蒼野は日曜日に産業医の単位を取得する講座を、7時間受講してきました。その中で印象に残った過労自殺について、今日はまとめてアウトプットしておきたいと思います。昨今働き方改革が叫ばれる様になり、労働環境は良くなってゆく部分もあるのかも知れませんが、仕事量が減る訳では無いですから、今後も大きな問題を抱えていると感じます。
ブラック企業による過重労働からの自殺に対して、初めて会社の責任が裁判で明らかになったのは、1991年の電通事件が最初とのことです。連日の深夜残業や徹夜の繰り返しで、心身の疲労が溜まった入社1年目の25歳の男性が、担当イベントが無事終了した直後に衝動的に自殺した事件です。
これは93年の両親の提訴で、最高裁までゆき、2000年にようやく和解が成立しました。これが過剰業務と過労自殺の因果関係を、裁判所が初めて認めた症例です。雇い主である事業者は、社員に対して安全配慮義務があると認められたのです。
蒼野も覚えている「24時間戦えますか?」のCMが流行ったのは1988年でしたから、それまでは残業は、個人の問題と思われていました。しかしこの一件で、業務内容や電通の人の考え方が、全て変わった訳ではありません。2015年8月には労基署から是正勧告がなされていたにも関わらず、12月に24歳で東大出の高橋まつりさんが飛び降り自殺するという第2の電通事件を、記憶されている方も多いかと思います。
対策として電通は翌年10月から、午後10時には全館消灯し深夜残業を防止することになりました。問題解決かと思いきや、近年は正社員ではなく、業務委託契約をする社員が増えている様です。業務委託契約であれば、労働者は個人事業主になります。直接の社員では無いので、会社は安全配慮義務が生じなくなるのです。
仕事を依頼し、期日までに仕上げてもらうことに対する対価を支払う方式です。これは働く人にとっても、税金対策や社会保険料の点でのメリットはありますが、契約の段階で仕事に対する単価を安く出来たり、仕上がりが悪ければ次の仕事は頼まないことも出来るため、働く側の負担はかえって増えている様にも思えます。
もちろん長時間労働で、全員が自殺する訳では無いのでしょうが、真面目な人程、長時間労働→過労→集中力、パフォーマンス低下→さらに長時間労働という悪循環にハマった挙句、過労→精神障害→過労自殺と進んでしまう場合が多いということです。
高橋まつりさんのツイートでは、「1日20時間とか会社にいると、もはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな」とか、「今から帰宅だが、どう見積もっても時間が足りないぞ? 苦手なことがあると効率が悪くなりすぎるな…」などと投稿されています。
仕事が多い→疲れる→仕事のパフォーマンスが下がる→上司に励まされる→気持ちばかりが焦る→ミスが出る→さらに仕事が進まなくなり、君らしくないなと言われる→みんなに申し訳ない、もうダメかも→自分がいない方がみんなの為だ!という悪魔のメンタルループにハマる人が自殺に至るのだと考えられます。本当に可哀想なのですが、自殺した人の遺書には、残った人への謝罪の言葉が綴られているそうです。
覚めた目で見れば、「死ぬくらいなら会社を辞めれば良い」とも思われますが、日本人はなかなか出来ないのでしょうね。海外から見ると日本の労働者は「成果ではなく、いまだに何時間働いたかによって評価される」と言われています。ドイツでは、「過労による死が死因として認められるのは日本のみである」とも指摘されているのです。
現時点での会社の上にいる人たちは、24時間戦ってきたけど、バブル期でストレスも発散出来てきた年代ですよね。同じことを暗黒の30年世代の新入社員に強要するのは酷だと感じます。産業医というのは、企業に雇われていても、中立の立場で、働いている人の健康を守るのが仕事です。責任重大だなあと感じると共に、会社のシステム自体を変えてゆく必要がありそうです。
人の集中力は朝起きてから、13時間しか続かないそうです。また樺沢先生の著書でも、毎日6時間睡眠を続けていると2週間で二日徹夜したのと同じパフォーマンスしか出せなくなる、とあります。ミスをする確率が20%高まり、同じ業務をこなすのに14%長くかかります。うつ病になる確立も5.8倍と激増するのです。
それでは心の健康を保つための方法について、習ったことをアウトプットしてみます。心の問題は外見からは分かりにくいです。まずはセルフケアからになります。まずストレスや睡眠不足についての知識が重要です。自分でストレスや睡眠不足に気づき対処しましょう。もちろんストレスのない職場は無いと思います。疲れすぎて分からなくなる前に、疲れたら休むのが基本です。
職場での心の健康管理は、安全配慮義務のある事業者が、主体となって行うよう明記されています。これは短期的な収益性とは異なる部門です。労働者の意見を聞く体制と、労働環境の整備を、把握した実態に則して取り組むことになっています。昇進や配置転換、退職者の発生、職場のいじめなどはきっかけとして自殺につながる可能性がある事象であることを意識する必要があります。
産業医や保健スタッフの役割は、セルフケアや事業所の指摘で、労働者の相談を受けたり、労働環境整備を行う手伝いをすることです。メンタルダウンの人の職場復帰の支援、具体的なヘルスケアの企画の立案、個別の健康情報について本人と相談したり、治療が必要な場合には、心療内科への橋渡しを行ったりします。
メンタル不調の労働者が出た場合に、早期の段階で、安心して相談でき、ケアを受けられる体制作りが必要です。職場だけでなく家庭や個人のストレスが原因の場合もあるため、よく状況を把握することが重要です。配置転換などの情報は人事労務管理から情報を得ることも重要です。
上司は部下が「いつもと違う」ことに気付いて話を聞くことが重要です。なかなか自分からは言い出せないので、その時点で産業医や産業看護職につなぎます。早期であれば、短期間の休業で復帰できる可能性も高まります。
遅刻、早退、欠勤(特に無断欠勤)、残業や休日出勤が増える。仕事のパフォーマンスが下がる。報告や相談、会話が減る。表情や動作に元気や活気が見られない。おかしな言動、ミスや事故を起こす。服装がおかしくなるなどが、メンタル不調のサインです。
これを『ケチな飲み屋』と覚えるのが簡単です。欠勤のケ、遅刻のチ、泣き言のナ、能率低下のノ、ミスや事故のミ、辞めたいのヤです。職場で長時間労働している人には声をかけましょう。話は共感しながら聞き、その人自身を肯定的に受け入れることが必要です。適切な情報を与えるとともに、産業医や看護師と相談する様、促します。
でも娘たちの職場の話を聞いても、現実はなかなか厳しいですね! 昭和の頭の上司には、やはり職場の安全性の意識は乏しい様に感じます。つい最近も○ック○ーターのパワハラの話もありましたよね! 研修医の過労自殺も最近のホットな話題です。だんだん昭和の頭の人が少なくなると、働きやすくなるのでしょうか? 上の立場になる人ほど、勉強は必要だなあと、改めて感じた講義でした。
バイト感覚で産業医をする人も多いと聞きます。でもその責任は重大ですね! 働いている人に寄り添える産業医になりたいなあという思いを強くした蒼野でした!
参考書籍: ブレインメンタル強化大全 樺沢 紫苑
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