です。恋愛の究極の目的はヒトが生物として、子孫を残すことです。免疫に大きく関与するHLAはもともと自分が持っていないタイプの人と一緒になると、子孫に多様なHLAを受け継がせることが出来るのです。

 ウイルスなどのさまざまな変異に対応してこれを排除するには、多様なHLAを持つ、強い免疫が有利になります。男女間でHLAが異なるほど、つまり多様性があればあるほど、生まれてくる子どもは、病原体への対処の可能性が高く、厳しい環境に適応できる可能性を持って生まれてくることになります。

 ですから我々の遺伝子は、自分と共通していないHLAを持つ異性を、魅力的だと感じる様に出来ています。HLAが恋愛遺伝子とか、運命の赤い糸と呼ばれるのはこのためです。HLAは体液にも発現しています。汗や尿、体臭などで感じることが出来るのです。異国の人が魅力的なのは、HLAが全く違うからなのかも知れません。

 相手の匂いが、心地よい場合にはHLAが異なっていると言えます。嫌な匂いと感じる時にはHLAが近いのです。実際にもHLAが近い者どうしのカップルの場合、妊娠しづらかったり、流産しやすかったり、未熟児が生まれやすいということが知られています。血を分けた兄弟の結婚は認められていませんし、従兄弟同士の場合でも、遺伝病の確率が高くなることが知られています。

 これは別名ではフェロモンとも呼ばれていて、一目惚れなどにも影響します。「蓼食う虫も好き好き」と言われるように、人の好みは遺伝子によって異なっている可能性が高いのです。HLAの匂いに反応するのは女性だけです。異性の匂いにキュンとなるのはHLAが選んでいるのです。

 その論理から言うと、お父さんが臭いと嫌われるのは、半分HLAが一緒ですから当然なのです。洗濯物や汗の匂いも、娘にとっては耐えられないのでしょうね…。ちょっと切ないなあ!また適齢期でない男性が臭い「加齢臭」と言うのも、中年以降の男性では良い子孫を残せる確率が減るから、HLAがちゃんと指示を出しているとも言われています。

 もちろんカップルになるのは、HLAだけが理由ではありません。人間関係では似た者同士が惹かれ合う傾向が強く、考え方や能力が自分と似ている人に魅力を感じます。良い面が似ている人がカップルになると、良い面を持って生まれる確率が増えます。良い面と悪い面が両極端で異なる場合には、悪い面ばかりを受け継ぐリスクが高まるからです。

 美男美女のカップルからは美男美女が生まれやすいですよね! これも遺伝子に組み込まれた生存戦略の一つです。しかし世の中には美女と野獣というカップルも存在しています。非常に稀なHLAの持ち主であれば、何か分からないけどモテるという事も起こるのです。

 免疫力の高さは声にも現れます。数を数える声の魅力度を、女性にランク付けしてもらう実験では、声が良いと判断された人ほど、体の左右対称性が高かったそうです。もともと人間の身体は左右対称に成長しますが、成長段階で病原体に侵されるとその対称性が失われて行きます。つまり免疫力が高い程、身体は左右対称になり、それが声の魅力につながっているのです。

 他にも免疫力を測る指標は沢山あります。筋肉量、IQの高さ、喧嘩の強さなども免疫力に置き換えられて考えられやすいのです。動物では、戦いに勝ったオスがカップルになりますし、歌声やダンスでメスにアピールする事で、カップルになることが出来るのです。これは人間でも同じで、女性は潜在意識下で、男性の免疫力の高さを感じ取っているのです。

 蒼野も学生の頃は、草刈正雄(古い!)の様に生まれたらどんなに良かったろうと思っていましたが、今では魅力は容姿だけではない事を悟っています。確かに若い頃はルックスや運動神経、魅力的な声などを持つ人がモテていました。

 しかし歳を取るだけで、努力を重ねていなければ、魅力的だった容姿や声、運動能力も衰えてきます。努力を重ねることで、コミュニケーション能力が高かったり、頭の回転が良かったり、筋肉質だったり、ボイストレーニングを続けたり、性格が良かったりする方が重要ですし、二人の関係も長続きするのです。

 イケメンや美女だけがカップルになるのでは、人類は滅亡してしまいます。それぞれ違った魅力と違ったHLAを持っているので、さまざまなカップルが幸せになれるのです。最終的な魅力は免疫力です。健康に留意して生活習慣を整え、病気にならずに過ごしていきましょう。まだ独身の方は、自分の魅力を高めながらHLAの相性が最高の相手に巡り合う日を楽しみにしていてくださいね!

 イケメンじゃなくても大丈夫だよ!と過去の自分に言ってあげたい蒼野でした!

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