恐怖性姿勢性めまい!

2022/06/20

 原因不明で、今まで日本ではめまい症という病名で片付けられていためまいの中に、『恐怖性姿勢性めまい』<『持続性知覚性姿勢誘発めまい』という概念が出てきたという記事を目にしたので、今日はそこを深掘りしてみたいと思います。

 めまいというのは、ありふれた症状にも関わらず、ちゃんと診断するのが難しく、耳鼻科、脳外科、神経内科、内科などで相談を受けても、その科で行う検査で何も異常がないめまいは多いのが実態です。しかし診断がつかないと、患者様も不安で、一般的なめまい薬を出されて、治し方も教えてもらえないことから、なかなか良くならない方も多いのです。

 2017年に上記の『恐怖性姿勢性めまい』<『持続性知覚性姿勢誘発めまい』という病気があるということがめまいの国際学会で発表されましたが、日本ではまだほとんど認知されていないと思います。これまで原因不明とされていためまいに、病名がようやくついたと言うことです。

 蒼野は長年めまいも診てきて、”めまいと言えばメニエール病”というのは本当に少なく、体調が悪く、肩、首こりが酷く、ストレスが溜まっていて、運動不足の方のめまいが多いなあと思っていました。そう言うめまいは、水分を沢山飲んで、めまいの中枢の血流を改善した上で、毎日体操することで良くなるのです。

 『恐怖性姿勢性めまい』<『持続性知覚性姿勢誘発めまい』の特徴は、これによく合致していて、そうですよねー!と心から納得しました。過去ブログで書いた、めまい専門の先生が命名した中枢性発作性頭位めまいというのも、『持続性知覚性姿勢誘発めまい』の中に入る様に思いました。

 眼振があって、周囲がぐるぐる回っていて、動くと吐いてしまう、動けないめまいの方は、救急車で病院に行く人がほとんどです。メニエール病とか小脳の出血や梗塞などがこれにあたります。なので通常の外来では、お目にかかることはほとんどありません。

 外来で一番多いのは急にぐるぐる回るようなめまいを発症し、その後ある時からは、動いた時だけぐるっと回ったり、フワッとするといっためまいです。これは以前にも書きました、良性発作性頭位めまい症といって、内耳の三半規管の中にある耳石が落下して起こるめまいです。

 国際学会でも、良性発作性頭位めまい症が一番多いと言われています。そして次に多いのが『持続性知覚性姿勢誘発めまい』です。ふわふわした浮動性のめまいで、ふらつき、不安定感を感じます。急に頭を動かすと誘発され、疲れてくる夕方などに悪化します。ストレスの影響が大きく、うつや不安症の合併も多いです。

 『恐怖性姿勢めまい症』は1994年にドイツで、提唱された概念で、良性発作性頭位めまい症の次に多いと報告されました。先行するめまい発作の後、めまいで転んだりするのが怖くて、めまいがしなくなるまで、じっと、なるべく動かない生活を送ってしまい、そのために自律神経系や筋骨格系の機能がさらに低下するため、めまいの悪循環から抜けられなくなる状態です。

 ふらつきが怖い人は、どうしても足元だけを見て歩くことが多いのです。周囲を視野に入れていなければ、視覚による身体のバランス補正が効きにくくなり、かえってふらつきが酷くなります。まためまいに恐怖を感じていると、四肢の筋肉が緊張するため、ふらつきを補正する筋肉の動きが大きくなりやすく、さらにふらつきが酷くなるのです。

 これには診察で、検査での異常は無く、「ただのめまい症です」と言われてしまいやすいことも関係しています。心配症の人は、はっきりした原因を説明してもらえないと、何か悪い病気が隠れているのではないかと思い込む方も居られるのです。

 心配を抱えた状態は、交感神経優位の状態です。脳幹にあるめまい中枢への血流も低下してしまうため、体動への対応が遅くなり、動いた時の補正が遅れ、ふらついてしまいやすくなるのです。女性や高齢者に多くなる傾向が認められます。長期間この状態が続くことで、寝たきりになってしまう方までおられるため、この疾患の知識が重要となります。

 そして最近の概念では、『恐怖性姿勢めまい症』は『持続性知覚性姿勢誘発めまい』のうちで、恐怖心が強いものとされています。特徴としては次の様になります。

1 平衡機能検査では異常がありませんが、立位や歩行時にめまいや浮遊感、不安定感を感じます。

2 日によってめまいは変動し、短時間、または瞬間的な身体の動揺感を感じます。

3 不安と自律神経症状が、めまいの最中やめまいの後に出現します。

4 疲れると増悪し、めまいを起こさないように生活で動かなくなります。

5 特に恐怖性の目眩には、強迫性性格,不安定な情動,軽度のうつなどが認められます。

6 精神的なストレスや,他の原因で起こるひどい目眩発作に引き続いて発症しやすいです。

 と言うことで、これは画像や平衡感覚検査などでは異常は出てこないため、問診で診断するしかないのです。そのためこの概念が無かった日本では、ただのめまい症と片付けられていました。現在では、日本の報告でもめまいの原因の2番目で、約23%がこれに分類されると報告されています。

 治し方は次の通りです。まずは一通り調べてもらって異常がなければ、必要以上に心配しない事です。血の巡りが良くなるように、肩こり、首こりをストレッチや入浴、マッサージなどでほぐし、十分に疲れを取りましょう。しっかり水も飲みます。もちろん睡眠時間は6~7時間以上確保し、自律神経を整えるために、早寝早起きを心がけましょう。

 めまいを恐れて、寝て過ごすことで、めまいが治らなくなります。このめまいは動いて治すめまいであることを理解しましょう。吐く程激しく動く必要はありませんが、体操など、なるべく頭も含めて動かして慣らしてゆきましょう。めまいが治っても、運動習慣を続けると、めまいの再発が少なくなります。

 ストレスや心配性、うつ状態がめまいにつながります。毎日気分良く過ごすためには、セロトニンをしっかり脳内に分泌する必要があります。朝日を浴びての散歩は是非習慣にしましょう。そして幸せホルモンであるセロトニンの材料を、不足しないように摂取しましょう。トリプトファンというアミノ酸と葉酸、ナイアシン、ビタミンB6などのビタミンB群、鉄が必要です。

 『恐怖性姿勢めまい症』の方には、普通のめまい薬だけではなく、軽い抗うつ剤、抗不安薬などが有効なことがあります。生活習慣の改善で治る人が多いのですが、うまくストレスに対処できない時には、使っても良いと思います。

 こうしてみると、人間ってデリケートですね。またメンタルと身体は密接につながっていることも感じます。今回蒼野は、初めてこの概念を知りました。知らないドクターも多いかも知れませんね! この概念は知りませんでしたが、蒼野は上記のアドバイスをすることで、沢山の患者様が改善するのを体験してきました。

 もしものめまいの時に、お役に立てれば幸いです。ふわふわする様なめまいの時には、是非生活習慣による治療を試してみて下さいね!

参考文献: 本邦における Phobic postural vertigo (恐怖性姿勢めまい)症例について Equilibrium Res Vol.66(3) 123~129,2007

過去ブログ: https://blue-zone-life.com/めまい/ 中枢性発作性頭位めまい

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