昨日の発熱外来で、初めて10人以上の患者様を経験した蒼野です。ほとんどPCRを提出したのですが(中には簡易な抗原検査を希望される方もおられます)、午前中分は夕方結果が出て、先週までと違って陽性率が急に高まっていました。第7波の到来を肌で感じました。
先日も書いたように、BA.5株は免疫逃避の性質があり、ワクチン接種後や一度罹っていても罹りやすい性質があります。今後免疫力がどうしても低い高齢者の感染も増えてくると思われるため、まだエビデンスは確定していませんが、今蒼野が発熱外来で行っている処方についてお伝えしたいと思います。
風邪に効く西洋薬は無いということは、ご存知の方も多いかと思います。一般的な市販の風邪薬は、咳止めや頭痛、発熱に対する解熱鎮痛剤、くしゃみ鼻水に対する抗ヒスタミン剤、喉の炎症を起こすプラスミンの活性化を抑えるトラネキサム酸などが配合された、対症療法の薬です。根本的に風邪ウイルスを除去する薬では無いのです。
蒼野が考える、風邪に効く薬は漢方薬だけです。インフルエンザや腸チフスなどの悪性流行病に対する処方がまとめられた、「傷寒論」は西暦200年に原書が書かれ、その頃の処方である葛根湯や小柴胡湯は現在でもまだ残っています。
以前も書きましたが、漢方薬は生薬の組み合わせで作られるため、薬効成分を細かくみると3000種類も入っていることがわかっており、これら一つ一つを解析して、どうして有効なのかを調べることは、現時点では困難です。
ただ1800年以上にわたって使用し続けられており、二重盲検比較試験こそ行われていませんが、あらゆる臨床現場で使用され、有用なものが残ってきたと考えられます。使い方を病態に合わせることができれば、即効性もあり、疾患を根本から治し、症状を改善した上で、内服を中止できる薬なのです。
漢方の勉強会などで、質問したり、漢方エキスパートの先生方のお話を聞き、発熱外来で、発熱、咽頭痛、頭痛、全身倦怠などがある患者様に対して、現在蒼野は、バカの一つ覚えのように出している処方があります。葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏=柴葛解肌湯という処方です。
葛根湯は西暦200年の頃からあった処方で、かぜ症状が出たらすぐに1回分内服することで、最大の効果を発揮する薬です。朝喉が痛いのに、昼に飲んだのでは既に遅れています。すぐに飲んで2時間後にもう一度飲むことがポイントです。
症状が治らない場合にはさらに2時間後にもう1包追加します。普通の感冒も、インフルエンザもB型なら葛根湯で大丈夫です。(インフルエンザAは麻黄湯)。よほど胃が弱い人でなければ、副作用は出にくい薬です。麻黄が入っているので夜飲むと眠りにくくはなりますが、風邪で寝込むよりは良いかと思います。
漢方薬は長く飲まないと効かないと思われている方も多いかもしれませんね! しかし西暦200年の時代の人が、効果も感じられないのに、葛根湯を飲み続けていたというのは、考えにくいですよね。「傷寒論」は急性疾患に対する治療薬の書物であり、発熱、咳、頭痛、嘔吐、下痢などを速やかに改善する薬が紹介され、今でも残っているのです。
もう一つの小柴胡湯加桔梗石膏は、消炎鎮痛作用のある小柴胡湯に、ウイルスや細菌の体内への入り口である咽頭部の症状を和らげる桔梗・石膏を加えた処方です。「本朝経験方」という日本漢方の文献にある、比較的新しい処方です。オミクロン株になって、咽頭痛を訴える患者様が多いこともあって、この処方が活躍します。
この2剤の組み合わせである葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏=柴葛解肌湯は、江戸~明治時代の名医浅田宗伯先生が考案した処方です。その門下生である木村博昭先生が、スペインかぜの時に、麻黄湯+越婢加朮湯=大青竜湯と共に使用し、治療を受けた患者の死亡を0に抑えたとされています。すごいことですよね!
