超加工食品!

2022/05/25

 今日は超加工食品についての新しい文献を紹介したいと思います。食品と健康の関係を調べるのは、思った以上に大変です。ネットの調査や、食べたものの申告などで行った研究も沢山発表されているのですが、読んでみると、バイアスが入らずに、そのまま信用できそうな論文はそれほど多くないように思います。 

 まず超加工食品とはどのようなものかというと、工場で大量生産され、さまざまな添加物が加えられて、手間をかけて調理しなくても良いように加工が施され、簡単においしくいただける食べ物のことです。ファストフードや冷凍食品、チキンナゲット、甘い飲み物、様々なお菓子など、手ごろな価格で、魅力的で、スタイリッシュで、沢山宣伝もされるので、世界中で大人気な食べ物なのです。 

 近年では、先進国の食事の総カロリーの半分以上を占めるようになってきました。豊かで忙しくなると、人間は簡単で美味しいと感じるものへのニーズが高まることと、食品産業が、売れる商品にするために、食べると止まらなくなるように、うまく作るということから生まれた、今まで人類が食べてきたことのない食べ物になります。 

 それが健康のためを思って作られた食品ではない、ということは忘れがちです。もちろん短期間に毒になるような成分は除外されていると思いますし、食べたらすぐに病気になるといったものでもないことは分かっています。しかし長期間食べ続けたり、その割合が増えて、もともと人類が食べていた、健康的な食べ物が少なくなったりすると、病気に繋がり、健康を害す可能性が高いように思うのは蒼野だけでしょうか? 

 サンパウロ大学のモンテイロ教授が提唱し、世界保健機関(WHO)は、食品を次の4つに分類しています。 NOVAシステムと呼ばれる分類法です。

NOVAグループ1の食べ物

 未加工、または組成が変化しない加工を行った食品。つまり新鮮な野菜、穀物、豆類、果物、ナッツ、肉、シーフード、卵、牛乳などの素材を、乾燥、粉砕、煮沸、低温殺菌したり、殻から取り出したりする方法になります。 

NOVAグループ2の食べ物

 加工食材は台所にあるような調味料です。塩や油、酢、砂糖、バターやメープルシロップ等です。 食べ物の味を変えて食べやすくする食材になります。

NOVAグループ3の食べ物 

 加工食品は、(1)の食材を(2)の調味料で簡単に加工を行い、瓶や缶に詰めたりしたものです。発酵させたり、塩漬けにしたりして、チーズやパン、加工肉等にしたものとなります。ここまでは人類が昔から、食べ物を保存したり、味を良くしたりするために昔から工夫してきた食品です。 

NOVAグループ4の食べ物

 最後が超加工食品です。歴史は浅く、一言で言えば工場で作られる、工業製品です。まず材料をデンプン、糖、脂肪、油、タンパク質、食物繊維などの成分に分解します。原材料となるのは、大量生産されたトウモロコシ、大豆、小麦や植物油、集約的に生産された畜肉の挽肉やすり身などです。

 それを化学反応によって分解したり、水素化したりしてから、形を整え、見た目や味を良くして、長期保存できるように、主に石油などから作った食品添加物や甘味料、保存料などを加えて大量生産したものになります。そこには人類の本能、食欲に訴える仕組みが施されており、美味しいうえに安く、沢山食べたくなるようにできています。蒼野は恐ろしいと感じます。

 「超加工食品で死亡リスクが高まる」という論文があります1)。フランスの大規模な疫学調査で、45歳以上の4万4551人のデータを、NOVAの分類を用いて分析しました。インターネット調査で、半年ごとに、調査時の24時間前から食べたものの記録を提出してもらいました。

 超加工食品の割合は、若いほど、収入や教育レベル、身体活動量が低いほど高く、1人暮らしや太り気味の人でも高いことがわかりました。7年間の追跡中、602人が死亡し、食事に占める超加工食品の重量が10%増加するごとに、死亡のリスクは14%増加していました。

