中高年の筋肉を保つ最新トレーニング法!

2023/12/07

 今日は久しぶりに運動についてのお話です。蒼野は外来でほとんどの患者様に、毎日身体を動かせているかどうか質問しています。うちの母も含めて、高齢になる程、また中高年の間に運動習慣がが無かった人ほど、寒くなって自宅にこもっている人が多いのが現状です。

 ここ3年コロナ禍もあって、動かなくなったことで、体重が増えたり、腰や膝が痛くなったりして弱ってしまう人が多いのを感じています。今日は中高年の運動習慣の無い方が、どうやったら必要な運動量が確保でき、筋肉量をキープ、もしくは増量できるのかについて考えてみたいと思います。

 加齢と共に、今ある筋肉は、年々1%ずつ減ってゆくのが一般的な数値です。特に男性ホルモンが少なく、たくさん食べられないことで、筋肉がつきにくい女性において、高齢になった時の寝たきりの根本原因は、筋肉不足(その影響による骨粗鬆症や認知症、関節疾患など)がナンバー1なのです。

 筋肉を使うことで、脳は反応し、BDNF(脳由来神経栄養因子)が作られます。つまり認知症リスクが低下するのです。また運動によって筋肉から分泌されるマイオカインによって、免疫機能は強化されて癌を予防し、体内炎症が治ることで老化を予防し、代謝がキープされることでメタボリックシンドロームが予防され、心血管病にかかる事も少なくなります。筋肉をキープするのは、全ての人にとって重要な課題なのです。

 「筋肉を増やす」と聞くと、ボディビルダーのようにジムに行って、ダンベルやバーベルを限界まで挙げないといけないと思っている方は多いかも知れませんね。しかし最新研究によればさまざまな方法がある事が報告されています。筋肉を増やすための運動は、さまざまなレジスタンス(抵抗)トレーニングです。

 1996年から2019年の間に発表された筋肥大とトレーニングの関係を示した、30の研究のレビュー論文によれば、上記の様なトレーニングだけではなく、効率的な筋肥大のための方法がいくつもある様です1)。しかしどれが王道というものは決められないため、やってみながら自分に合う方法を見つけてゆく必要があります。

 まずは、筋肉が増えるメカニズムを知っておく事が重要です。筋肉が増えるかどうかは、筋肉を増やそうとするスイッチをONにする事が重要なのです。筋肉は使わなかったり、栄養不足などでエネルギーに使われたりすると、減ってしまいます。常に増えたり、減ったりしているということを意識しておく必要があります。

 まず日常の中で、筋肉を増やすスイッチをONにする時間を作る事が必要です。これには3つの方法があります。一つ目は筋肉に張力をかける事です。重量を持ち上げるときに筋繊維は伸長します。これが筋細胞の構造に小さな変化を与え、筋タンパク合成のスイッチが入ります。伸長性収縮と言って、特に伸ばされながら力が掛かると変化が起きやすいです。

 二つ目は筋肉にかかる代謝ストレスです。限界まで行うというのがこれです。筋肉が疲労したり酸素不足になったりすると、筋細胞内に科学的な変化が起こります。成長ホルモンが放出され、グリコーゲンが使われます。反復回数を上げたり、休息時間を短くしたりする事が有効です。加圧トレーニングも、これを応用しています。

 三つ目は、筋損傷です。今までの限界を超えたり、慣れていない運動をすると筋繊維に微細な損傷が生じます。ひどい場合には、筋肉痛の原因となるメカニズムです。やり過ぎればかえって筋肉が減ることもあります。この微細な損傷を72時間かけて修復することによって、以前よりも筋肉が発達するという超回復理論は有名ですが、近年の研究では、これだけが筋肥大のメカニズムでは無い事がわかってきました。

 今日はボディビルや、ボディメイクでかっこよくなるということは、ひとまず置いておいて、中高年の、運動習慣のない男女が、筋肉維持を行うための手軽に行える運動について考えてみます。忙しい現代人が、週に2~3回ジムに行くというのは、蒼野自身も含めてかなりハードルが高いです。まず日常に取り入れられる運動から始めてみることをお勧めしたいです。

 3つの筋肥大のメカニズムから考えると、三つ目の、限界まで追い込んで、筋肉痛が起こる様な運動する必要は無い様です。また運動習慣の無い人が、いきなりハードなトレーニングをするのは難しく、怪我の原因にもなりかねません。一つ目と二つ目のメカニズムを応用するトレーニングを行うのが最新の方法になります。

 誰もが取り組みやすいのは、自宅での、短時間の自重トレーニングです。外来で問診していると、現代人は時間がなくて運動できない人が本当に多いです。しかし短時間に筋肥大のスイッチが押せればそれで良いのです。そのために蒼野が注目したいのは、『スロートレーニング』+『レストポーズトレーニング』です。

 怪我をしないためにも、最初は自重が一番です。下半身でのおすすめは何と言ってもスクワットです。足を肩幅、もしくはもっと広めに開き、背筋をまっすぐに保ちながら、ゆっくりと(秒数は自分に合わせて)膝を曲げて腰を下ろします。膝がつま先より前に出ないように注意し、太ももが床と平行になるまで下ろし、そのまま数秒停止します。ゆっくりと(数秒かけて)足を伸ばしきらないところまで立ち上がり、また数秒かけて腰を下ろすのを繰り返します。

 この運動によって、筋肉には張力がかかり続けます。筋肥大のスイッチが入るのです。これを数回繰り返し、20秒休みます(レストポーズ)。休んだらまた同じ動きを繰り返します。蒼野もやってみましたが、6回→20秒→3回→20秒→2回くらいやると結構限界です。時間にすれば4分以内に終わってしまいます。休みを最短にして繰り返すことで、目一杯、代謝ストレスもかかる方法になります。

 同様の方法で、腕立て伏せ(女性の場合は膝立伏せや、壁を使ったプッシュアップ)や、腹筋、スーパーマンの姿勢で背筋を鍛えれば完璧です。これでほぼ全身を鍛える事ができます。全部を週2日、3日おきに行うのも良いですし、下半身と上半身と体幹をそれぞれ1日ずつ行なって、週6日行うのも良いですね。中年期から続けて行ければ、高齢のサルコペニアは防げます。

 筋トレの重要性は、皆様認知されているとは思うのですが、強くストレスに感じる様だと、続きませんし、コルチゾールが出て、筋肉分解が進み、内臓脂肪が蓄積してしまいます。まずは負担にならない楽しくできる回数から始めれると良いですね。ゼロから1が一番ハードルが高いので、1回で良いのでやってみて欲しいと思います。

 筋トレの前後では筋分解を進めないために、タンパク質と炭水化物を摂っておく事が必要です。いっぱい筋トレできれば、そのあとご褒美でスイーツを食べるのもアリです。筋肉のグリコーゲン補給に使われるので、よほど食べない限り、体脂肪に変わる心配はありませんよ!

 ここ2週間くらい、風邪で出来ていなかったので、ハチミツとプロテインを摂りながら、筋トレ習慣を立て直そうと思っている蒼野でした! 

参考文献:
1)Maximizing Muscle Hypertrophy: A Systematic Review of Advanced Resistance Training Techniques and Methods. ; Int J Environ Res Public Health. 2019 Dec; 16(24): 4897.

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