『歩行』は生活の基本事項!

2023/08/22

 今日は蒼野が事故で車に乗れなくなって、本当に良かったと思っている歩行について改めて書いてみようと思います。外来で運動不足の人、特に高齢者には必ず歩行をお勧めします。人間にとって基本の運動であり、誰でも取り組みやすいのが歩く事です。その効用を知ると、改めて歩きたくなるのではないかと思うのです。

 原始人の移動手段は歩行だったことは、当たり前ですよね! 食料ゲットのために、18000歩/日くらいは歩いていたと推測されています。 アフリカで生まれたホモサピエンスが、遥々日本まで到達したことを考えても、長く歩くというのは、人間のデフォルトの能力です。

 江戸時代の飛脚は、早い人では、江戸から京都まで5日間で到達したそうです。492kmくらいあるので、1日100km×5日というのはすごいとしか言いようがありません。飛脚でなくても、「東海道中膝栗毛」では、弥次さん・喜多さんは江戸から四日市まで12日で歩いています。シーボルトの記録では、江戸から京都まで17日掛かっています。普通に1日30kmくらいは歩いていたのですね!

 2019年の厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」によると、1日当たりの平均歩数は、男性が6,793歩、女性が5,832歩でした。2011年は男性が7,233歩、女性が6,437歩でしたから、徐々に減ってきています。2020年からのコロナ禍で、さらに減っているのではないかと思います。男性の1歩が70cmですから、1日4.76km、東京-京都を歩いたら、103日もかかりますね!

 50代の頃、同僚の先生が100kmウォークにハマって、蒼野も誘われていましたが、膝の軟骨が無くなってしまうと思い、丁寧にお断りしたのを思い出します。その頃は週末のゴルフはしても、日頃は歩かない生活を送っていました。しかし60歳で車に乗らなくなると、歩くしかなくなりました。仕方なしに歩いていたのですが、物忘れが減り、疲れ知らずになり、毎日気分良く過ごせる事に気付いてしまいました。

 特に朝散歩はお勧めです。歩くと本当に気分が良くなります。これはセロトニンによるウォーキングハイです。ご存知とは思いますが、セロトニンは身体の幸せホルモンです。心が安定して、癒され、穏やかで幸せな気持ちが湧いてきて、ストレスやうつ状態を打ち消してくれるのです。

 現在のうつの薬の主体は、セロトニンの再取り込みを阻害してセロトニンを増やすSSRIです。それよりも朝散歩で、自分のセロトニンを出した方が良いです。朝散歩は太陽の光で体内時計がリセットされ、ホルモンの日内変動が整うため、自律神経も整います。光を5分以上浴びているとセロトニンが作られ始めるのです。

 15分ほど続けてリズム良く歩いていると、作られたセロトニンが活性化し、1日のやる気が湧いてきます。朝作られたセロトニンは、15時間後には眠りを誘うメラトニンに変化するため、睡眠も良くなります。歩くことで身体が疲れると、睡眠が深くなり、成長ホルモンが増えることで疲労も回復し、毎日高いパフォーマンスで過ごすことができるのです。

 不眠症の人は歩く習慣をつけながら、睡眠薬の量を徐々に減らしてゆくと、やめられなかった睡眠薬が数ヶ月でやめれることが多いのです。眠りにつく力を大きくするためには、少し身体が疲れるくらい、昼間に6~8千歩程度は歩くのが効果的です。横になってすぐに眠れれば、睡眠薬は必要なくなります。

 太陽の光を15~30分浴びることで、ビタミンDが作られ活性化します。骨粗鬆症予防にもなるだけでなく、免疫力を高めがんの予防や、ウイルス感染にも強くなります。コロナで重症化した人はビタミンD濃度が低かったと論文で報告されています(過去ブログ参照)。日本人の80%がビタミンD不足、40%はビタミンD欠乏ですから、できるだけ朝日を浴びたいものです!

 歩くことで、腸の動きも良くなり、腸内フローラも整って、便秘が解消されます。運動習慣を取り入れている人は、腸内フローラが健康的な状態を維持でき、健康な脳を保ち、糖尿病になりにくくなることが報告されています1)。

 外来で運動について必ず質問するのですが、歩いていない高齢者は本当に多いですね。もちろん歩く人では、1万歩/日も歩いているお年寄りもいます。厚労省の歩数データは平均ですので、2極化しているように感じます。寝たきりにならないためには、毎日歩くことが必要条件だと思います。

 筋力や体力、身体活動量は20代半ばをピークに、30歳以降は10年で5~10%ずつ低下していきます。ピーク時の30%以下になると要介護、寝たきり状態となるのです。誰でも加齢で衰えますが、歩いている人と歩いていない人では、30%以下になる時期は20年くらい違うのです。

 中高年からは、毎日歩く生活習慣を身につける必要があります。目標としては、40~59歳で最低8000歩、出来れば1万歩。関節がすり減ってくる60~64歳で8000歩、65~74で7000歩、75歳以上は5000歩が目標となります。もちろん個人差はあるので、くれぐれも無理して怪我しないよう気を付けましょう。キツければ分けて歩きましょう。

 歩きやすく、また歩きたくなるようなちょっと贅沢なウォーキングシューズを買うと、習慣をつけるきっかけになります。歩くのに慣れてきた若い人では、メタボ予防の為にも歩行の運動強度を上げましょう。背筋を伸ばして、両手を振って大股で歩いたり、早足と普通歩行を繰り返すインターバル速歩を行うと、脂肪燃焼やミトコンドリアを鍛えることに繋がります。高血圧や糖尿病、うつ病は歩くだけで良くなるのです。

 高齢者になると転倒しないことが最も大事になります。転倒は脊椎圧迫骨折や、大腿骨頚部骨折、肋骨骨折などに繋がります。肋骨骨折なんてベルトを巻くだけで大したことないと思われるかもしれませんが、肋骨骨折の後の2年間は、骨折の確率が2倍になるというデータがあります。高齢者の骨折は連鎖しやすいのです。

 転倒を予防しながら、姿勢良く歩くには、2本のポールを持って行うノルディックウォークがお勧めです。腕を振って上半身の動きが大きくなるため、消費カロリーも1.5倍に増加します。雨の日など歩けない時は、左右の1分間の片足立ちだけでもやる習慣をつけましょう。

 高齢者の歩行習慣は認知症予防のためにも本当に重要です。BDNFが分泌され、海馬の細胞が増えるため、認知症予防に効果があるのです。脳を鍛える歩行法としては、デュアルタスクがあります。100から7を引きながら歩いたり、川柳を詠みながら歩いたり、1人しりとりしたり、通り過ぎる車のナンバーを覚えて、足し算したりします。

 歩きながら歌うのも素晴らしい方法です。周囲の状況を把握し、バランスを取りながら歩くだけでも、脳を使っていますが、それにもう一つ加えると脳の活性化は最大化します。これはコグニサイズといって、認知症予防や改善効果が研究で証明された方法です。

 人間は動物(動くもの)です。動かなくなれば健康を失います。皆様も日々忙しいとは思いますが、、特にパソコンで座りっぱなしの仕事をしている方は、時間を作って毎日歩いて欲しいと思います。時間で言えば週150分です。歩行アプリが歩くモチベーションになり、毎日通勤と犬の散歩で12000歩以上、歩いている蒼野でした。

参考文献:
1)Exercise Modifies the Gut Microbiota with Positive Health Effects. ; Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2017 https://doi.org/10.1155/2017/3831972

参考書籍: ブレインメンタル強化大全   樺沢 紫苑 

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