皆様はカロリーゼロとか、カロリーオフ、シュガーレスと言う食品や飲み物を利用されていますか? 蒼野もビールの味が好きだったりしたので、毎日晩酌していた時には、後ろめたい気もあって、カロリーゼロの発泡酒を選んだり、カロリーオフのノンアルコールドリンクを飲んだりしていた時期があります。
理屈から考えれば、甘くても血糖値が上がらないため、インスリン分泌は無く、太らないし、病気にもなりにくいと考えられますよね。これらを毎日摂取しているアメリカ人は30%以上いるそうです。しかし時代が進んでさまざまな研究結果を見ると、必ずしも安全では無いことが分かってきています。今日は人工甘味料について深堀りしてみたいと思います。
人類の飢餓の歴史から考えると、甘みを好まない人はほとんど居ないはずです。生存に有利な甘い食べ物や飲み物は、脳に報酬を与え、摂取すると快感を感じるようにできています。しかし飽食の現代になると、原価が安く作れて、誰もが好むため、売れる製品作りに、甘みは欠かせない物になっています。
芋やコーンなどから工業的に作られるブドウ糖果糖液糖はその最たるもので、その摂取が多い人は、体内で糖化反応が促進されるため、老化し、肥満し、糖尿病やペットボトル症候群を発症しやすくなります。セーブする意識がなければ早晩、多くの生活習慣病につながってしまう悪魔の食材です。これはさまざまな加工食品に加えられているのです。
我が国でも、肥満、メタボリックシンドローム対策が広く打ち出され、我々もこれらの異性化糖が、めっちゃ身体に悪いことが認識されるようになってきています。しかし甘いものは食べたいし、ビールやコーラも飲みたいということで出てきたのが、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロースなどの人工甘味料なのです。
これらの人工甘味料は、苦くなく、甘味が持続し、熱で変性せず、水に溶けやすいため、飲料やお菓子類に多く配合されているのが現状です。世の中の糖質制限の流行もあって、もてはやされている感があります。それでは、甘みを人工甘味料に変えると本当に痩せるのでしょうか?
7件のランダム化比較試験を含む過去論文をメタ解析し、40万人のデータを見た2017年のカナダの研究結果によると、人工甘味料の使用と不使用に分けて、最短6ヶ月、最長10年追跡したところ、残念ながら人工甘味料の摂取と体重減少の関連性は確認されませんでした。
むしろ観察研究の結果では、人工甘味料の摂取と体重増加、腹囲増加、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、心臓疾患をはじめとするその他の健康上の問題との関連性が見られました1)。不思議ですよね!
その理由の一つがこれらの食べ物は、甘いのにカロリーが少ない事です。アスパルテームとアセスルファムKの甘みは砂糖の200倍です。アスパルテームのカロリーは1g 4kcalと砂糖と一緒なのですが、使う量が200分の1で済むため、カロリーが200分の1になるのです。スクラロースに至っては砂糖の600倍もの甘さがありますがカロリーは本当にゼロです。物理で考えれば、同じ甘さがカロリーオフで実現できます。
しかし我々の身体の反応は複雑です。まず脳が混乱します。人工甘味料を常用していると「こんなに甘いのに、カロリーが入ってこない」「これは生命の危機的状況だ」と判断し、食欲を増してカロリーを増やそうとするのです。人工甘味料を摂り続けると、知らない間に食べる量が増えてしまうことになります。
また腸管も甘みに反応します。甘いものを食べると、腸の味覚がそれを感じて、インクレチンというホルモンを分泌します。インクレチンは膵臓に働きかけて、甘いものの吸収に備えてインスリンを分泌させるのです。この血糖スパイクを少しでも緩和する身体のシステムが、人工甘味料の常用で悪い方に働いてしまいます。
血糖値が上がらないのに、インスリンが出てくると低血糖が起こりやすくなります。低血糖を防ぐために細胞に血糖を取り込むドアが開きにくくなってしまうのです。これがインスリン抵抗性です。つまり人工甘味料を摂り続けると、糖尿病の最初の反応であるインスリン抵抗性が上昇してくるのです。
人工甘味料の糖尿病リスクについての研究が、アメリカでもヨーロッパでも日本でも行われています。砂糖入り甘味飲料を飲むグループと、人工甘味飲料のグループ、飲まないグループを比較して、糖尿病発症リスクについて検討しています。
