健康を保つ冬の過ごし方!

2022/10/31

 今朝起床時の外気温は10度、ついこの間まであんなに暑かったのに、駆け足で冬に向かっているのを感じますね! 今日は環境温が、脳機能や健康に大きな影響があるというお話です。蒼野も知らなかったことなのですが、我々の身体と室温はかなり密接に連動しているようなのです。

 2004年のコーネル大学の報告では、フロリダにあるパソコン作業をするオフィスの室温が、20度の時に比べて、25度になるとタイピングミスは44%減少し、タイプする文字量が150%増加したそうです1)。びっくりするくらい違いますよね。また25度を超えると、1度高くなる毎に、パフォーマンスは2%ずつ低下してゆくそうです。

 またフィンランドのヘルシンキ大学の研究によると、オフィスワークでの作業効率は22度が最も良かったそうです。もし蒼野が会社の社長だったら、22~25度の室温設定でリサーチして、最も効率の良い温度を見つけたいと思います。1.5倍の仕事がこなしてもらえるのなら、絶対やった方が良いですよね!

 ヒトの体内温度は37度を中心にコントロールされています。身体が必要とする様々な反応に適した温度を保つ必要があるからです。そのため視床下部の体温中枢が、環境温が低ければ、震えて熱を生み出し、高ければ、汗をかいて体温を保とうとするのです。しかし環境温が適切でなければ、ホメオスタシスを保つために多大な負荷が身体にかかってしまいます。

 そう考えると、環境温の少しの違いで脳の働きが変わるというのも、納得できる気がします。環境温は脳のパフォーマンスだけでなく、健康にも大きな影響を与えます。これから寒くなりますが、WHO(世界保健機関)は冬場の住宅の室温を「18度以上に」ということを強く勧告しています。

 イギリスでは、住宅の健康と安全性について長年調査されています。その結果では、16度以下になると、呼吸系疾患に影響が出ることと、12度以下になると、高血圧や心血管リスクが高まることが指摘されています。そうした研究を基に、先進諸国では「暖かい家は『人権』である」という思想のもと、最低室温は18~23℃でなければならないと法令で規定されています。

 しかし日本にはこうした規制はありません。昭和30年代からの高度成長期に、住宅不足に直面した我が国では、直接の危険性につながる耐震性と防火性についての基準を設けるのがやっとだったのです。実際に日本の住宅の約8割が、無断熱もしくは昭和55年以前の基準に適合する低断熱の家として残っています。

 確かに昔の日本住宅は寒いですよね! 慶応大学理工学部で、環境科学を専門とする伊香賀 俊治教授が行った国土交通省の調査によると、実際の冬場の室温を2000戸で調査したところ、居間で6割、寝室や脱衣所ではなんと9割の家が18度に達していませんでした。居間では16度、廊下や脱衣所は約12度が普通でした2)。

 教授は寒い家に住む人と暖かい家に住む人についても、2016年から調査を開始し、「冬場に1度温かい家に住むと、脳神経が2歳若くなる」というデータを出しておられます。40代から80代まで150人の脳画像を点数化して比較すると、冬季の居間室温が低い家と比べて、5度暖かくなることで脳年齢が10歳若く保てることが分かりました。

 これは健康長寿には必須の情報です。朝の居間の室温が18度未満の住宅に住む人は、総コレステロール値が高い人は2.6倍、悪玉コレステロール高値が1.6倍に増加し、また心電図上の異常所見がある人も1.9倍多くなることが示されています。寒い家では高血圧症や動脈硬化を発症しやすく、夜間頻尿リスクが高まり、自律神経や睡眠を乱すなどの研究結果が報告されています2)。

 高齢者が40%以上を占め、“日本の2050年の姿”とされる、高知県梼原(ゆすはら)町の研究では、居間の室温が18度未満の家に住む人は、18度以上の家の人よりも、高血圧を6.7倍も発症しやすいことや、夜間気温が9度未満の家の人は、そうでない人よりも循環器死亡が、4.3倍も多くなることが分かりました。室温は侮れませんね!

