よくあるめまいの治し方!

2022/10/22

 季節の変わり目、体調が狂いやすい時期になっています。寒暖差も厳しい日があり、うまく体調をコントロールするのは結構大変です。蒼野の患者様はもちろん、周囲のスタッフさんからも、めまいの相談を受けることが多くなっています。今日はめまいについての基礎知識と、今までのブログで書いていなかったことについて書いておきたいと思います。

 まずはめまいの起こるメカニズムからです。普段は正常に働いている平衡感覚は、目からの情報と、身体の回転や傾きを感知する内耳の三半規管と耳石器(前庭器)の情報、足裏から身体の位置や動きを感じ取る深部感覚が、前提神経核を経て小脳に送られ、大脳から筋肉へ送られる命令を修飾することでバランスが取れるというシステムです。

 これらのどこに不調が起こってもめまいが生じます。蒼野は事故で複視が残っているため、急に振り向いたり、走ったりすると視野がぶれてクラクラします。糖尿病で足裏の感覚がおかしくなれば、立ちくらみなどが起こります。特に内耳に異常が起こったり、その情報を伝える前庭神経に異常が起こったりすると、バランスが保ちにくくなります。めまいになると耳鼻科受診が勧められるのはこのためです。

 特に三半規管や前庭器の働きに左右差が生じるとバランスを崩してめまいが起こり易くなるのです。片耳の耳石が剥がれて、片方の前庭器に異常な感覚が生じると、左右で情報が違うため、めまいが起こってしまうことになります。これが最も多い、良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。

 疫学から見てみましょう。奈良県立医科大学耳鼻科の統計では1)、めまい患者は3年間で1220名、多い順だと、1良性発作性頭位めまい症(BPPV)が508例(41.6%)、2メニエール病が395例(32.4%)、3前庭神経炎43例(3.5%)、4突発性難聴(めまい突難)18例(1.5%)5脳疾患による危険なめまい15例(1.2%)と報告されていました。

 市中の耳鼻科のデータでも、良性発作性頭位めまい症が約40%で最多です。蒼野もよく目にする目眩です。まずはこの疾患について知っておくことが重要です。このめまいは頭をある位置に動かすたびに1分前後の回転性めまいを感じます。吐き気を覚えることもありますが、持続することはなく、他の症状は伴いません。

 これは前庭器である平行斑の上にくっついている、炭酸カルシウムの結晶からなる直径0.01㎜の粒状の耳石の一部が剥がれ、三半規管に入ってしまうことで起こります。50代以上で多く、ホルモンの関係で特に閉経後の女性で多くなります。また長時間頭を動かさないことでも起こりやすくなるため、半数はデスクワーカーという統計もあります

 耳石は三半規管の3つのループの空洞のうち、後ろの空洞(後半規管)に入ってしまうことが多いのです。三半規管の根元にはクプラと言って、平行感覚を感じる神経細胞が入ったゼリーの様なものがあります。一定の体位になった時にこのクプラに耳石が当たると、左右の平衡感覚情報が大きく違ってしまいます。

 また当たらない時でも、頭を動かした時の三半規管内でのリンパ液の流れに左右差ができるため、情報が統合できずに、中枢が混乱してめまいにつながります。脳は混乱してめまいを生じるということになります。

 ちょうど後半規管は我々の耳介と同じ向きで、耳の縁と同じような形で存在します。そしてクプラは耳たぶの位置にあります。後半規管に入った耳石は、体位によって物理的に除去することができます。代表的なものが「エプレ法」で、次の手順で行います。

 右の耳石が落ちて後半規管に入ったとすると、
1、座位や立位では耳石は耳たぶ(クプラ)の近くに溜まっており、少し体を動かすとクプラに当たったり、リンパ流を乱したりしてめまいを起こします。
2、少しのけぞるように仰向けに寝て、30秒くらいかけて45度くらい右を向くと、耳石は重力でゆっくりと耳の上の辺りまで移動します。
3、ゆっくり正中に戻し、30秒くらいかけてだんだん左を向いてゆくと、耳石は耳の前側に移動します。
4、体全体が90度左に向いた状態まで来たら、座位になります。耳石はクプラが無い側から前庭に排出されてしまえば、めまいは起こらなくなります。