医療職のアメリカ人男性 4万人(40~75歳)の研究2)、西ヨーロッパの34万人の研究3)、日本の富山県の大手製造業の従業員2037人の研究4)などのいずれの結果も、同じ結果が出ています。砂糖入りでも、人工甘味料入りでも量が増えるほど糖尿病にかかりやすくなりますが、人工甘味料入りの飲み物の方が糖尿病リスクが高くなっていたのです。
この結果も驚きですよね! 血糖を上げない飲み物で糖尿病になるのは理屈に合いません。この理由についてもアメリカの研究で解析されています。バックグラウンドを比較すると、ダイエット飲料を好んで飲んでいた人々は、中性脂肪値が高く、血圧も高く、他の病歴がある人も多く、ダイエットに取り組んだり、体重が変動したりした過去がある人が多かったのです。そしてそれらを除いて計算すると、人工甘味料の糖尿病リスクは小さくなりました。
これらの研究の平均年齢は50代半ばまでが多く、中高年までの生活習慣の蓄積が、人工甘味料使用のモチベーションになっていると同時に、ノンカロリーの人工甘味料に変えるだけでは、病気は防げないということなのでしょうね!
また、人工甘味料が我々の腸内細菌を変えてしまうという研究も沢山あります。最新の2022年のイスラエルの研究を紹介すると、人工甘味料のカロリーを腸管は吸収できないのですが、一部の腸内細菌は餌にして増殖できるため、短期間の摂取でも腸内細菌の比率が変化してしまうのです。
2014年のマウスの実験で、サッカリン、スクラロース、アスパルテームが、それぞれマウスの血糖値を上昇させ、そのレベルは砂糖を与えられたマウスの血糖値よりも有意に高いことが発見されました。その腸内細菌を、人工甘味料摂取をしていないマウスに移植したところ、やはり血糖の急上昇が起こったのです。
今回は人口甘味料を摂取したことのない120人をサッカリン群、スクラロース群、アスパルテーム群、ステビア群と摂らない群に分けて2週間過ごし、その後ブドウ糖摂取後の血糖の推移を観察しました。するとスクラロースとサッカリン群では、血糖値が急上昇したまま、長時間戻らない、「ブドウ糖不耐症」の状態になっていました5)。
その便を移植したマウスでも、血糖コントロールは悪くなっており、アスパルテームやステビア群においても、腸内細菌やそれらが作る物質は大きく変化していました。短期間の観察でもこれだけの変化が見られるため、今後の研究が必要と結論付けられていました。
と言うことで、人工甘味料は、毎日取り入れるのは危ないのでは無いかと蒼野は思います。もちろんブドウ糖果糖液糖入りの飲み物をガブガブ飲むのは最悪ですが、健康を考えると、甘い飲み物は、たとえカロリーゼロであっても、たまのご褒美程度にして欲しいと思いました。甘いノンカロリーのお酒はもっとNGですよ! 基本は自分で入れるお茶やコーヒー、水や炭酸水にしてゆきましょうね。
夕食時のレモンを絞った炭酸が、お酒よりも美味しいと思えるようになった蒼野でした。
参考文献:
1)Nonnutritive sweeteners and cardiometabolic health: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials and prospective cohort studies. ; CMAJ July 17, 2017 189 (28) E929-E939
2)Sugar-sweetened and artificially-sweetened beverages and changes in cognitive function in the SUN project. ; Nutr Neurosci. 2020 ;23(12):946-954.
3)Consumption of sweet beverages and type 2 diabetes incidence in European adults: results from EPIC-InterAct. ; Diabetologia. 2013;56(7):1520-30.
4)Sugar-sweetened beverage and diet soda consumption and the 7-year risk for type 2 diabetes mellitus in middle-aged Japanese men. ; Eur J Nutr. 2014;53(1):251-8.
5)Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance. ; Cell 2022 Vol.185(18). 3307-3328
もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。