今日は自分が気になっている、高コレステロール血症の話です。蒼野は健康オタクなので、かなり生活は改善できているように思います。しかし健診のコレステロール値だけは、どんなに生活習慣を変えても下がらないのです。悪玉と言われるLDLが高いとやはり気になります。
そこでお休みでもあるので、その点をじっくり調べてみることにしました。蒼野は家系的に、どうやら家族性高コレステロール血症のようです。母親もコレステロールの薬をもらっていました。親のうち1人が、遺伝子変異を持っていると子供は50%の確率で受け継ぐそうです。
これは全世界的に見ても最も一般的な遺伝性脂質異常症の一つで、欧米諸国では、約200人から500人に1人の割合で見られるそうです。通常の人よりも食事から摂取したコレステロールに敏感であり、LDLコレステロール値がさらに上昇するリスクがあるそうです。蒼野は、糖質制限を始めた10年前くらいから、LDLが200を超え始めました。
家族性高コレステロール血症は、LDL受容体の機能異常や、その関連タンパク質の遺伝子変異によって引き起こされます。一般的には、食事からのコレステロールは、米国では2015年から1日の摂取上限が撤廃されています。これは食事から摂取されるコレステロールが、血中コレステロール値に与える影響が、以前考えられていたほど大きくなく、心血管疾患のリスクに対する影響が小さいというエビデンスがあるからです。
しかし、家族性高コレステロール血症は、沢山摂れば上がってしまうようなのです。蒼野の食生活では、やはり糖質は少なめにしたい為、どうしても卵や肉、魚介類からのエネルギー摂取が多くなってしまいます。そこで次善の策ということで、高コレステロール血症の薬であるスタチンを内服しています。そしてLDLは正常上限から少し超えたあたりでキープされています。
一言でLDLといっても、ちゃんとリサイクルされる必要なLDLも、動脈硬化につながる悪いLDLもあるのを、皆様はご存知でしょうか? 悪玉コレステロールと聞くと、ゼロにしたいと思われる方もおられるかもしれませんが、呼び名通りに受け止めてしまうと、特にコレステロールが必要な脳などの、健康を害する可能性さえあるのです。
栄養学は日々進んでいて、かつて一世を風靡した、食べ物の中のコレステロールが動脈硬化や心血管疾患に悪影響があるというのは、今や時代遅れです。先ほどの摂取上限撤廃の話があったように、食品から摂取するコレステロールと、血液中のコレステロール値は一切関係がありません。
しかし未だにコレステロールの多い食品を控えめにするのが、健康的だと思われている方は、多くいらっしゃいます。
アメリカの調査では、栄養士の40%と、開業医に至っては、なんと70%が未だにコレステロールの多い食品を控えるよう指導しているようです。観察研究ではありますが、卵の消費量と脳卒中と虚血性心疾患についてのメタ解析では、脳卒中に関しては人数×年数が約415万人年、虚血性心疾患では308万人年の観察で、卵を毎日1個食べてもリスクは上昇せず、脳出血に関しては、かえってリスクが減っているという結果が報告されています1)。
卵黄には、ひよこの神経を発達させるための、脳に良い成分がふんだんに含まれています。人間にとっても大事な、ビタミンA、B12、E、セレン、亜鉛、脳内伝達物質のアセチルコリンや細胞膜の材料となるコリンや、ルテインやゼアキサンチンという抗酸化作用のあるカロテノイドが含まれています。最近随分値段は上がってしまいましたが、欠かさずに食べたい食材です。
基本にかえって、LDLについても解説しておきます。これは日本語では低密度リポタンパク質(Low Density Lipoprotein)です。そのほとんどが体内で合成されているコレステロールを、肝臓から運び出して、必要な組織に届ける乗り物がLDLです。コレステロール自体は油なので、水分が92%を占める血液には溶けません。血液中を移動するためにはLDLと結合する必要があるのです。
LDLは組織にコレステロールを運び終わると、肝臓に戻り代謝されたり、リサイクルされます。しかし肝臓に戻れなくなって、血液中の濃度が高まり、血管壁内に取り込まれたりすることが、動脈硬化の原因となります。肝臓に戻れなくなる原因は主に次の二つです。
