生き抜く本能は現代の罠?!

2023/07/13

 今日は蒼野が最近知った言葉について、解説したいと思います。『超正常刺激』という言葉です。これは進化の過程で、種の保存のための本能に根ざすものです。自然の中で生きている動物は、正常の刺激によって、行動が起こります。しかしそれが現実にあり得ない=超正常の刺激であるとさらにその行動が加速するといいうことを指しています。

 難しい言い回しですみません。例えば、孔雀のように尾が長く立派である程、モテる鳥がいます。実験で現実に有り得ないほど長い人口の尾を付けたオスは、モテモテに変身するのだそうです。メスは尾の長さという、超正常刺激に、過敏に反応したということになります。

 トゲウオという魚は、繁殖期に自分の縄張りを作り、そこに入ってくるオスを攻撃します。発情したオスの目印は、赤く婚姻色に変化したその腹部です。下半分を赤く塗った楕円形の模型を、縄張りに入れると激しく攻撃を行うのです。

 またミヤコドリという鳥は、産んだ卵のうち、大きくて元気なヒナが出てきそうな卵を中心に温める習性があります。そこで本物の卵の2~3倍の大きさのボールを巣に入れると、ミヤコドリは、自分の本物の卵を放り出して、偽物のボールを温めるのだそうです。想像すると、滑稽で「お馬鹿さん!」と言いたくなります。

 しかし人間も、大自然の中で進化し、生き延びてきた動物です。同じような本能が我々の行動を支配していることを知っておく必要があります。いくつか例を挙げてみましょう。赤ちゃんは人間でも動物でも可愛いですよね。我々には、顔は丸く、顔の大きさの割に目が大きく、鼻が小さいものを、可愛いと思う本能が備わっています。

 一目みたときの鼻の高さは、幼いのか大人なのかを判断する直感的な基準になっているのです。確かに子犬も赤ちゃんも鼻は低いですよね。鼻が高い赤ちゃんがいたら違和感を感じます。これはアニメに応用されます。頭が大きく、手足や体が短くデフォルメされたキャラクターは、「カッコいい」ではなく「可愛い」ですよね。我々は無防備に可愛さを感じます。現実には存在しないため、これも超正常刺激です。

 男性から見ると、ぼんきゅっぼんの女性はとても魅力的です。種の保存の本能からは、沢山子供が産めそうな体型は魅力的なのです。蒼野も若い頃、理想の女性は「峰不二子」だと言っていた時期がありました(恥)。最近のSNSの女性は、こういうパターンの人も多いですよね。周りに居ないような頭身やプロポーションであっても、人気が出るのは、人間が超正常刺激に反応するからなのです。

 王様が冠をかぶるのも、鬼にツノがあり、天使に輪っかがあるのも、ブッダに後光が差しているのも、特別な存在であることを強調しています。日本人がちょんまげを結っていたのも同様です。禿げてちょんまげが結えなくなると武士は引退だったそうです。これは時代や文化でも変わってゆきますが、世界中で見られるということは、普通にはない髪型や頭の形に、人々が反応していたことを示しています。なんか長いしっぽが好きな鳥と一緒ですよね!

 食べ物も同様です。原始時代の自然の食べ物には、糖質も脂肪も旨みもたっぷりというものは存在していませんでした。長い飢餓の時代に、少しでもカロリーのあるものを摂取することが、生存につながった我々は、カロリーやタンパク質の旨みがある食べ物を本能的に美味しいと思います。現代の技術ではそれを、超加工食品に凝縮することができるのです。これは味覚にとってあり得ない超正常な刺激となっています。食べまくってしまうのも本能なのです。

 人類が生き残るために必要だったのは、食べ物だけではありません。どこに行けば確実に食べ物があるのか? 病気になった時の薬草はどれなのか? 誰が自分の味方で、自分を守ってくれるのか?などの情報は、生き残るために必須でした。人類は情報をゲットし、人と交流する事が快感になる本能が備わっているのです。