蒼野自身は内科医でもなく、外来で新型コロナのフォローも行っていないため、薬の効きに関して直接患者様に聞く機会が無いのですが、この処方を行っている埼玉県の開業医、松田 正先生のBA.2に対する処方経験についてお伝えします。
PCR検査陽性となった症例の約85%の症例に柴葛解肌湯を使用し、残り約15%の症例には大青竜湯、麻黄湯、葛根湯を使用したそうです。漢方薬治療により、大半の症例で2日以内に症状軽快を認めました。小児科症例(中学生以下)では、漢方薬治療により24時間以内に解熱・症状軽快を得られたケースが圧倒的に多い印象だったと述べられています。
解熱後、咽頭痛、頭痛、倦怠感の症状が残存した症例も複数ありましたが、ほとんどの場合、5日以内に薬が要らなくなったようです。一方漢方が飲めないということで、漢方薬を使用しなかった症例の多くで、3~5日間は発熱や症状の持続を認めました。ただ、小児の場合には未治療でも24時間以内に、自然に解熱・軽快した症例もありました。
さて飲み方です。柴葛解肌湯は葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1回分として、初診時の最初の2回内服分は、2時間空けて2回連続で内服します。その後は1日3回の内服とします。午前に来院した場合は1日4包、午後の場合は1日3包の内服になります。小児・青年期、妊婦、授乳中の女性、透析患者であっても、絶対禁忌なく等しく治療が可能な処方なのです。
松田先生によると、咳嗽が残る、あるいは悪化する症例のほとんどは、百日咳との合併例だそうです。百日咳抗体を調べれば判明し、その場合にはアジスロマイシン+竹筎温胆湯の併用が必要となるそうです。
蒼野のところの発熱外来では、もちろんPCRが(ー)になることもあると思うのですが、普通の喉が痛い感冒やインフルエンザにも柴葛解肌湯はよく効きます。短期の使用では副作用も気にしなくて良いため、漢方が飲めるという患者様には、こればかり処方しています。
現在のCOVID-19は軽症例が多いため、治療が確立されていません。重症化リスクが高くないと西洋薬治療(抗ウイルス薬)の適応にもならないのです。またPCRで確定するまでにも飲む薬がありません。身体はウイルス感染に対して、発熱してウイルスを殺し、咳や痰で排出しようとしています。普通の感冒薬でこれらを邪魔すると、治るまでの期間が延長してしまうのです。
繰り返しになりますが、漢方薬は1800年以上の歴史があり、その存在自体がある種のエビデンスです。効かない薬は残っていないからです。20年以上使用されている西洋薬は数えるほどしかありません。そう考えるとすごいことだと思いませんか?
現在はコロナとの共存を考えてゆく時期に入っていると思います。蒼野自身も感染する可能性は十分考えておかないといけません。後遺症に対しても漢方は有効ですので、また機会を改めて書かせて頂きます。かかりつけ医さんで相談して、いざという時には、是非柴葛解肌湯を試してみて下さいね!(葛根湯、小柴胡湯、桔梗石膏は薬局でも買えるので、合わせて飲みましょう!)
カバンにはいつも葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を用意しておこうと思っている蒼野でした。
注)ツムラもクラシエも、生産が追いついておらず、現時点(2022年12月24日)では小柴胡湯加桔梗石膏や小柴胡湯は病院での処方は厳しくなっています。葛根湯だけでももらって初期に飲めば違うと思います。通販ではまだ葛根湯、小柴胡湯加桔梗石膏、小柴胡湯、桔梗石膏は売られていました。すべての商品内容が確認はできておりませんので、申し訳ないのですが、ご自分の判断で内服はお決めくださいね!
参考ページ: コロナ禍で活躍する漢方薬「柴葛解肌湯」の実力
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/matsuda/202204/574540.html
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