加工食品を減らしましょう!

2023/01/29

 今日は久しぶりに生活から減らしたい加工食品の話です。マーガリンやショートニングには、自然界にはほとんど存在しない形の油であるトランス脂肪酸が含まれているというのはご存知の方も多いと思います。安くて腐らず、コストが安いために、多くの加工食品に使われています。

 脂肪酸は細胞の膜や脳、神経系の材料として使われるため、通常はシス型の脂肪酸が使われているところにトランス脂肪酸が使われるようになると、本来の働きができなくなり、病気の原因になってしまうと言うことは、蒼野も普通に納得出来ます。

 トランス脂肪酸摂取が多くなると、体内炎症が亢進し、細胞が死ぬという研究は多く上がっています。心血管病を増やし、肥満やアレルギー疾患、認知症にも関与します。がんや糖尿病との関係も疑われており、WHOは年間50万人が、トランス脂肪酸の摂りすぎで死亡していると推定しています。

 多くの国で禁止や制限がかかっている物質なのですが、不思議なことにわが国では規制も表示義務がありません。蒼野は自衛のために、マーガリンとかショートニングと表示があるものはなるべく買わないように避けてきました。

 最近知ったのは、即席ラーメンやスナック菓子の油がトランス脂肪酸を使っているものがあるということです。カップラーメンを作るときに浮かんでくる油は、麺に含まれている油です。蒸した麺を乾かすだけでは、お湯で戻る麺にはなりません。140℃の油で揚げてから乾燥させると、麺自体に微細な穴が開き、保存性が良くなるだけでなく、お湯で戻しやすくなります。

 揚げて作られている麺の重量の30%は油です。そしてこの油はサラダオイルや天ぷら油などの酸化しやすい液体の油では都合が悪いのです。ラードなどの傷みにくい固形の油が適していますが割高になることから、液体油に水素を加えて固形化した硬化油=トランス脂肪酸が使われるのです。最近ではトランス脂肪酸を嫌う消費者の意向が反映され、パーム油が使われる場合も増えています。パーム油は飽和脂肪酸で、酸化防止剤が大量に入っているため、安全性は確立されていない様です。

 インスタント麺は不味いので蒼野は食べたくありませんが、常用されている方は結構おられるように思います。身体に悪い油を避けたければ、売っているパンやスナックやお菓子だけでなく、インスタント麺も避けるべきです。

 最初に書いたように、トランス脂肪酸の害は、研究で確定しているため、アメリカ、カナダ、ヨーロッパでは食品への使用は禁止されています。アジアでもタイやシンガポールでは全面禁止、中国や韓国ではトランス脂肪酸含有量の表示が義務付けられています。日本だけが規制が無いため、日本のカップ麺は海外にそのまま輸出ができないのです。

 表示は様々ですが、精製加工油脂とか植物油脂と原材料にあるものは、ほとんどがトランス脂肪酸かパーム油と考えた方が良いようです。表示義務が無いので何かが分からないのが不気味です。ホイップクリームやチョコレート、アイスクリーム、ドレッシングやチーズ、パスタやお惣菜、果てはおにぎりに至るまで、手頃な価格の加工食品のほとんどに入っているのです。

 日本はコンビニ大国です。人口当たりの店舗数は韓国や台湾の方が多いのですが、売上高に関しては韓国の6倍、台湾の10倍を売り上げています。コンビニで売られている食品は、お弁当やおにぎり、レトルトや冷凍食品、パンやスナック菓子やカップ麺等であることを考えると、食事の大半をコンビニで済ませている人は、毎食身体に良くない油を摂っていることになります。

 これらの超加工食品にはトランス脂肪酸だけではなく、ものすごい種類の食品添加物も入っています。2018年の研究では、10万人の食事内容を8年間追跡した所、超加工食品の割合が10%増えると、癌のリスクが12%上昇するという結果が出ています1)。

