脳機能は脳波で変えられる?!

2024/01/07

 昨日我がメンター樺沢紫苑先生が登壇するということで視聴した「ブレインサミット」というイベントで、初めて聞いたお話があるので、追加で調べて、アウトプットしておきたいと思います。もちろん大学でも、脳神経外科専門医の勉強でも習った事がない事です。

 人間の脳の活動は、神経細胞同士の電気的な活動がベースになっています。そしてそれを脳波という波形を測定して、調べる事ができます。脳神経外科で使う脳波診断は、てんかんや意識の有無、脳機能の残存を調べる時だけです。しかし近年の研究で、認知症でも脳波が変化することが分かってきたそうです。

 慶應大学の研究によると、健常者、軽度認知障害(MCI)、認知症の3グループで脳波を計測したところ、それぞれに特徴があることが判明し、認知症初期の診断の助けになる可能性が指摘されています1)。データ量が増えれば、AIに脳波を学習させることで、かなり正確にMCIが診断される可能性があると考えられます。

 まだ症状がほとんど無い段階で、認知症リスクが分かるようになれば、現時点では高額過ぎて本当に使えるのか、蒼野も疑問を覚えていたアミロイドβの抗体薬も、有効な使い方が出来るようになるかもしれません。脳波測定には副作用もありませんので、これからの発展に期待したい分野です。

 もう一つ面白かったのは、脳波に影響する周波数の刺激によって、認知症で狂いつつある脳波自体が変化し、正常なリズムに戻る可能性があるという事です。脳波は電気的なリズムで、脳の状態によって周波数が変わります。ある周波数の刺激によって、その周波数に同期して、脳波が同じリズムになるという事実です。

 一般的に測定される脳波は、次のようになります。

目をつぶってリラックスしている時に多い、8~13Hzのアルファ波(α波)

能動的で活発に思考している集中状態の時に多い、14~30Hzのベータ波(β波)

深い瞑想状態や眠い時に見られる、4~7Hzのシータ波(θ波)

深睡眠(徐波睡眠)の時に見られる、0.5~3Hzのデルタ波(δ波)

知覚や意識が研ぎ澄まされ、幸せを感じる時に見られる40Hz (26 ~70 Hz)のガンマ波(γ波)の5つです。ガンマ波は、高次精神活動に関連しているとされています。θ波とセットで出てくることもあるようです。

 これはパフォーマンスとの関係も多く研究されていて、リラックス状態で完全に集中している時(ゾーン状態、フロー状態)には低α波やθ波が出ていると言われています。絶好調のイチロー選手がバッターボックスに立つ時の脳波はθ波だったり、マインドフルネスが上達するとθ波が出ると言われています。ダライラマのような法王の領域になると、持続的にγ波が出るそうです。

 仕事のパフォーマンスも圧倒的に上がるため、Googleでは会社内に巨大な数百万ドル規模の「マインドフルネス・センター」を完備しています。そこでは脳波を測りながらマインドフルネスを行い、高い集中への入り方を会得出来るのだそうです。我々の近くに、マインドフルネスセンターはありませんが、簡単に好ましい周波数の脳波に同期させる方法があるのです。

 それが『バイノーラルビート』です。脳内をゾーンに入れる8Hzの低α波にしようとすると、8Hzの音を聞かせれば良いと思いますよね。しかし実際には、8Hzの音というのは聞こえませんし、再生するのも難しいのです。そこで考案されたのが『バイノーラルビート』です。

 右耳に100Hzの音、左耳に108Hzの音を聞かせることで、その差の8Hzの違和感を、脳が補おうとするため、脳内に8Hzの周波数音が作り出されます。その周波数音に脳波が同調するのです。落ち着いてリラックスしたり、深く集中したりしやすくなるという訳です。

 不思議な感じもしますが、人間は昔から音楽の力で、感動したり、癒されたり、力をもらったりしてきた事を考えると、音によって脳波が変わるというのは当たり前のことなのかもしれませんね。この技術はうつ病や、パニック状態などの治療にも応用されてきているようです。

 YouTubeで、バイノーラルビートで検索すると、ストレス解消や、脳疲労の回復、生理不順の改善や、頭痛改善、肌の若返り、幽体離脱誘導など様々な音源が紹介されています。蒼野はまだ試していませんが、疲れている時には、聞いてみても良いかも知れません。音は両耳で違うため、必ずイヤホンやヘッドホンで聴く必要があるようです。

 最後は認知症への応用です。認知症になると、脳の活動が低下し、脳波の中で最も高い周波数であるγ波が少なくなることが分かっています。この脳波は高い思考力と集中力に関連しており、γ波が多く発生すると、ワーキングメモリが向上し、知能指数が高くなるのです。その鍵となる周波数は40Hzです。

 40Hzの音は普通に再生できて、我々の耳でも聞こえる音です。これは25Hzが上限と言われる『バイノーラルビート』で誘導するには、離れ過ぎているようです。そこで開発されたのが、40Hzの音をテレビの音に加えることができる認知症予防機器です。シオノギヘルスケアの『kikippa』という製品で、蒼野の母親にも使わせています。

 毎日聞くテレビの音を、γ波サウンドに変調することで、脳波がγ波に同調し、認知機能が蘇るのです。ネズミの実験では、脳内で40Hzのγ波が発生することで、脳内のアミロイドβを処理するグリア細胞の数が増え、血管が拡張し、新たに作られて脳血流が良くなります。その結果アミロイドプラークはほぼ半減し、認知機能障害の改善が認められています2)。

 もちろん人でも実験が続けられています。米国では40Hz周期の音・光刺激で脳内にγ波が発生し、1日1時間聞くことで、認知症の進行が、認知機能検査上83%減少しています。アルツハイマー患者も6カ月の使用で脳萎縮が進行しにくくなり、使用前と比べると、脳が約0.4%増加していることが確認されています。同時に蓄積したアミロイドβの有意な減少が確認されています2)。

 8月から『kikippa』を使い出した蒼野の母親は、1カ月後には同じ事を聞き返す頻度が激減しました。音を聞くだけで副作用はありませんし、申し込んで良かったなあと感じています。認知症が進行してしまった人では、効果は薄い可能性はありますが、MCIの方は試してみる価値はあると感じています。

 少なくとも脳出血の副作用のある馬鹿高い抗体薬を使う前に、『kikippa』を試して欲しいと思います(シオノギとは何の関係もありません)。40Hzの音は自然の中にも多くある物だそうです。自然の中で進化してきた我々が、自然の音で癒され、健康になるということは、素直に信じたい蒼野でした。

参考文献:
1)Frontotemporal EEG as potential biomarker for early MCI: a case–control study. ; BMC Psychiatry 22, 289 (2022).

2)Multi-sensory Gamma Stimulation Ameliorates Alzheimer’s-Associated Pathology and Improves Cognition. ; Cell 2019 177, 256–271 

ブレインサミット :  https://lstep.app/doBFPvc

過去ブログ:

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