 エプレ法の成功率は1回で80%、4回まで繰り返すと92%です。左右どちらの後半規管に耳石が入っているのか分からない時には、両方やってみましょう。また簡易な方法としては、仰向けになって右を向いて10秒、上を向いて10秒、左向いて10秒、上を向いて10秒の体操を10回くらい繰り返すと、半規管内で固まって、リンパ流を邪魔していた耳石が粉々になって、影響しにくくなり、めまいが改善し易くなります。

 蒼野は何年もめまいがしていると訴えられるお年寄りもよく見かけます。様々な平衡感覚の機能は加齢で低下します。お年寄りが3カ月以上続くふらつきの訴えを認めるのが「加齢性平衡障害」です。これは薬ではなかなか治りません。目・耳・足裏からの刺激を感知する力、身体を支える筋力、平衡機能の司令塔である小脳や全身の中枢の大脳の、いずれもが衰えてくるためのめまいです。

 このような高齢者のめまいやふらつきは、転倒リスクを高め、骨折から寝たきりへと発展させる可能性が高くなるため、改善できる方法を知っておいて欲しいのです。他にも前庭神経炎やメニエール病など、今日は詳しくは解説しませんが、さまざまな原因でめまいは起こります。もちろん急性期には、命に関わる疾患に伴うめまいを鑑別することが大事になりますので、めまいだけでなく他の随伴症状がある場合には病院を受診しましょう!

 めまいだけの症状の場合は、普通の生活が出来ていれば時間によって軽くなる場合が多いです。しかしめまいを必要以上に怖がって、寝ていると、耳石のめまいも含め、どのめまいも治りません。一旦悪くなった平衡感覚は鍛えないと改善しないからです。特に加齢性平衡障害にとって大事なことになります。

 今までのブログに書いた中枢性発作性頭位めまいや恐怖性姿勢性めまいなどは、耳鼻科では診断されていないことが多いのでは無いかと、蒼野は思います。過去ブログも参照頂ければ幸いです。これらはストレスや疲れ、脳疲労、肩こりや首こりなどが関係してくるめまいですので、こちらの改善にも運動や体操が必須となります。

 簡単なめまい改善体操を紹介しておきますね! 
1、座った状態で両手を肩の高さに上げて肩幅よりも広めに開き、まっすぐ前を向いたまま、視線を左右の手の先を素早く交互に見ます。20回くらい繰り返しましょう。

2、片腕を前に突き出して親指を立てて、親指を見ながら頭を左右に30度ずつ回します。

3、今度は立ち上がって両手を肩の高さに上げ、目を開けたまま50歩足踏みし、向きや位置がずれて来ないかチェックします。向きが左右90度以上変わってしまったり、位置が1m以上ずれる様な場合にはまだ外出しない方が良いでしょう。

 フィギュアの選手がスピンしても目が回らなくなるように、体操を続けると小脳を鍛えることが出来ます。小脳は原始的な脳みそで、平衡感覚の入力が悪くなっていても、それを代償してくれる能力を持っているからです。めまいを起こしやすい人も、体操を取り入れることで、慢性的なめまいから解放されることが多くなります。

 睡眠不足は大敵です。また雨など気圧が変化した時も、内耳の働きが低下し、めまいを起こし易くなるので注意してくださいね! もちろんストレス、自律神経失調も大きな要因ですので、楽しく身体を動かして解消してゆきましょう。やはりしっかり水分を摂ることと朝散歩は、全員にお勧めしたい蒼野でした!

参考文献:1)めまいの診断と治療 日本耳鼻咽喉科学会会報 2019 年 122 巻 6 号 p. 910-915

参考ページ: 小脳を鍛える「体操」でめまいやふらつきを改善  新井 基洋

過去ブログ: 中枢性発作性頭位めまい   https://blue-zone-life.com/めまい/

恐怖性姿勢性めまい!  https://blue-zone-life.com/wp-admin/post.php?post=2837&action=edit

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