今日は現代の日本人に足りていないと言われている鉄について書いてみたいと思います。今までダイエットの話を書いてきて、減らしたら良い食べ物の話題が多かったのですが、しっかり摂取しておかないと痩せることができなくなる鉄についても、皆様に知っておいてほしいと思います。
鉄が不足すると、頑張って糖質制限や運動をしても痩せません。脂肪を燃やして、ミトコンドリアでエネルギーをつくる際に、酸素と鉄を必要とするからです。鉄が不足していると、酸素が運べなくなる上、運動しても食事を制限しても、脂肪が減りにくくなるのです。皆様は大丈夫でしょうか?
平成21年の厚労省の栄養調査では、鉄欠乏性貧血の割合は、20~40歳の女性の21%。貧血に至らない鉄欠乏がある、隠れ貧血の割合は、なんと65%でした。男性では、消化管出血で貧血になることが多く、2~3%程度ですが、70歳を超えると栄養不足からか、22.1%と一気に増えてきます。
鉄は毎日消費されるミネラルです。令和1年の国民栄養調査でも、年齢によって変動する、成人女性の鉄摂取推奨量は10.5~11.0mgですが、摂取量は6.2~6.4mgと半分ちょっとしか摂れていません。毎日の代謝で0.8mg、発汗が1Lあれば2.3mg、生理の時には1回で15~50mg失われます。妊娠中、授乳中はさらに必要になります。
基本的には、鉄は赤血球の中で酸素を運ぶ、ヘモグロビンに必要なミネラルです。また筋肉の中のミオグロビンの要素でもあり、血液からミオグロビンが酸素を受け取っています。そしてミトコンドリアのエネルギー代謝に必要な、重要なミネラルなのです。
日本では鉄の貯蔵量に余裕がない、隠れ貧血が多くなっており、欧米の4~5倍と言われています。特に10代の男性と月経のある10~50代女性で、大幅な鉄不足が指摘されています。フルマラソンなどの激しい運動をする人は、足の裏で赤血球を破壊してしまいランナー貧血になる可能性もあります。月経のある女性の半数以上に、鉄欠乏があることを意識しましょう。
飽食の時代にも関わらず、鉄欠乏が増えてきた原因としては、生活習慣の変化が挙げられています。①糖質炭水化物中心の食事、ファストフードや加工食品などの偏食、不適切なダイエットで鉄分摂取が不足します。 ②鉄の吸収を阻害する食品や薬の摂取 ③野菜自体の栄養成分の低下 ④腸内細菌の乱れ ⑤アルコールの常飲などによって、鉄の吸収が低下しています。
採血で赤血球が減り、貧血の値が出れば、血清鉄とフェリチン(貯蔵鉄)を調べることができます。どちらも減っていれば、鉄欠乏性貧血という診断となり、鉄剤が処方されます。しかし貧血が無い、隠れ貧血の場合には、診断がつかないことが多いのです。
蒼野の患者様でも、「昔から貧血と言われています」という人は多いのですが、倒れたりすることがなければ、そのまま放置されている方も結構おられます。鉄剤を飲むと胃が悪くなるので飲めないという方もおられます。すぐに命に関わる病態ではないため、皆様の関心も薄いように感じます。
鉄欠乏性貧血の症状で、特徴的なものは、氷を好んでガリガリ食べるということです。これは脳への酸素不足で、満腹中枢障害や体温調節がおかしくなるためです。眼瞼結膜が白くなり、肌や爪、舌や髪の状態も悪くなります。動悸がしたり、フラフラして立ちくらみや眩暈がすると、貧血が疑われます。血の巡りが悪いためにコリや痛みの症状も出やすいです。
しかし貧血のない隠れ貧血の段階でも様々な症状が出ます。これを知らない医療関係者も多いのです(実は蒼野も今日知りました…)。隠れ貧血の段階でも、エネルギーが作られにくくなるため、身体がだるい、疲れやすい、耳鳴りや肩こり、朝起きられない、あちこち痛いなどの不定愁訴が出やすくなります。
脳のエネルギー不足から、立ちくらみやめまいだけではなく、うつやパニック、不眠、集中力低下、神経過敏なども出たりします。これらは鉄欠乏の症状とは思えないですよね。そして糖質を減らしても痩せにくく、炭水化物や甘いものが無性に欲しくなったりするのです。
フェリチンは細胞の中に貯められている貯蔵鉄です。「細胞内のフェリチン量」x「壊れた細胞数」で血中のフェリチンの値が決まります。細胞が壊れると出てくるので、炎症やがんなどでも上昇します。血清鉄もフェリチンが正常範囲でも、鉄が不足している場合もあるので厄介です。
ということは、はっきりと診断がつかなくても、日頃から「スリムで元気に、エネルギッシュに生きて行くためには、毎日鉄を十分に補給することがとても重要である」と言えます。鉄は吸収されにくいミネラルですので、工夫が必要です。
食事に含まれる鉄分は、野菜や穀類に含まれ、吸収率が2~5%と低い非ヘム鉄と、肉や魚に含まれ、吸収率が10~20%と高いヘム鉄があります。吸収率を上げるには、酸っぱいものや辛いものを一緒に食べて、胃を刺激し、胃酸分泌を促進しましょう。鉄は胃酸で吸収されやすくなります。
乳製品に含まれるカゼインタンパク質も、体内でカゼインホスホペプチド(CPP)という物質に変化して、鉄吸収を高めます。他のミネラルの吸収も高めるため、一緒に食べると良い食品です。他のタンパク質やビタミンC 、クエン酸も鉄の吸収を促進しますので、肉や魚にレモンをかけたりして摂るのが効率的です。梅干しも1日一個食べると良いでしょう。
一方、コーヒー、紅茶、緑茶等に含まれるタンニンや、穀物の外皮、玄米等に含まれるフィチン酸などは、非ヘム鉄の吸収を妨げるといわれています。ハムやソーセージ・清涼飲料水やスナック菓子などに使われる添加物のリン酸塩は、鉄の吸収を阻害してしまいますので注意してください。
小麦や砂糖の取り過ぎなどで腸内環境が悪いと、カンジタなどの腸カビがミネラルをえさに増殖します。腸に届いた鉄分を奪ってしまうことで、吸収が悪くなります。逆に、腸内環境が良いと、酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌などが鉄の吸収を促進します。
調理器具によっても、摂取を大きく増やすことができます。ひじき100gを調理しても、ステンレス鍋なら6.2mgですが、鉄鍋なら58.2gにアップします。調理の時に入れる鉄玉というものもあります。ダッチオーブンも最高です。
どうしても食事が偏る方には、サプリメントも良いと思います。鉄分サプリにはヘム鉄のサプリと、非ヘム鉄のサプリがありますが、吸収率の低い非ヘム鉄であっても、クエン酸とキレートさせたタイプは、非ヘム鉄のサプリに起こりやすい胃腸障害を低減し、吸収率を改善しています。
妊娠してから貧血に気づいて、鉄剤での治療を始めても、正常化するまでには6~8週、さらに貯蔵鉄を満たすためには3ヶ月かかります。胎児が必要な時に、しっかり鉄が使えるよう、やはり毎日の食事が重要なのです。妊娠の可能性がある方は、特に日頃から気を付けておきましょうね。
ダイエットしてもなかなか痩せない方は、鉄が不足していないか考えてみる必要があります。是非、食事、調理器具、サプリメントなど色々工夫してみましょうね。特に女性は、思いのほか、体調が良くなることがあるかも知れませんよ!
ダッチオーブンで、ローストビーフが作ってみたい蒼野でした!
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