遺伝子で変わるカフェインとの相性!コーヒー好き必見の最新研究結果!

2023/05/02

 蒼野は自分自身がコーヒー好きで、飲むことで調子が悪くなる事もないため、コーヒーは身体に良い飲み物という立場で、今までもブログを書いていました。しかしカフェインに関しては、リスクがあるというブログも書いた事があり、よく考えるとどーなのよ! 思ったので、その辺をもう少し深掘りしてみたいと思います。

 コーヒーはカフェインを含み、世界中で最も一般的なカフェインの供給源であるため、コーヒーと健康に関する論文は、これまでにも沢山研究されてきました。カフェインは全身の血管を収縮させ、心拍数を上げるため、高血圧や頻脈性の不整脈がある人には、マイナスに働く可能性があります。そのため、命の関わる心臓病とコーヒーの関係については多くの報告があります。

 しかしその結果はバラバラです。心臓に良い効果がある研究もあれば、悪い影響があるという研究も見られます。コーヒーポリフェノールなどの、コーヒーに含まれる抗酸化物質は、血管を若返らせ、心臓の健康を保つ作用があります。一方カフェインには、血管を縮めたり、血圧を上げたりする作用があるため、心筋梗塞などの心臓病のリスクを高める作用があるのです。

 人によって良い影響なのか、リスクになるのかについては、カフェインの代謝の遺伝子の関与があります。2006年の研究では、カフェインを素早く分解できる遺伝子を持つ、59歳未満の非喫煙グループでは、コーヒーが1日1杯未満の人に比べ1~3杯/日の人では、心筋梗塞のリスクは50%前後となり、4杯以上でも1杯未満と同等でした。

 しかし、カフェイン分解が遅い遺伝子を持つ、59歳未満の非喫煙グループでは、他の要素の影響を除いて計算して多変量解析すると、1杯で24%、2~3杯で67%、4杯以上飲んだ場合には133%も心筋梗塞のリスクが増加していました1)。

 ただ59歳以上の非喫煙グループでは、動脈硬化が進み、血管が硬くなる事が影響しているのか、早く分解できるグループでは、1杯未満と比べて、1杯で10%、2~3杯で6%、4杯以上でも6%のリスク増加でした。分解が遅いグループでは、1杯で21%リスクが下がり、2~3杯で6%、4杯以上でも9%のリスク増加で済むようです。

 蒼野の歳になると、いっぱい飲んでも心臓病のリスクが上がりにくいのは嬉しいなあ! 今までの論文は、このカフェイン代謝の遺伝子別に研究していなかったため、結果がバラバラになったと考えられるのです。具体的にはカフェインを分解する酵素である「CYP1A2」が作られやすい人かどうかで、コーヒーを飲む量と健康効果の関係が決まるということになります。

 遺伝子は長い年月の間に、環境によって選ばれて行くため、民族によって、このカフェイン耐性の割合はかなり違うらしいです。例えばニュージーランド人は、カフェインにすごく弱いとのことです。ニュージーランドではカフェは午後3時には閉まってしまいます。コーヒー豆を売る店も、3時以降にはお客さんが来なくなるらしいのです。それ以降にコーヒーを飲むと眠れなくなる民族だそうです。

 日本人はどうかと言うと、東アジアの人達はカフェイン耐性がある人が多いそうです。昔からカフェインを含む「お茶」を飲む文化があった事が関係しているようです。世界でのコーヒーの普及は、17世紀(江戸時代初期ごろ)くらいらしいので、それまで全くカフェインを飲まなかった民族には、カフェインを素早く代謝する遺伝子は少ないのです。

 日本人を対象とした二つの研究によると、分解速度が速い人の割合は、39%と45%、中間型の人は45%と43%、遅い人は16%と12%とそれぞれ報告されています。もちろん個人差があり、コーヒーなどのカフェインを摂ると、心臓がバクバクしたり、不安になったり、眠れなくなったりする人は、代謝が遅い遺伝子の持ち主である可能性が高いです。

