今日はサプリメントについて書きたいと思います。サプリメントは不足している栄養素を濃縮したものです。現代生活で不足しがちな栄養を補うというものである、というのが本質です。しかしそのマーケティングは還元主義的な論理が幅を利かせています。

　それは昨日も書きましたが、このサプリにはビタミンAもCもEも入っているので、抗酸化ビタミンのおかげで老化しにくくなります。とか、カルシウムが入っているので骨粗鬆症が予防できます、とかという論理です。昨日の論文にもあったように、体内でビタミンAに変換されるβカロチンのサプリメントで、肺がんと癌死亡が増えたという報告があったように、その論理は仮説であって、何ら保証されたものではありません。

　また副作用が出ないまでも、全く効果がないものであれば、わざわざ代金を払って飲む必要もないですよね。蒼野は健康オタクであるため、30歳くらいから、数々のサプリメントを飲んできています。確かに飲まないと、しんどいと感じたりするものについては効果があると思っていますが、厳選して、少し整理しないといけないなと思っています。

　体調が好ましく無い人が増えているためか、日本も含め、世界的にサプリメント市場は拡大してきています。去年の日本のサプリメント市場は1兆3720億円だそうです。スマホを見ていてもダイエットサプリの宣伝は多いなあと感じます。しかしめっちゃ痩せるサプリは危ないです。

　栄養を補給しただけで痩せるというのは、普通に考えておかしく無いですか？　2002年に中国製ダイエットサプリで死亡例を含む健康被害が生じた事件を覚えておられる方がおられますでしょうか？　これには代謝を上げる甲状腺末が含まれていました。甲状腺機能亢進症（美人病）を作ることで、飲むだけで痩せるという訳です。

　ホルモンですから、すぐに効くのは当たり前です。これに食欲抑制薬や緩下剤、利尿剤などを添加し、食べる量が減った上に、お通じや尿としての重量が減ることで、飲み始めると週に何キロも痩せるという訳です。考えただけでも身体に対する負担は大きそうです。甲状腺ホルモンによって不整脈や心不全、骨粗鬆症のリスクは高まり、場合によっては突然死することがあります。飲み続ければ、正常な甲状腺ホルモンが出にくくなり、甲状腺機能低下症になります。

　食欲抑制薬で使われるものとして、N-ニトロソフェンフルラミンというものがあります。アメリカではこれを内服した患者に、心臓弁膜症や肺高血圧症の発症が見られたため、1997年に使用禁止になっています。しかし効き目だけで見れば「めっちゃ痩せる」と高評価になりやすいと思います。サプリは成分表を見ても表示が無かったりするため、判断は難しいです。特に個人輸入などで買って飲むのは避けてほしいと思います。

　またサプリメントは高齢者向けのものも多いですよね。テレビ広告や新聞のチラシでも、多いと感じます。認知症予防や、膝腰の痛み改善、筋力増強などが謳われています。使った人の効果がグラフで示されているものや、医師推薦とか、有名人の体験談とか、売上NO.1とか聞くと、試してみたくなります。そして今だけ半額とか、定期購入がお得、などの誘いに乗ってしまうのです。

　うちの母親の実家にも、数ヶ月分のサプリが山積みになっており、コロナ明けで久しぶりに帰省した時に、全て定期購入をキャンセルする電話をかけました。身体の悩みが多いお年寄りにとっては、健康的な料理を続けたり、運動したりするより、手っ取り早く、飲むだけで治ると言われる方が心に響くのでしょうね。

　サプリメントは薬とは違い、そのサプリメント商品自体のエビデンスが無いものが多いです。その効果については、この成分が入っているので、還元主義的に考えて効くとされているものが、ほとんどです。もし論文がある場合でも、一企業が多大な資金をかけて、大規模なランダム化比較試験ができるはずもありません。商業的利益に一致する結果を導いた、スポンサーバイアスがかかった研究であることが多いのです。

　サプリメント商品も玉石混交ですので、品質と安全性を十分に検討する必要があります。栄養補助食品というカテゴリーですので、医薬品とは異なり、その製造プロセスや内容物に、厳格な規制はありません。商品によっては、有効成分と書かれているものがごく少量しか入っていなかったり、表示されている成分と異なるものが入っていたりすることもあるのです。

　昨日の食品の記事でも書きましたが、一つのスーパーフードや、一つのサプリメントで身体が変わるというのは幻想です。それほど身体も科学も単純ではありません。質の低い研究や動物実験が、飲んだ人全員に有効なエビデンスだ、と見せているものは多いので、企業の姿勢も含めて見極める必要がありますね！