 これが見事に応用されたのが、インターネットでありSNSです。情報の尽きない泉でもあり、SASは手軽で、多くの交流を提供してくれます。しかし情報が多すぎることから、デジタル環境にハマっていると、どんどん時間が無くなります。蒼野自身もTikTokを開くと、どんどん見てしまいます。あっという間に時間が経ち、必ず後悔するのですが、ズルズル見てしまうのです。

 原始人にとって、他人の体験のストーリーは貴重な情報でした。他人に共感しながら話を聞くことで、それを知識に変えて、自分の行動や決定をより良いものにすることが出来ました。人類はストーリーを見始めると止められなくなるのです。Netflixが良い例ですよね! 現実にはあり得ない登場人物や、話がてんこ盛りで、まさに超正常刺激となっています。

 現代のビジネスはまるでカッコウのようです。托卵といって、カッコウは宿主となる鳥の巣に、より大きな卵を産みます。宿主の鳥は、本能でその大きな卵を温めるのです。カッコウのヒナは、短期間で生まれ、巣の持ち主の卵やヒナを、巣から落とします。そしてカッコウのヒナは宿主に大事に育ててもらうのです。超正常刺激に慣れてしまうと、正常な刺激では満足できなくなります。健康や人生にとって大事なものが偽物に変わってしまうのです。

 現代社会でビジネスを行うには、この本能を使わない手はありません。それは人類が進化した環境にはなかった、あり得ないほど強い刺激です。本能に訴えるものばかりで、それを疑う思考回路は我々の頭には存在しません。依存になるように作られています。恐ろしくないでしょうか?我々はそれを、知識として知っておき、コントロールする必要があります。

 それだけが理由では無いとは思いますが、リアルな恋愛や結婚よりも、アニメやアイドル、推しなどの、作られたイメージの、存在すらしない人物に惚れ込んでしまう人は、蒼野が若かった頃よりも、圧倒的に増えているように感じます。ポルノグラフィーも溢れていて、お金と時間と人付き合いを上手く行わなくても、性欲を満たすこともできます。

 今後はメタバースの中をアバターで活動していれば、毎日超正常刺激に浸って生きていける時代が来るのかもしれません。アナログ、昭和世代だからこそ思うのですが、やはりリアルと本物にこだわって、手間や身体を使って活動する方が健康的で、毎日快適に、充実した人生が送れるのではないかと感じています。娘も含めてデジタル世代にも、本当に分かってもらいたいと思っているのです。

 一つの例として、IT系のルポライターだったポール・ミラーさんが2012年から1年間、仕事になくてはならなかったスマホやネットを断つデジタル断食を行なった話があります。驚くことに、仕事に支障が出るどころか、逆に生産性やモチベーションが上がり、原稿が早く書き上がるようになったそうです。

 超正常刺激は、やめると脳の過剰興奮が徐々におさまり、元の状態に戻ってゆく事が報告されています。超加工食品にしても、デジタル情報にしても、原始時代にはなかった強烈な刺激です。それはストレスでもあり、そのまま慢性化してしまうと、知らない間に我々の命を削っていることを知っておく必要があります。

 超正常刺激への対抗策は、まずその本質に気づく事です。自分が偽物の大きな卵を温めている事に気づきましょう。健康的な食事や運動、睡眠を習慣にすることで、超正常刺激の多い生活がストレスであることに気づきます。また健康になることで自己抑制の力が蓄えられるのです。マイルールを決め、時間を区切って、デジタルデバイスを使いましょう。夜は使わないのが理想です。リアルな交流や環境を大事にして、充実した時間を過ごしましょう。

 書きながら自分の生活の改善点が見えてきました。考えてみるとメールやSNSチェックに膨大な時間を費やしてしまっている蒼野です。読書や運動、美味しい食事や、リアルでの交流、質の高い睡眠などで、もっと本能が満足する、昔ながらの方法を追求してゆきたい蒼野でした。

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