四つの老化タイプ!

2022/06/07

 今日は老化に関する論文を少し紹介したいと思います。スタンフォード大学の研究で、人の歳の取り方には生物学的に4種類あることが分かったそうです。血液型みたいですよね。自分は何型なんだろうと思いながら読みました。これから自分はどんな風に老いてゆくのか分かれば、対策が立てられるかもしれません。

 34~68歳の健康的な男女43人を対象に、2年間に血液や便などの生体サンプルを5回にわたり採取し、タンパク質や代謝産物、脂質などのレベルを調べ、どう変化していくかを追跡しました。参加者の血液、唾液、尿、鼻や腸にいる細菌の種類など。最終的に延べ1800万項目ものデータを蓄積しています。

 その結果、老化に関する87の重要な分子と84の重要な経路を発見し、老化のタイプを四つに分類できたそうです。四つとは「肝臓型」「腎臓型」「代謝型」「免疫型」です。加齢と共に肝臓が悪くなりやすい人、腎臓が悪くなりやすい人、糖尿病になりやすい人、炎症を起こし易く、免疫関連の病気になりやすい人の四つです1)。

 分類以外の老化が起こらないということではなく、特にその部分が悪くなりやすいということです。老化は人によって本当に大きな差があり、先日のブログ( https://blue-zone-life.com/見た目が若い人になる方法!/ )でも書いたように、見た目や体内年齢が30年以上違ってしまうことも普通に起こります。身の回りを見ても、同じ年でも若見えの人と、老けている人の差が大きいことは、蒼野も実感します。

 統計的に、加齢によって糖尿病のリスクが高まることは従来から指摘されていました。この研究でも参加者全員で統計を取ると、加齢と共に糖尿病の指標であるHbA1cの値は上昇してゆきます。しかし個々に見ると、加齢と共にHbA1cの値が下がってゆく人がいるのです。

 HbA1cが上昇する人では、インスリンが効きにくくなっており、インスリン抵抗性が高くなっています。インスリン抵抗性が高くなる人は、加齢と共に約10個の分子が増えており、この分子は免疫機能や炎症にも関与していました。

 腎機能についても同様で、統計的に見ると、加齢と共に腎機能は悪くなり易く、クレアチニンの値は上昇してゆきます。しかし個々で見るとクレアチニンの値が下がり改善してゆく人がいるのです。老化に関しては、人によって全然異なる反応を起こすと言えるのです。

 研究ではタイプ分けは出来るが、タイプによって対策を立てれば老化を遅らせることができる可能性が指摘されています。調査期間中に、食事制限をして体重が減った代謝型の人は、HbA1cの値が下がっていました。これは普通に考えて当たり前ですよね!

 クレアチニンが改善してゆく人は12人いて、そのうち8人がコレステロールを下げるスタチンを飲んでいることが分かりました。これだけでは因果関係ははっきりしませんが、腎臓があまり良く無い高齢者で、コレステロールが高い人は飲んでみたら良いようにも思います。

 腸内細菌の種類も加齢によって変化してゆくことが分かりました。この変化が健康にどのように影響するのかはまだ不明ですが、老化を促進すると考えられる細菌群もあり、これを変化させることができれば、老化を遅らせる可能性があるかもしれません。

 この研究を指揮した、スナイダー博士は、まだまだ解明する必要があることだらけではあるが、老化のタイプを知ることで、健康リスクを知り、生活習慣を改善すれば、健康長寿につながる可能性があると考えています。

 スナイダー博士自身も、研究に参加していますが、平均的な老化スピードであることが分かり、少しガッカリして、筋トレを始めたりされたようです。今後の研究が進むことを願ってやみません。ということで、自分の老化タイプは沢山のデータを、時間ごとに採っていかないとわからないようです。

 また同じスタンフォード大学の研究で、人間の老化にはいくつか段階があり、変化する年齢が大体決まっているという論文もありました。18歳から95歳までの人間の血漿中の4263個のたんぱく質の分析を行い、さまざまな年齢の被験者のたんぱく質構造に変化があることが発見されたそうです2)。

 血漿たんぱく質の主な変化は相対的に34歳と60歳、78歳の3つの段階で生じていることが明らかになりました。 やはりガクッと老化が進む年齢があるというのは、科学的にも証明されてきているのだなと思います。蒼野は34歳は意識しませんでしたが、60前くらいからは、筋力や記憶力が落ちたかもという実感はありました。

 事故以来、徒歩での移動になったため、毎日1万歩歩くようになり、身体を鍛えるモチベーションも上がったため、短時間の筋トレもするようになって、筋力も記憶力も戻ったように思います。要するに、加齢と共に老化現象は段階的に起こってくることと、人によって悪くなるところは違うみたいです、ということが二つの論文の結論です。

 まずきちんと健康診断を受けて、腎機能や肝機能、HbA1cなどを見てゆき、悪くなっている部分があれば、自分はそのタイプであることを意識して、 生活習慣を改善してゆくという事です。改善すべき老化予防のポイントは次の四つです。

1、栄養  BMI値、HbA1c、アルブミン値、血中ヘモグロビン値などを見て、血糖スパイクを起こさず、適正体重になるような食事を摂りましょう。タンパク不足や鉄分不足もとても多いため、意識して摂取しましょう。

2、体力  握力や歩行速度、開眼片足立ちなどで判断し、落ちているようなら歩行や筋トレを少しずつでも行う必要があります。噛む力や食べる力も大切です。オーラルフレイルになると老化が一気に進むため、顔面の筋肉も鍛えてキープしてゆきましょう。

3、認知機能とメンタル 受動的に情報を受け取るだけではなく、人に話したり、書いたりするアウトプットで認知機能は高まり、老化が抑制されます。鬱にならないよう、朝散歩でメンタルを保ちましょう。十分な睡眠時間を確保しましょう。

4、社会とのつながり 外出したり、地域の活動に参加しましょう。コミュニティに参加し、人と沢山お話ししましょう。孤独にならないことが一番重要です。

 老化の研究も少しずつ進んでいますね! やったら良いことの裏付けが取れてきているということなのだと思います。元気で長生きするために、やるべき事は既に分かっています。いつも同じ結論になってしまいますが、食事、運動、睡眠を整え、周囲の人と楽しく暮らしてゆく、頭を使って人の役に立ってゆくという事を続けるだけで大丈夫です。

 昨日も自分がいつ死ぬか分からないと書きました。そうでなくても平均寿命の80歳まで生きるとして、あと18回しか桜が見れないのかと思うと、今のこの時間を大切にしなくっちゃ、と思う蒼野でした。

参考文献

1)Personal aging markers and ageotypes revealed by deep longitudinal profiling:

Nature Medicine.  volume26,  83–90 (2020)

2) Undulating changes in human plasma proteome profiles across the lifespan : 

Nature Medicine  volume25,  1843–1850 (2019)

参考ページ: 健康長寿ネット 老化の総合評価 

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/rouka-hyouka.html

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