　しかし蒼野自身はサプリメントを飲んでいます。全部否定という訳では無いのです。現代のライフスタイル、特に食事の習慣は、一部の栄養素が不足しがちであるのは間違いありません。理想を言えば新鮮な食材を調理して、毎日食べて不足しないようにするのが良いのですが、個々の環境や状況によっては、出来ない人が多いのも事実です。

　まずは現代人に不足している栄養素を知っておくことが重要です。それでは一般的に不足している栄養素を挙げてみます。

１、食物繊維　カリウム：　多くの人は野菜果物不足です。1日350gの野菜と200gの果物が摂れている人は一握りだと思います。カリウムは高血圧にも影響するため、主食を野菜にするのがデフォルトになると良いですね！

２、ビタミンD：1日中屋内で過ごす人が多くなり、また美白が好まれるため、日焼け止めを使っている人などでは、ビタミンDが不足しがちです。また食事からの摂取も限定的です。全ての蛋白代謝に関わる大事なビタミンですので、日光に当たらない人はサプリメントを検討しましょう。

３、鉄：特に閉経までの女性では、生理で失われることもあり、不足気味です。貧血気味の人では、サプリメントで改善する場合もあります。しかしアイオワ州の38772人の研究では、鉄のサプリメントを摂っている高齢女性の方が死亡リスクが高いと報告されています１）。閉経後もそのまま摂り続けるのはリスクがあるかもしれません。

４、葉酸：日本人女性の平均摂取量は若干の不足気味ですが、妊活中、妊娠中の所要量は倍必要になるため、胎児の正常発育のために葉酸の薬やサプリメントは必要です。

５、オメガ３脂肪酸：魚やナッツ等を食べない食生活の人では不足します。しかし非常に酸化しやすい油ですので、サプリメントのオメガ３は、信頼できるメーカーでなければお勧めできません。高脂血症薬であるEPA製剤や、EPA.DHA製剤の方が、薬品の品質管理が求められている分安心です。蒼野はコレステロールが高いので飲んでいます。高くない人は、二日に1回は魚、できれば刺身を食べるのをお勧めします。

６、ビタミンB12：加齢と共に吸収率が低下するビタミンであるため、食事では食べれない量の薬やサプリメントを飲むことで、正常範囲をキープできると報告されています２）。

　これは蒼野の私見ですが、腸の具合が悪い人では、食物繊維やプロバイオティックスのサプリメントを使ってみるのは良いのでは無いかと思っています。どうしても沢山の野菜や果物、発酵食品が食べられない人は多いと思うからです。毎日補給するものであれば、怪しいものには手を出さないことが重要です。

　個人差があるので試してみるしかありませんが、蒼野は、i-Harbの、PGXという食物繊維と、プレバイオティックス（色々試してます）の補給を始めてから、便の性状が良くなり、スルッと出るので、トイレ時間が短くなりました。しかしこれらもSIBOや、過敏性腸症候群、一部の便秘の人などでは合わないこともあるので、現在お腹の調子がかなり悪い人にはお勧めはしません。

　またサプリメントの摂り方は、毎日同じ食べ物を食べないのと同じで、長期間続けないことも重要かもしれません。過ぎたるは及ばざるが如しです。日替わりでサプリメントを摂ることで、副作用のリスクを減らせるように思いますので、蒼野もそうしています。栄養は出来るだけ食品で摂ることを基本にしておくことが、とても重要です。

　最後に復習になりますが、サプリメントは基本的には、安全性や有効性が確実とは言えないものです。厳格な規制のある薬剤でも副作用はありますから、サプリメントは尚更なのです。またその栄養が入っているだけでは、病気予防や健康には寄与しない可能性があります。内容成分によっては健康被害のリスクもあるということは知っておいてほしいと思います。

　毎日多種類の野菜の入ったおかずをたくさん作ってくれる妻に、感謝しかない蒼野でした。

参考文献
１）Dietary Supplements and Mortality Rate in Older Women The Iowa Women’s Health Study. ; Arch Intern Med. 2011;171(18):1625-1633

２）Oral cyanocobalamin supplementation in older people with vitamin B12 deficiency: a dose-finding trial. ; Arch Intern Med. 2005 May 23;165 (10) : 1167-72.

i-Harb :Natural Factors, PGX デイリー、ウルトラ･マトリクス･ソフトジェル
https://jp.iherb.com/pr/natural-factors-pgx-daily-ultra-matrix-softgels-750-mg-240-softgels/10815

もし記事が良かったよ！と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。