 室温を温かく保つのに一番重要なのは、住宅の断熱性です。自宅の断熱性の程度と病気の関係を、断熱無しの家から断熱蟻の家に引っ越した24000人の調査では、気管支喘息、のどの痛み、手足の冷え、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などが明らかに改善していることも分かりました。

 家を引っ越したり、建て替えたりできない人はどうすれば良いのでしょうか? 室内の熱が外に逃げる部位としては、窓が58%を占めています。暖房中に足元がひんやりする冷気は、ほとんどが窓からの冷気で、コールドドラフト現象と呼ばれています。古い家であれば、窓に内窓をつけて二重にしたり、高性能の複層ガラスを入れたりすると、最新性能の住宅に近づきます。

 蒼野のように借家で難しい人などの場合は、窓にプチプチタイプの断熱シートを貼ったり、長めで厚手のカーテンを使ったりすると効果があります。リビングと寝室を断熱するだけで、健康効果はかなり期待できるのです。

 室内が暖かいと、厚着する必要がありません。身軽で動きやすくなり、寒さで背中を丸めて過ごす時間も減り、活動的に動く機会が増えやすいのです。運動によって脳、特に前頭前野も刺激され、加齢によっても興味や楽しみが失われにくくなり、多くの趣味を続ける人が増えます。

 また睡眠の改善効果も重要です。室温が低いと、暖かい布団をかけていても、冷たい空気を吸い込んだり、顔や肩が冷えたりして頻尿になります。就寝前の居間の室温が18度以上に比べて、12度以上18度未満の住宅では頻尿リスクが1.2倍、12度未満では5.3倍もリスクが高まります。

 暖かい環境で眠ると2kg以上の重い布団をかける必要もなく、寝返りが打ちやすく、睡眠の質が改善されます。寝室の室温の低さは寝つきを悪くし、熟睡時間を短くして、翌日の作業効率を低下させるのです。

 暖かい環境は、免疫力が上昇して風邪を引きにくくなりますし、血流が良くなって、肩こりや頭痛が改善する人も多くなります。冬の暖房費はケチってはいけません。脳を若く保ち、認知症の予防にもなるため、是非18度以上の環境で過ごせるよう、工夫してゆきましょう。

 蒼野も家で過ごす時間は多いです。人生の半分と言っても過言ではありません。人生100年時代であれば、50年間も生活する環境を整えてゆくのは、健康にとってもコストパフォーマンスの良い方法ではないでしょうか?

 温かくする方法ですが、換気や湿度などの問題を考えると、空気を汚さないエアコン+加湿器が良いようです。オイルヒーターは想像以上に電気を食うため、蒼野家のデロンギは放置されています。電気カーペットは電磁波が気になります。石油ストーブは空気を汚すため、換気が必要になる上、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物の濃度が上昇することから、ドイツ等での室内使用は訴訟問題になります。

 冬は特にエアコンでは乾燥しやすいので湿度も、一緒に気にしておきましょう。湿度が35%以下になると、乾燥でまばたきの回数が増えるため作業効率が下がります。また逆に70%以上だと疲れを感じやすくなることも指摘されています。冬場の湿度は40~60%に保つのが理想です。

 この年まで寝室を暖めて寝る習慣が無かった蒼野です。今度の楽天お買い物マラソンで、各部屋に置く温度湿度計を買おうと心に決めました! 暖かい冬を過ごせるよう準備してゆきましょう!!

参考文献:

1)Study links warm offices to fewer typing errors and higher productivity.  Cornell Chronicle : October 19, 2004
https://news.cornell.edu/stories/2004/10/warm-offices-linked-fewer-typing-errors-higher-productivity

参考資料:2)断熱改修による居住者の健康への影響調査 概要
     https://www.mlit.go.jp/common/001270049.pdf

参考書籍: 室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる  笹井 恵里子

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