多様性のある健全な社会!

2023/04/04

 今日は少しナーバスな話題かもしれませんが、知らなかったことなので、勉強してまとめてみたいと思います。先日蒼野の病院で、月初の朝礼があり、新入職員の挨拶がありました。看護学校を卒業して入職した人の挨拶で、「自分は男でしたが、女性に変わったので、女性として本日から頑張って働きます」とスピーチされた方がおられ、感心してしまいました。

 まず「時代が変わっているのだな」という思いと、初対面の大勢の人の前で、サラッと宣言できるその勇気がすごいなあと感じました。その後、今まで沢山悩んできて、最初から理解してもらった方が、気持ち的にも、周囲との関係も上手くいくと感じておられるのだろうなあ、とも考えました。

 恥ずかしながら、今までトランスジェンダーについて、勉強したことが無かったので、この機会に知っておきたいと思い、自分なりに調べて見ました。自分で理解したことを、今日は書きたいと思います。もし間違っていたらご指摘くださいね!

 まずはその定義からです。出生時の外見から医師によって割り当てられた性別が、自分の意識する性別と異なる人々が、トランスジェンダーと呼ばれます。男性が好きとか女性が好きといったセクシュアリティ(性的嗜好)とは違う概念です。トランスジェンダーの人の中にも、異性愛や同性愛、バイセクシュアルなどの、様々なセクリュアリティを持つ人がいます。

 DNAで言えば、XY染色体を持つのが男性で、XX染色体を持つのが女性です。発生から5週間後のヒト胚には、男性と女性の両方の解剖学的構造を形成するための組織があります。子宮や卵管になる部分も、精巣上体、輸精管、精嚢になる部分も存在しています。6週目になると、どちらかのスイッチが押され、発達した方からのホルモン分泌により、他方が萎縮してゆき、外見状の性が確定します。

 しかし、生殖腺の発達に影響を与える遺伝子変異により、XY 染色体を持つ人が典型的な女性の特徴を発達させたり、XX 個体が男性系統に沿って発達したりする可能性があるらしいのです。まだトランスジェンダーの原因として、すべてではないようですが、現在の生物学者は「性別は2つである」という考えは安易であり、時間と共に変化することがあると考える人も多いようです1)。

 告白しない人もいるため、トランスジェンダーの人がどれくらい存在するのかを把握するのは困難ですが、2020年のアメリカの調査によれば、成人人口のうち約1.9%がトランスジェンダーであるとされています。100人に2人近くいるというのは、蒼野も知りませんでした。身の回りでは、あまり意識しませんが、考えてみると芸能界には結構おられますよね!

 調べていると、聞いたことが無かった「Xジェンダー」という言葉も出てきました。「身体的性に関わらず、性自認が男性にも女性にもあてはまらない」セクシュアリティだそうです。自分自身が、男性と女性との中間地点に自身が存在すると感じている『中性』、男性でもあり、女性でもあると感じる『両性』、男性・女性どちらの要素も無いと感じる『無性』、様々な性の間で自分の性が揺れ動いている『不定性』という人がおられるそうです。

 今まで自分が男性であることに、疑問を抱いたことの無い蒼野としては、実感としての理解は難しいです。でも悩みが深そうであることは理解できます。もっと大きな括りで言うと、LGBTというものがあります。Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシャル)、Transgender(トランスジェンダー)を指しており、2018年の電通の調査では、人口の8.9%を占めるとされており、Xジェンダーはその1%くらいですから、116万人も居る計算になります。

 生物の多様性は、地球の生態系を安定させてきました。様々な生物がいる事で、環境変化やストレスに対して、生態系全体が適応しやすくなります。多様な生物が、異なる役割を果たすことで、一部の生物が影響を受けても、生態系全体が機能し続けるからです。

 人間は社会的な動物です。色々なことが起こる社会の安定のためにも、多様性はとても重要です。様々な人々がいる事で、アイデアや革新が生まれやすくなります。異なる視点や知識が集まることで、より総合的な問題解決が可能になるのです。多様性を認め合うことで、協力が生まれ、対立が減るため、社会全体が安定するのです。

 しかし、人間は自分と違った人に対しては、未知のものに対する不安や恐怖を感じやすい性質があります。また宗教の教えや、小さな頃からの刷り込み、同調の圧力なども影響します。マイノリティを差別することで、支配欲求や優越感を得ようとする心理も働きます。

 正式な記録が残っていないため、正確なことは分からないのですが、元々の日本は性的多様性に寛容な社会であった可能性があるようです。『古事記』や『日本書紀』には、神話や伝説の中で、異性装者や性的多様性を示唆する存在が登場しています。歌謡や演劇においても、男装や女装も普通に行われてきています。

 中世ヨーロッパのキリスト教社会では、異性装者やトランスジェンダーの人々が、聖書の一部の記述から、神の正当な秩序に反するとされ、しばしば弾圧されてきたようです。現代では、宗派によって、その解釈は様々です。イスラム教も保守的な傾向があり、仏教やヒンズー教は、ある程度リベラルな傾向があるようです。

 農業社会の歴史が長い日本においては、島国の特性もあり、個人の利益よりも、共同体の協力、集団の利益が優先される傾向がありました。家族や社会の中での地位や役割を果たして、秩序を保つことが大切だとする儒教の教えや、個人の欲望を超越して無我の境地を目指す仏教の教えも、日本人の同調圧力の基礎になっているようです。

 それが明治維新からの富国強兵策で、個人よりも集団での団結力が重視される教育が行われました。戦時中には、言論が統制され、異質な意見は弾圧されました。戦後になると、経済発展のために、会社の歯車として働くことが重視され、いつの間にか、同調圧力がとても強い国となっているのが現実です。

 トランスジェンダーに関しても、日本では「性同一性障害」と言う病気のカテゴリーに分類され、病気として、外科的手術の一部やホルモン療法については保険適応が認められたりします。そして手術を受けないと戸籍上の性別は変更できません。EUでは2015年から手術なしで戸籍上の性別は変更可能になりました。アメリカやカナダの多くの州でも同様です。オーストラリアやニュージーランドも手術はなしで良いそうです。

 しかし日本でも確実に空気は変わってきていますね! 早く法整備等も進むことを望みます。多様な腸内細菌叢が我々の健康につながるように、発達障害なども含めて、様々な個性、多様性が社会の安定性、発展性につながることを信じます。

 勇気のある新人看護師さんとも、話して見たいなあと思っている蒼野でした!

参考文献: 1)Sex redefined. ; Nature 518: 288-291.2015

参考ページ: ウィキペディア トランスジェンダー
       https://ja.wikipedia.org/wiki/トランスジェンダー#概要と定義

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