一つ目はLDLの酸化や糖化です。コレステロール運搬中のLDLや、肝臓に戻る途中にダメージを受けたLDLは、運搬先の組織や、肝臓の受容体に結合出来なくなり、迷子のような状態で血液中を彷徨うことになります。これが血管の傷などに迷い込むと、炎症が起こり、マクロファージに食べられて「泡沫細胞」に変化します。
泡沫細胞が蓄積したものが血管プラークです。血管壁は肥厚し、血管は狭くなり、動脈硬化が進行してしまいます。これが狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの原因になるのです。脳の微小血管にこのアテローム性動脈硬化があちこちに発生すると、小さな脳梗塞の卵、慢性脳虚血性変化となり、これが多くなると血管性認知症につながります。
二つ目は、肝臓が忙しくなりすぎて、戻ってくるLDLの順番が、後回しになる状態です。炭水化物や糖質+脂質、アルコールや薬剤、加工食品の添加物などの代謝で、肝臓が手いっぱいになると、LDLのリサイクルは後回しになります。血中LDL値は上昇し、その間に酸化や糖化でダメージを受ける確率が上昇します。
動脈硬化を防ぎ、心血管や脳血管に障害を起こすポイントは、間接的には高LDL血症ですが、その本質は酸化LDLや、糖化LDLが高いことが直接関係するのです。体内炎症が高い状態だと、酸化ストレスが高まります。糖質過多であれば糖化ストレスが高まり、糖化LDLは酸化されやすいためにプラークに変化してゆくのです。
高炭水化物・低脂質の食事は、高コレステロールには良さそうですが、糖質によって中性脂肪が上昇し、VLDL(超低密度リポタンパク質)と結合して血中に放出され、高トリクリセリド血症となります。体脂肪が増えた上、VLDLは代謝でLDLに変化します。糖化したり、炭水化物の代謝で、肝臓に戻れないLDLは、動脈硬化につながってゆくのです。
高炭水化物の食事は、腸内細菌を乱し、リーキーガットを誘発し、体内炎症を増し、酸化ストレスが増加します。血中LDLが高くない場合でも、酸化LDLの割合が増加します。高炭水化物食、特に加工食品で摂っていると、糖尿病、肥満心臓発作を起こす可能性が高まるのです。
以前のブログで調べたことですが、炭水化物の摂取を、増やせば増やすほど死亡率は上昇し、脂肪の摂取を増やせば増やすほど死亡率は低下するという結果が示されています。飽和脂肪酸の摂取量が多ければ多いほど、脳卒中に罹る危険性は低下し、飽和・不飽和を問わず、脂肪の摂取は死亡率を低下させ、心筋梗塞および心血管疾患の発症とは何の関係もありませんでした2)。
今日蒼野が勉強して考えた結論は、高LDL血症に関しては、単独で少し上限を超えているからといっても、すぐに薬で下げる必要はないように思います。特に高齢者では、コレステロールの下げ過ぎが気になります。脳やホルモン、細胞膜などへの影響が気になるからです。蒼野のようにLDLが200を超えるような場合には薬は飲んでも良いでしょうね!
肥満や糖尿病、高血圧など他のリスクがある人も、酸化したLDLが多くなっている可能性があるため、服薬を考えて良いと思います。しかしスタチンを飲むだけでなく、体内炎症を抑え、糖化、酸化ストレスを下げることが、一番重要だと思います。腸内環境を整え、糖質過多にならない生活を基本にしてゆきましょう。
今日まとめてみて、LDLを良い状態で、適度な数値(まだ少し高めですが)にキープできるよう、薬と抗酸化、抗糖化生活を、今からも心がけてゆけば大丈夫かなあと思っている蒼野でした。
参照文献:
1)Egg consumption and risk of coronary heart disease and stroke: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. ; BMJ. 2013 Jan 7;346:e8539.
2)Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. ; Lancet. 390 (10107). 2050-2062, 2017
過去ブログ:
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