お正月はお餅に注意!

2022/12/31

 毎年お正月には餅を喉に詰める事故のニュースを見かけますよね。めでたい年の初めに、そんな事故は起きて欲しくありません。今日は誤嚥の予防や対処法について、一通り書いてみたいと思います。

 平成 21 年から令和元年までの調査を平均すると、65歳以上の高齢者の、食べ物による窒息事故で死亡する人は年間3,500人以上も居られます。全体の約7割を占めているのは80歳以上で、その死亡者数は2,500人以上です。

 高齢になると、歯周病で歯が少なくなり、入れ歯になったりする人も多いです。噛む筋力も低下するため、噛む力や飲み込む力などが弱くなる傾向にあります。高齢になると若い頃に比べて3分の1~10分の1にまで低下してしまいます。

 唾液の分泌も加齢と共に低下し、水分量が少なくなると、噛む力が落ちた事との相乗効果で喉の奥に食べ物を運んでゆく力が落ちてゆきます。塊のままの食べ物が喉に詰まれば窒息してしまうのです。

 詰まりやすい食べ物のN0.1が餅です。人体の喉の模型に食べ物を通す実験が行われましたが、模型の途中にくっついて中々通りません。嚥下しやすいゼリーと、ベタつき(付着性)=くっつきやすさを点数にして評価したところ、するっと喉を通るゼリーと比べると、お雑煮のような煮た餅の付着性は100倍と試算されました。

 令和2年の消費者庁の注意喚起にも、餅による窒息事故の43%が1月に発生しており、特にお正月3が日に多いとされています1)。男性が女性の2.6倍多いということですので、大きな塊をあまり噛まずに飲み込む癖のある人が多いのかも知れません。蒼野も早食いが腹ペコだと早食いしがちなので気をつけないといけません! 明日から3日間は特に注意しましょう。

 事故を防ぐためには、餅を小さく切っておき、水分と一緒に食べる、ゆっくりよく噛むのが大事です。喉の通りが良くなるように姿勢が前屈みの猫背にならないように、姿勢良く上を向いて食べましょう。餅は冷えてくると固くなるため、温かいうちに食べることもポイントになります。

 生活習慣を整えて歯槽膿漏にならないことは基本的に大事なことです。もし歯の本数が減ってしまった時には、しっかり噛める入れ歯にしておく事や咀嚼力や嚥下力を落とさないように、日頃から鍛えておくことも重要です。

 嚥下には口と喉だけではなく、さまざまな筋肉が関与しています。頸部や肩、口唇、舌、頬などの筋肉を日頃から動かしておくことが重要です。体の筋肉が減って、サルコペニアになると、嚥下の力も低下します。とにかく毎日、しっかりタンパク質を摂って、動かしておくことが重要なのです。

 食べる前に準備体操として行うパタカラ体操は、誤嚥、窒息の予防に有効とされています。「パパパ、タタタ、カカカ、ラララ」とゆっくりと5~6回発声した後、「パタカラ、パタカラ」と5~6回早く発声します。口の中で舌が激しく動いているのがわかると思います。

 もう一つ日頃からやっておきたい運動があいうべ体操です。口周囲から舌、表情筋まで鍛えられ、むくみが取れて、皺も出にくくなるため、顔貌を若々しく保つ効果もあります。鼻呼吸がしやすくなり、脳が活性化し、唾液も出やすくなるので、虫歯や歯周病にもなりにくく、もちろん誤嚥も予防します。

 「あー」と大きく口を開き、「いー」と前歯が見え首に筋が浮くくらい横に開き、「うー」とタコのように唇を突き出し、「べー」と舌先を下あごに伸ばすように出します。これを10回ずつ1日3セットが目標です。朝起床時や入浴時、寝る前などをトリガーにして習慣化すると、忘れにくいのでおすすめです。

 もちろん日頃からおしゃべりを積極的に楽しんだり、歌を歌ったりすることは重要です。高音と低音が混ざった音域の幅が広い曲を歌うと特に喉の筋肉が鍛えられます。しゃべることが少なくなった独居高齢者は特に機会を増やして欲しいと思います。

 餅の次に窒息事故が多いのが、こんにゃくゼリーです。これもニュースになりましたよね。弾力があって噛み切りにくいので、2008年の事故報道以前の大きなこんにゃくゼリーは特に危険でした。事故の後、メーカーもこんにゃく成分を減らしたり、大きさを小さくしたり、注意喚起したりして再発予防に努めているようです。高齢者と小児に死亡例が出やすいです。

 その他にも、飴や、パンなどでも窒息例が報告されています。飴の事故は幼児に多く、パンは高齢者に多いと報告されています。水分を摂らずにパンの早食い競争をした小学生にも死亡例があるようです。口にパンを沢山詰め込むのは恐ろしいことを知っておきましょう。

 もし近くの人が食べ物で窒息が疑われる場合には、救急要請すると同時に、脇の下から相手の下顎を反らすようにしっかり支え、肩甲骨の間の背中を強く叩く、背部こう打法を試しましょう。幼児なら身体ごと下を向けてさせ得ながら背中を叩きます。

 次に試すのが腹部突き上げ法です。相手を背中側から抱きかかえて自分の胸を相手の体にしっかりと密斜め上の方向に引き上げます着させます。片方の手で握りこぶしを作り、親指を相手のへそとみぞおちの中間付近にあて、斜めに引き上げて、肺の空気を圧迫することで、詰まったものを吐き出させます。しかし強い圧迫で内臓や胎児の損傷も起こりうるため、小児や妊婦には行わないよう注意が必要です。

 掃除機を使うのは最後の手段です。清潔でない掃除機のノズルを喉の奥に無理やり進めるのは、出血を招いてさらに事態が悪くなったり、誤嚥性肺炎に繋がったりする可能性があるため、最初から試す方法ではないようです。状況によっては上手く取れることもあるので、餅が詰まったままj呼吸していないような状況では、試す価値があるかも知れません。

 蒼野も明日の朝はお雑煮を食べたいと思います。自分の自転車事故の時に思ったことではありますが、ヒトは思いもよらない状況で、災難に巻き込まれる事が多いため、日常からリスクを想定して、対策を立ててゆくことがとても重要です。

 皆様と一緒に良いお正月を迎えたい蒼野でした!

参考ページ
1)消費者庁ページhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_cms204_20201223_01.pdf 

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