今日はこれからの医療の変化について、いくつか記事を読んだ蒼野が今思うことを書いてみたいと思います。少子高齢化が進む中、医療費は増大を続けています。国としては、財政圧迫を理由に強力に医療費抑制策を推進しており、経営が悪化している医療機関も結構あります。
2025年は団塊世代75歳以上となるため、今まで以上に医療費の増大と医療ニーズが高まるとされており、対応を迫られています。患者は増え、現役の医療従事者は減ってゆく中では、今までの医療システム自体を見直さないと、ますます問題は大きくなるものと考えます。
これだけデジタル技術が発達してきていることから、医療界にもデジタルトランスフォーメーション(AIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術の導入によるシステム変革)を導入して、効率化を図ることで、人手不足や医療費の削減、地域による医療供給の不均衡などが解決されてゆくと良いなあと思います。
地域にある医療機関は、医療費削減と、人口の都市集中などで経営が悪化しており、人手不足にもなっています。都市と地域の医療格差は広がるばかりです。コロナ禍になって、当初はマスクや消毒液が不足しました。グローバルサプライチェーンが分断されたことと、医療界ではデジタル化が進んでおらず、医療物資を過不足なくスムーズに供給する方法も無かったからです。
日本は高度成長、バブルを経験した世代のボリュームが大きく、今まで通りの多数決では、新たな変革がとても進みにくくなっているように思います、まだ過去の成功体験にしがみつき、既得権益の問題もあって、行政も含めデジタル化がなかなか進みません。
もし医療デジタルトランスフォーメーション(DX)が実現すれば、医療現場の業務効率化や、人手不足にロボットの活用などで対処出来る部分が大きいのです。診療以外の部分も、医療物資の管理や、診療情報の提携業務などを自動化することができ、人的ミスも減るはずです。
患者データのクラウド化についても、さまざまなメリットがあります。現在、他の医療機関や介護施設とのデータのやり取りは、画像はCD ROMに焼き付け、情報はまだ我々医師が診療情報提供書という形で書いて、患者様に持たせています。開業医や、古い病院ではいまだに紙カルテを使っているところもあるのです。
エストニアのように医療情報ネットワークがしっかり構築できれば、カルテは個人の情報となり、自分で管理できるようになります。病院や薬局、介護施設なども、患者様全ての必要な情報を閲覧でき、前の施設ですでに行っている血液検査や画像検査は、二重に行う必要がなくなったりすれば、医療費は削減できます。煩雑で時間もかかる上、カルテの要約のみの情報提供からも解放されます。
薬の数が多すぎる問題も簡単にチェック出来ますし、そこにかかりつけ薬剤師が入れば、患者様の生活状況や、服薬状況なども考えて、副作用を未然に防ぐこともできると思います。現時点では診療所の医師と、大病院の医師では得られるデータが全く異なっていることも多いと思います。データが共有できれば、質の高い医療の提供に繋がる可能性が高いのです。
この9月に生活保護の受給者が、ひと月に40回近く病院に通い、平均で約5300錠、合計で5万錠以上の向精神薬を、自己負担なく売買目的で処方を受け逮捕された事件を目にしました。共通のクラウドカルテになれば二度と起こらなくなります。蒼野自身もクリニック勤務中に、向精神薬を無くしたからと言って何度も受診するような人を実際に見た事があるので、あちこちで起こっていることの様です。
ただ不勉強な医師は困るだろうと思います。蒼野の診療生活の中でも、昔と今では180度治療の仕方、薬の使い方が変わったものが沢山あります。昔の知識のまま診療を行っている高齢の医師なども、やっている事がどこからでも見えるようになると、批判を受ける可能性もあるでしょうし、訴訟にだって繋がりかねないでしょうね!
今までは処方薬で副作用が起こり他の病院に運ばれても、薬が悪かったのだというフィードバック情報は返ってこなかったので、改善のしようが無かったのも事実です。前医の治療で、状態が悪化していることを疑っても、敢えて指摘したり、患者サイドに説明する事はほとんどありません。わざわざトラブルに首を突っ込みたくは無いのです。
蒼野自身も、前医を批判することは控えて仕事をしていました。もしかすると、自分がした治療が裏目に出ていたことを知らずに過ごしてきている可能性もあると思います。カルテがクラウド化され、AIのチェックで、自分がした治療のフィードバックがきちんとされるようになれば、医師のレベルも上がりやすくなり、全体の医療の質も上がってゆくはずです。
コロナ以前は初診からのオンライン診療は禁止となっていました。きちんと共通のクラウドカルテがあれば、受診のオンライン化ももっと進んでゆく可能性がありますね。地方にいても、わざわざ行かなくても、都市部での診療が受けられれば、より専門の医師に相談することもできます。医療の地域格差を埋められる方法の一つだと思います。
データがクラウド化されれば、昔の治療歴なども残ります。現在義務付けられているカルテの保持期間はその病気の診療が完結してから、たった5年です。継続して罹っている場合にはこの限りではありませんし、一部の電子カルテではもっと残すようになっていると思いますが、紙カルテの場合は保管の問題もありいまだにこのルールが適用されています。
もし火事になってりすると全て無くなります。また医療機関毎の電子カルテでも、災害やウイルスやハッカーの攻撃等で消失する可能性はあるでしょう。ある意味カルテは個人の情報であり財産ですから、消失することは許されません。
今年の4月から、リフィル処方箋と言って、病状が安定している人に限り、一定期間同じ処方箋で同じ薬がもらえるという制度が始まりました。忙しくて受診の時間が取りにくい生活習慣病などの患者様にとっては、薬を切らさずに続ける事ができ、とても良いシステムだと思います。通院の時間だけでなく交通費や、医療費の削減にもなります。しかし受診料が取れなくなるということで、導入には開業医や病院からはかなりの反対がありました。
確かに定期的に診察することで、病気の進行や変化に気づくこともできるので、受診までの期間が何ヶ月も空いてしまうと、健康を損なう可能性が高まるというデメリットが存在します。リフィル処方箋をもらっていても体調が変化している時には、医師に相談するのが良いと思います。
医療DXに予防医学を取り入れてゆくのが理想的だと思います。健康ウェアラブルデバイスやスマホもどんどん発達していますので、24時間個人の身体をモニターする事が出来ます。自覚的には気付けない、一過性の低血圧や低血糖、血糖スパイクなどがモニターできれば、あの食事が悪かったとか、もっと水を飲もうとか、運動するとこんなに違うんだということが分かるようになります。
もちろん糖尿病や高血圧などの人の日頃のモニターにも使えるので、生活習慣病管理にも大きな変革が訪れるでしょう。自覚症状がないから健康だと思っている人は多いので、自分の身体のデータが目に見えるようになり、それに対する知識が増えてゆくと、予防医学も大きく変わると思います。
まだ確定はしていないのですが、9月5日、米アマゾンが日本で保険調剤薬局事業に参入すると報じられました。まだ薬の分野だけですが、日本も国を挙げてデジタル化を進めて行かないと、医療全体も賢いグローバル巨大企業の未来戦略に飲み込まれて行くように思います。病院自体も全部外資系になったりする時代もあり得るのではないでしょうか?
ここ10年くらいの変化を考えても、本当にすごい変革の時代に生きているんだなあと思います。生きている間は、頑張って世の中の情報について行こうと思っている蒼野でした!
参照記事: アマゾンが日本で薬局事業に参入、既得権益者を襲う「衝撃」を先読み
https://diamond.jp/articles/-/310873
医療業界はDXでどう変わる? 課題や取り組み、DX推進事例を解説
過去ブログ:
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