 十分な総数の研究ではあるものの、食べたものの申告は個人に任されており、また加工食品が重量で評価されたことなどは、学術的な疑問が拭えない部分もあります。しかしその後のスペインの1万9,899人の研究でも2)、超加工食品を多く摂る(1日4サービング以上)と、死亡率が62%増加し、さらに1日1サービング増えるごとに死亡リスクが18%増加するという結果が出ています。

 この研究でも、超加工食品を多く食べる人は、間食や1日3時間以上のテレビ視聴が多く、1日のコンピュータ使用時間が長く、脂肪の摂取量が多く、野菜・果物・オリーブ油の摂取量が少ないなどの傾向が認められました。

  国別の研究では3)、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、オーストラリア、英国、カナダ、米国の8カ国において。摂取エネルギー量に対する超加工食品の割合は、コロンビアが15.9%で、8カ国中で最低。最も高いのは英国で、56.7%と、6割に近い値でした。 8カ国のすべてで、超加工食品の摂取量が、タンパク質と食物繊維の摂取量と負の相関があり、糖の摂取量と正の相関があることが分かりました。超加工食品は、糖質過多の食べ物が多いということだと思います。 

 数は20人と少ないのですが、2019年に初めて、無作為ランダム化研究が行われました4)。4週間の間、提供した食べ物を食べてもらい、比較しました。その結果、超加工食品を食べると1日に平均500kcalを多く摂取し、食べるスピードが速く、体重も増える(0.9kg)ことが明らかになりました。

 逆にNOVAグループ1の食べ物を食べていると、0.9kg体重が減りました。その理由としては、は食欲ホルモンであるグレリン濃度が、超加工食品で上昇することと、加工が少ない食べ物で食欲抑制ホルモンであるPYYの値が上昇することが確認されました。

 超加工食品を食べ続けると、カロリーを余分に摂りやすくなり、体重が増え、不健康になるおそれがあることが、きちんと証明されました。NOVAグループ1の加工度の低い、健康な食べ物は、製造が不安定で、流通するのもコストが掛かるため、現実的には、ある程度お金が無いと難しいと思います。

 食事は、新鮮な素材を、シンプルな調理で、食べてゆくのが一番重要なようです。時間やお金の節約を、食事で行おうとすると、調理が簡単で、すぐに食べられる、低コストの超加工食品になってしまうのは、社会的にも仕方がないことなのかもしれません。食べ物の論文は、さまざまな食材の影響があるはずなので、いくらランダム化しても、確定した結論は出にくいとは思います。

 蒼野自身は、本当にたまに添加物が多い食事や、ストロング缶酎ハイを飲んだりすると、気分が悪くなるので、やはり身体に悪いんだなあと思ってしまいます。沢山食べると、寿命が縮んで、体重が増える超加工食品は、今からも出来るだけ避けたいなと思っています。

 食材に限っては、これからもお金の節約はしないようにしようと思う蒼野でした。

参考文献:

1、Association Between Ultraprocessed Food Consumption and Risk of Mortality Among Middle-aged Adults in France

JAMA Intern Med. 2019;179(4):490-498. doi:10.1001/jamainternmed.2018.

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2723626

2、Association between consumption of ultra-processed foods and all cause mortality: SUN prospective cohort study

BMJ 2019; 365 doi:Cite this as: BMJ 2019;365:l1949

https://doi.org/10.1136/bmj.l1949

3、The burden of excessive saturated fatty acid intake attributed to ultra-processed food

consumption: a study conducted with nationally representative cross-sectional studies from eight countries

J Nutr Sci. 2021 Jun 4;10:e43.

4、Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake 

Hall et al., 2019, Cell Metabolism 30, 67–77 July 2, 2019 Published by Elsevier Inc. 

https://doi.org/10.1016/j.cmet.2019.05.008

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。