コロナ後遺症の最新情報!

2022/11/03

 今日は最近データが積み重なって、研究も進んできたLong COVID(コロナ後遺症)について、新しい知見を書いておきたいと思います。コロナが軽症で済んだ人にも起こる可能性がある後遺症ですが、ウイルスがいなくなった後も長く続いたりすると、生活の質に大きな影響があるため、見過ごすことは出来ない合併症です。

 先日も8月にコロナ感染した親子が来院されました。感染後から頭痛が酷くなり、毎日のように痛い。娘さんは大学生ですが、耐えられない痛みで動けないということでお母さんがおぶって来院されたのです。脳の画像検査や血液検査は異常が無く、推測ではありますが、コロナ後の老化細胞からの炎症が続いていることで、片頭痛体質が悪化しているものと考えました。

 痛み止め等を飲ませながら様子を見たのですが、痛みが治らず、動けないため経過観察のために入院としました。片頭痛の予防薬と痛み止めを持たせての退院となりましたが、今後も外来でフォロー予定としています。コロナ感染を契機に、生活の質が低下していることを強く感じました。

 10月に世界で二つのLong COVIDについての論文が発表されました。一つ目はドイツからの研究です。270万人の地域住民のうち、2020年10月1日~2021年4月1日の間にコロナ感染が確認された人が5万457人居られ、そのうちで後遺症について回答した1万1,710人を精査しています。

 感染後6~12ヵ月の時期に認められた後遺症の内訳は、疲労感が37.2%、神経認知障害(ブレインフォグ)は31.3%と高く、この二つの症状が特に日常生活や仕事に大きな影響を残していました。呼吸困難、胸痛などが30.2%、不安/抑うつが21.1%、頭痛/めまいが19.9%、嗅覚/味覚障害が23.6%、筋骨格系の疼痛が16.8%、咳や咽頭痛が13.9%認められていました。

 生活に支障をきたすLong COVIDが残っている人は3,289人。感染者数5万457人の中の割合は6.5%で、男性が4.6%、女性が8.4%でした1)。

 二つ目の論文は世界中の54件の研究とアメリカの医療記録データベースを解析し、感染者約120万人から割り出したものです。感染3ヶ月後に自覚症状を調査してLong COVIDの有病率を計算しています。2ヵ月以上持続し他の診断では説明がつかない症状が残る人の割合は、全体で6.2%。やはり女性、及び入院を要した重症患者で多い事が明らかとなりました。

 感染者全体からの割合で言うと、身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労が3.2%、持続する呼吸器症状が3.7%、認知に関する問題が2.2%でした。3ヶ月後に症状が残る割合は20歳以上の女性では10.6%、20歳以上の男性での5.4%、20歳未満では男女とも2.8%でした。

 症状の持続期間は、入院例で9.0ヵ月、非入院例では4.0ヵ月でした。3ヶ月の時点で症状が残った人のうち、推定15.1%は12ヵ月後も症状が持続していました2)。単純計算では、6.2×0.15で、0.93%の人は、コロナに罹ったばっかりに、1年経っても、寝込んでいたり、仕事が出来なかったりして、本当に苦しんでいる可能性があると言う事ですね!

 広島県のコロナ指定医療機関で8月に行われた調査研究によると、コロナが治った127名のうち52%に感染前には無かった、何らかの症状を1ヶ月後にも経験していました。これは加齢と共に有意に増えており、40歳以上はそれ以下よりも2.46倍多く、60歳以上は3.63倍多い事が分かりました。

 また、有意差は出ませんでしたが、重症度が高いと後遺症が残る可能性が高い傾向にありました。自宅療養患者の有病率は22.2%でしたが、ホテル滞在患者では80.0%でした。症状としては嗅覚障害が15.0% 、味覚障害が14.2%、咳が14.2%、疲労感が11.0%、呼吸困難が10.2%でした。高齢者では疲労感、動悸、ドライアイやドライマウスが多くなっていました3)。

 WHOの定義では、Long COVIDは、他に原因がない、少なくとも2ヶ月以上持続する症状で、コロナ感染の3ヶ月後にある症状のことを指しています。症状として主なものは、倦怠感、呼吸困難、記憶障害などとされています。定義から言えば様々な病態が混在している事が考えられます。病態が違えば、対処法も多様な方法が求められるはずです。

 検査上の数値で診断できるものでもありませんし、他の他覚所見が無いことからは、メンタルの悪化なども含まれている可能性もあります。コロナ感染によって、職場や周囲などから、偏見の目で見られたり、批判されたり、差別を受けた人は43.3%も居ました。

 復帰後も感染源のように扱われたり、言葉でハラスメントを受けたりすることもあり、30.7%の人は気分障害や不安障害が併発していました。確かに自分がその立場なら嫌な気持ちになると思いますし、ましてやHSPの人にとってはかなりキツいと思います。ストレスでうつ病を発症したりすれば、倦怠感や記憶障害が出ても不思議ではありません。

  現時点で日本のコロナ感染者の合計数は 2240万人です。世界データに照らし合わせると、3ヶ月後も生活に支障が出ている人が、6.2~6.5%として139~145万人1年後にも苦しんでいる人が21~22万人もいると言うことになります。

 これからも日々感染者は増えてゆくことを考えると、とても大きな問題だと感じます。日本でいち早くコロナ後遺症外来を解説した平畑光一先生によると、まだコロナ後遺症について、医師の間でも知識はバラバラで、普通のクリニックでは検査で異常が見つからないため、「原因不明」とか「心因性」と診断されることがまだまだ多いようなのです。

 人によって症状は様々で、一般の医師の無理解はもちろん、職場などでも後遺症への無理解が患者様を追い詰めてしまいます。運が悪ければ「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」へ移行することがあるのです。著明な倦怠感から、重力に逆らって身体を動かす事ができず、鉛のように重たくて指一本も動かせない状態に陥る場合もあります。

 ME/CFSはまだ病態が解明されておらず、治療法も確定していません。強烈な全身倦怠感が回復せずに日常生活が著しく困難になる疾患ですので、本当に辛いと思います。同じコロナウイルスで起こった2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行後、香港でSARS発症の数年後に27%の患者がME/CFSの診断基準を満たしていたと報告があります。細胞を破壊するコロナウイルスに起きやすい後遺症の一つなのでしょう。

 またコロナ後遺症で受診する患者様の85%は感染後からの症状が、そのまま続く場合や、モグラ叩きのように出たり消えたりする場合で、残りの15%位は一度治ってから数カ月~1年後に症状が現れる場合があるそうです。これは就業や就学、家庭生活に大きな影響を及ぼします。メンタルへの悪影響も重大です。重症のコロナ後遺症は「働き(学び)盛りの人が、働け(学べ)なくなる病気」なのです。

 対処法まで書きたかったのですが、紙面が無くなってしまいました。明日後遺症外来の治療や、漢方の選び方や使い方などについて、詳しく書きたいと思います。今後も増えてゆくコロナ後遺症についての正しい認識が広がることを願っている蒼野でした。

参考文献:

1)Post-acute sequelae of covid-19 six to 12 months after infection: population based study. BMJ 2022 10 13 ; 379;e071050. doi: 10.1136/bmj-2022-071050.

2)Global Burden of Disease Long COVID Collaborators. ;
   JAMA. 2022 10 25;328(16);1604-1615. doi: 10.1001/jama.2022.18931.

3)Long COVID occurrence in COVID-19 survivors

   Scientific Reports 12, 6039 2022   : 10.1038/s41598-022-10051-z

過去ブログ: LONG COVID   https://blue-zone-life.com/long-covid/

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