 コーヒーの健康メリットが享受できるのは、速い人もしくは中間型までの人だと思うので、自分で飲んでみて、気持ち悪かったり、好きでなければ、健康のためだからと無理して飲む必要は全くありません。むしろ害になる可能性もあると言うのは知っておくと良いと思います。

 コーヒーを何杯も飲む人は、カフェイン代謝が早い人である可能性は高いです。素早く代謝されるために、眠気覚ましの効果は小さいとも言えます。カフェインを摂取すると、脳内のアデノシン受容体に結合します。アデノシンの作用をブロックして、眠気を抑えるのです。すぐに代謝されれば、アデノシンが受容体に結合して眠くなります。

 アデノシンは、朝起きて脳を使っていると、溜まってくる物質です。脳内の睡眠物質の一つであると言われています。沢山溜まってアデノシン受容体に沢山結合すると、人は眠くなります。眠るとアデノシンは分解されてリセットされますので、ぐっすり眠れば、爽快な朝を迎えることになります。

 コーヒーを、眠くなった時の眠気覚ましに使うのは、勿体無いのです。既にアデノシンが受容体に結合していますので、パフォーマンスは少し戻る程度です。仕事に集中して、パフォーマンスが高まった状態で、カフェインを入れると、アデノシンの結合がカフェインで邪魔されるため、高いパフォーマンスが維持されます。眠くなる前の、集中が必要なタイミングがベストなのです。

 注意が必要なのは、カフェインを摂りすぎると、2~3週間で、アデノシンを作る量が増えてくることです。カフェインよりもアデノシンの受容体への結合量が増えれば、カフェインの覚醒効果は薄れ、すぐに眠くなってしまうのです。そうなれば、頭をスッキリさせようとさらにカフェインの摂取を増やしてしまいやすくなります。いわゆるカフェイン中毒に傾いて行くのです。

 「カフェインとの付き合い方」のブログでも書きましたが、カフェインは致死量のある化学物質です。効きが悪くなった時には、リセットを試みましょう。その方法は、数週間かけて徐々に減らすか、一気に断ち切るかの2通りです。減らすことで、およそ1週間でカフェイン耐性は、元の遺伝子の状態に戻ります。

 血管が拡張することで痛くなる、片頭痛体質の人は特に注意が必要です。片頭痛の人はコーヒーを飲むと血管が収縮するため、頭痛が楽になる人が多いのです。頭痛外来でもコーヒー好きの人に多くお会いしました。しかし昼間にカフェイン耐性ができる程、飲む習慣が出来てしまうと、カフェインが最も乏しくなる毎朝、逆に血管が拡張しやすくなって頭痛が起こるようになる人がいます。

 毎日、朝イチのコーヒーで頭痛を和らげる生活に陥ると、「カフェインがないと頭痛がする!」という悪循環にハマってしまう場合があるのです。必然的にコーヒーの回数も増えてしまいます。そんな場合は、頭痛薬や予防薬で対処しながら、2~3日おきにカフェインの摂取量を1/2、1/4、1/8…と段階的に減らしていく方法で、対処しましょう。

 これはカフェイン離脱頭痛と言って、片頭痛持ちの人が、合併しやすい頭痛です。カフェインを摂取しない時間が12~24時間で生じる頭痛は、カフェインの離脱症状の可能性を考えてください。カフェインの量としては毎日235mg以上(コーヒー2杯程度!)で、半数の人に発症する可能性があるので、片頭痛がひどい人は、デカフェコーヒーを選ぶべきなのでしょうね!

 結論としては、カフェインに強い遺伝子を持った人なら、1日400mg(4杯)くらいまでなら、コーヒーの健康効果が享受できます。カフェイン代謝が遅い人については、コーヒーが好きでない人も多いとは思いますが、59歳までは、時々にしておくのが良いかもしれませんね!

 カフェイン代謝が(おそらく)早くて、コーヒー好きで、59歳以上なので、これからも美味しいコーヒーを、4杯を目安に、楽しみ続けたいと思っている蒼野でした!

参考文献:
1)Coffee, CYP1A2 Genotype, and Risk of Myocardial Infarction. ; JAMA. 2006;295(10):1135-1141.

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