 対象者の喫煙や肥満、教育レベル、収入などの因子を消去した結果という事ですが、全てのライフスタイルの均一化は難しいため、完全な因果関係が証明された訳ではありません。しかし解析を進めたところ、超加工食品の 摂取の多い中年成人の死亡率が14%高くなるという結果も出ています2)。

 食事が大きく影響すると思われる癌は、消化管の癌です。大腸癌は前癌状態のポリープ切除が進むようになって、近年多くの国で発症が不変または減少傾向にあります。喫煙者が減っているのもその理由の一つかもしれません。しかし実際に数が大きく減っているのは、50歳以上の大腸がんであり、50歳未満で見てみると、大腸がんの患者は増加の一途を辿っているのです。

 ヨーロッパ20カ国の統計によると、大腸がんの新規発症者が20代で、1990年には10万人あたり0.8人であったのが2016年には2.3人に、30代では2.8人から6.4人に増加しています3)。若年者の大腸癌は発見が遅れる場合が多く、悪性度も高い傾向にあります。3倍近く増える原因はまだ結論は出ていませんし、様々な要素が絡んでいることは間違いないとは思います。

 しかし若者が多く食べるようになった食事に、その一因があるのではないかと蒼野は思ってしまうのです。一般的に、若者は家庭料理よりも安くて手軽なものを食べる傾向が強いように思います。子育て世代も含めて、長時間労働している人も多く、良い食材を調理して食べるというのは結構難しかったりします。

 食事はメンタルやパフォーマンスにも大きく影響します。長野県の荒れた中学校を、給食で立て直した校長先生の大塚貢さんのお話をご存知でしょうか? 赴任したときは、無気力、いじめ、非行が絶えず、50人の不登校の生徒がいて、毎日窓ガラスが割られ、暴走族がバイクで学校の廊下を走り、タバコの吸い殻が散乱していた中学校だったそうです。

 まずは授業内容が面白くなるように変えていきましたが、大きな原因は食事にあることに気づきます。問題行動の多い生徒の食事は、コンビニ弁当やファーストフード、カップ麺、お菓子、甘い飲み物などで、野菜などのちゃんとした栄養のある食事が摂れていませんでした。

 そこで1食だけでも変わるように、当時揚げパンやソフト麺、ハンバーガーが主食で、おかずが肉類だった給食を、農家とも交渉し、発芽玄米の米飯に変え、地元の野菜や肉や魚に変えました。野菜や海藻たっぷりの具沢山の味噌汁もつけるようにしました。

 すると1年でタバコの吸い殻が消え、2年目の後半には非行や犯罪が消えました。不登校者は2人になり、花壇を整える生徒が増えて、全国花壇コンクールで文部大臣賞を受賞しました。低かった学力も全国平均をかなり上回るようになり、重度のアトピーやアレルギー、中性脂肪・コレステロールの高い子どももいなくなったのです。

 こうしてみると「安くてどこでも手軽に手に入り、手間もなく食べられる」という便利さの代償が、体や心の健康や、仕事のパフォーマンスに影響する可能性は大きいように思います。1食だけでもこれほど変わるのであれば、是非全国に広げてゆきたいですよね!

 日本の食料自給率は鎖国していた江戸時代にはもちろん100%でした。敗戦国になってから、急速に低下し、現在は他国では見ない38%と異常に低い数値になっています。今後地球上の食糧不足が予想される中、日本の農業や畜産は縮小の一途です。これは政治の問題かもしれませんが、輸入される超加工食品しか食べられないような世の中にならない様に、活動していきたいと思う蒼野でした!

参考文献:
1)Consumption of ultra-processed foods and. cancer risk results from NutriNet-Santé  prospective cohort. ; BMJ  2018  360  k322  | doi 10 1136/bmj .k322

2)Association Between Ultraprocessed Food Consumption  and Risk of Mortality Among Middle-aged Adults  in  France. ; JAMA Intern Med .2019 179(4) 490-498 

3)The rising tide of early-onset colorectal cancer: a comprehensive review of epidemiology, clinical features, biology, risk factors, prevention, and early detection. ; Lancet Gastroenterol Hepatol. 2022 Mar;7(3):262-274.

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