睡眠時間は人によって違って良い!

2022/12/19

 今日は自分自身の素朴な疑問を調べました。患者さんに質問されると、いつも目標睡眠時間は7時間と答えているのですが、蒼野自身、以前は眠れていたのに、最近ではいつも5時間くらいで一度目が覚めるのです。そのまま起きてしまうと、日中少し眠い、うとうとして6時間半くらいになると、もう眠れなくなるのが普通です。

 大丈夫かな?と自分で思ったので調べてみました。皆様も経験的に、歳を取ると、早寝早起きになるというのはご存知かと思うのですが、これは誰にでも起こる生理的な現象であるようです。蒼野はそれでも7時間くらい寝たいと思っていたのですが、蒼野の年では、それほど長くは寝れない人が多いということのようです。

 蒼野が7時間にこだわるのは、アメリカで行われた110万人超の男女を対象に、睡眠時間と死亡リスクの関係を約6年間追跡調査した研究において、死亡リスクは、睡眠時間7時間(6.5~7.4時間)が最低となり、5時間以下や8時間以上は死亡リスクが高くなるU字カーブを描いていたからです1)。

 しかし調べてみると、睡眠時間の個人差は思った以上に大きい様です。世の中にショートスリーパーが居るというのは知っているのですが、全体の1%未満と聞いています。4時間以下の睡眠でも日中に眠くならない人です。それ以外の人の健康に必要な睡眠時間は、7時間なのかなと思っていました。

 ショートスリーパーの人は、睡眠の中でもREM睡眠の時間が少なく、non-REM睡眠の時間は普通の人と変わらないそうです。睡眠時間が短い日が何にと続いても、自覚的な昼間の眠気が起こらず、健康にも影響がないそうです。蒼野にとってベッドタイムは至福の時間でもあるので、羨ましいような、そうでもないような感じです。

 60歳も過ぎてくると、体内時計が変化して、睡眠に関わるホルモンや体温の変動が、徐々に早い時間にずれてきます。そしてnon-REM睡眠の時間が減り、REM睡眠の時間は増えるそうです。眠りが浅い時間が多くなることから、夜中に目が覚めやすくなり、これは異常なことではないのです。

 加齢と共に減った基礎代謝のエネルギー分は、睡眠で節約する必要がなくなります。睡眠を促すメラトニン量も加齢と共に減少します。日中の活動量が減ると、その分も睡眠で節約する必要が無くなるのです。よく身体を動かした日は、沢山眠れるのは当然なのですね。

 平均的な日本人の睡眠時間で言うと、10歳までの子供は8~9時間眠り、15歳で約8時間、徐々に短くなり25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で6時間だそうです。これは季節によっても変動し、日が短くなる12月から1月にかけて睡眠時間は最も長くなり、6月から7月に最も短くなるそうです。これは日照時間と、冬にエネルギー消費が多くなることが関係ありそうです。

 一度クロノタイプについて書いたことがあるのですが、、ヒトは遺伝子によって、朝型と夜型、中間型とショートスリーパーに分かれており、これも生まれつきの体質によります。今朝活が良いとの情報が多く見られますが、仕事が終わって家に帰ってからが一番パフォーマンスが上がる人もいるのです。朝が弱い人には、朝活は無意味の様ですので、夜型の人はご注意を!

 蒼野は、1度目が覚めますが、明け方ですので、non-REMの深い睡眠は取れている様です。目が覚めた後、うたた寝するため、6時間半くらいは寝ている様に思います。照らし合わせてみれば、年齢相応のようですので少し安心です。7時間にこだわる必要は無いと分かりました。となると患者様にも、年齢に合わせて指導した方が良いですね!

 大事なことは、昼間に異常な眠気が出ないことです。休みの日にいつもよりも数時間多く寝てしまう人は、睡眠が不足しており、睡眠負債を抱えた状態です。休みの日に寝溜めをすると、体内時計のリズムも狂ってしまいます。これは身体に本当に良くないです。リズムが狂うと、、肥満などの健康リスクが上昇し、日中のパフォーマンスも落ちて、疲れやすくなります。

 日本人は世界で比べると、平均睡眠時間が短いと言われています。NHKが5年毎に行う国民生活時間調査によると、1960年に8時間13分だった平均睡眠時間は、2010年には7時間14分になっており、50年で1時間も短縮しています。しかしこれには高齢化率の増加が、関与している可能性も高いと思います。

 日本人の生活習慣と、種々の病気の発症との関係を調べた12万人の研究が行われています。タバコやアルコール、コーヒー、緑茶、野菜などの摂取量、睡眠時間、テレビの視聴時間などと病気の関係です。死亡率と睡眠時間だけの関係をグラフにすると、アメリカの研究と同様に、7時間前後の睡眠時間が、最も死亡率が少ないUカーブを示しました。10時間以上寝る人は、7時間前後の人と比べて男性は1.7倍、女性は1.9倍も死亡リスクが高くなっています2)。

 しかし体調が悪い人がたくさん寝ているとか、睡眠時間が短い人は、無理をして仕事をたくさんこなす必要があるなどと考えると、睡眠時間が長い人と短い人の死亡率が高くても納得できるため、元々病気があったと考えられる2年以内に死亡した人を除き、うつ症状や、病歴、喫煙、飲酒などの影響も考慮して再計算しました。すると睡眠時間が5時間、6時間、7時間ではあまり死亡率は変わらず、4時間以下に至っては、女性の死亡率は、2倍になり、男性は0.75倍になってしまうため、うまく説明できない結果になってしまいました。

 睡眠時間は、やはり個人差が大きく、全ての人にとって必要な時間というのは、無いのかもしれません。7時間前後必要という人は多いけれども、翌日の朝、熟睡感があって疲れが取れた状態で気持ちよく目覚め、昼間に眠くならず、バリバリ作業ができる様であれば、睡眠時間は不足していないと考えるのが一番正しい様です。

 それよりも、毎日同じリズムで過ごすことが、健康にも、作業のパフォーマンスにも本当に重要です。そのために重要なことを、もう一度復習しておきます。

1、寝る2時間前までには食べ終わっておく。

2、飲酒、喫煙は控える。カフェインは午後3時までとする。

3、寝る前2時間は、ブルーライトを発する機器は遠ざけ、間接照明などでゆったりと過ごす。

4、休みの日にも、いつもより2時間以上朝寝坊しない様に起きる。できれば同じリズムが良い。

5、起床後30分以内に朝日を浴びて、早足で散歩などリズム運動を行い、朝食や水分をしっかり摂取する。

 以上のことは頭に入れておきましょう。それから長い昼寝(30分以上)や、夕方以降の昼寝は避けましょう。夜は眠たくなってから布団に入りましょう。光以外の寝室の環境、温度、湿度、環境音なども大事です。蒼野はスマホから鳥の鳴き声や雨や波の音を流して聞きながら眠っています。

 不眠(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒)があって昼間の極度な眠気がある場合には、睡眠を妨げる睡眠時無呼吸症候群やREM睡眠行動障害、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)や周期性四肢運動障害などが隠れていることがありますので、一度睡眠外来を受診するのは大事なことだと思います。

 ワールドカップで眠れないのは、病気ではありませんが、毎日だと病気になりそうです。皆様もぐっすりお休みください。自分に合った睡眠方法を探求中の蒼野でした。

参考文献:
1)Mortality associated with sleep duration and insomnia. ;  Arch Gen Psychiatry. 2002 Feb;59(2):131-6

2)Self-reported sleep duration as a predictor of all-cause mortality: results from the JACC study, Japan. Sleep. 2004;27:51-4.

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