今回のコロナ第7波は、まだ留まるところを知らず、患者数が拡大しています。全体の数が増えるほどに、コロナ自体の重症者や、元々の持病の増悪、そしてコロナ後遺症患者数が増えてゆくのは自然なことかと思います。特にコロナ後遺症は、軽症の方でも出現して苦しむことがあると聞き、蒼野はとても気になります。
後遺症外来を訪れる患者様の症状で最も多いのは倦怠感で、豊富な経験を持つ平畑光一先生によると94%に上るそうです。重症の呼吸器症状があった患者様に、呼吸器系の後遺症が出るのは当然だとは思いますが、倦怠感やブレインフォグなどについては、まだ解明はされていないようです。
英国の国家統計やWHOの発表では10人に1人に、Long COVID(コロナ後遺症)が残るとされています。国内データでは、国立国際医療研究センターでは、6ヶ月後に26.3%に何らかの症状が見られるとしていますし、世田谷区の調査では3710人のうち48.1%に軽いものも含めての後遺症があったと報告されています。
平畑先生の経験でも、半数に何らかの症状があり、10%は外来治療が必要な状態であるとのことです。現在の感染者数が1280万人ですから、128万人が治療が必要な後遺症で苦しんでいる可能性があるということかと思います。コロナの診断を受けていない方もおられるため、もっと数は多いかも知れません。
10日間の療養期間中から続く症状が、後遺症につながった人が91%。いったん症状が全て軽快した人は少し安心ということになります。多い順に、倦怠感、気分の落ち込み、思考力の低下、頭痛、息苦しさ、不眠、体の痛み、動悸、食欲不振、発熱、咳、嗅覚障害、脱毛、味覚障害と多岐にわたります。これらの症状がモグラ叩きのように出たり消えたりするのが特徴です。
中でも重度の倦怠感は生活支障度が大きく、仕事に影響が出るため、生活の糧を奪われてしまう場合もあり、当事者にとっては地獄の苦しみのようです。実際に自殺された方もおられるのです。この病態は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という難治性疾患との関連が疑われています。
軽い作業をしただけでも、極端に体調が悪くなるのが特徴の病気です。入浴すると1日寝込んだり、1時間散歩の翌日から3日間寝たきりになったり、全身の痛みが取れないのに検査上は異常が出ないなど、周囲が理解しにくい症状が出るため、わかってもらえない辛さも加わるそうです。
海外ではSARSやMARSのコロナ感染後にME/CFSが多発したと報告されています。日本ではSARSやMARSが流行らなかったため、一般の認識が得られていないようです。米国ではコロナ後遺症とME/CFSの関連について国家予算をかけて研究を進めているそうです。
ME/CFSの程度も、個人差が大きく、本当に軽症の人から、准寝たきり~寝たきりに至る病態まで様々です。軽症の人は多いのですが、准寝たきりのところにも山があります。重症の方は外出が難しいため、我々の目に触れる機会も少ないのが現状です。決して軽く考えない方が良いのです。
オミクロン株になって、ME/CFSで准寝たきりのレベルに悪化する人は、100%が2ヶ月以内ということです。逆に言えば2ヶ月間をうまく切り抜けてゆくことがとても重要なことになります。軽い労作後やストレス後、5~48時間後に強い倦怠感が出る人は要注意です。この症状をPEM(Post-exertional malaise)と呼びます。
PEMの症状がある人はME/CFSの傾向があります。少し無理をすると急激に寝たきりになる可能性があるため、無理は禁物なのです。PEMがなくても倦怠感が続いている間は注意が必要です。早期治療が望まれる状態なのです。感染後のPEMは40%程度見られるようです。
この時に注意すべきなのは、運動で鍛えて治そうとすることです。コロナ後遺症を知らないDr.に勧められても、運動は行うべきではありません。症状が軽かったけど、倦怠感が強い人は運動すると寝たきりに移行する可能性があるのです。
ME/CFSでは『クラッシュ』と言って、許容量を超えた運動やストレス、頭脳労働などで、数日間動けなくなる状態が知られています。まだ完全にME/CFSの状態でなくても、コロナ後遺症の段階でも起きるのです。そしてこれを繰り返すと、ME/CFSに移行してしまいます。
どれくらい動いたり仕事をしたりしても大丈夫かは、自分でしか分かりません。「だるくなることは絶対にしない」という事が一番大事なことになります! 身の回りのことや、入浴でさえも、だるくなるなら自粛する方が良いのです。調子が良い日にも、一時的にでも負荷は増やさない事が重要です。
だるくない範囲の活動で生活しながら、2週間ごとに少しずつ負荷を増やすことが必要です。危ないと感じたら直ぐに横になって休む事が必要です。散歩などの屋外の運動などはよほど良くなってからでないと危険です。もし蒼野がこの状態になったら、きっと無理をしていたに違いないので、頭に刻んでおこうと思いますし、患者様にも伝えたいと思います。
今コロナ後遺症で行われている治療をお伝えします。基本になるのは上記の「生活療法」です。これに加えて改善の確率が良いのは、「上咽頭擦過療法」+「漢方薬」だそうです。平畑先生の経験では70%程度に改善が見られているそうです。
「上咽頭擦過療法」については、長くなりますので、明日お伝えしますね! そのほかではBCAA(分岐鎖アミノ酸)を飲むと一時的に楽になる方がおられるようです。しかし楽になっても無理は禁物です。
亜鉛は6割の患者様で不足しているため、補充すると良いようです。測定して80µg/dL以下だと、脱毛や味覚嗅覚の影響が出やすくなります。鍼灸も有効ですが、キツくすると後が辛くなります。首肩を重点的にやってもらうと良いです。鼻うがいも、味覚嗅覚障害に有用です。その他の症状も軽くなる事があります。
平畑先生の経験では、コロナ後遺症3000人の通院患者様のうち、200人が失職、1000人が休職、休みながら働いてる人も含めると、患者の70%弱に、仕事上の影響が出ているそうです。当然もらえる給与も下がってしまいます。そうならないように慎重な対応が必要なのです。
蒼野も含めて、もういつ感染してもおかしくない状況です。次のケンタウロス株はもっと多くの方々に感染することが予想されます。立ち直れないような後遺症に苦しまないよう、正確な知識が必要ですね! もし身の回りに、感染後の倦怠感が残っている方が居られれば、ぜひ教えてあげてくださいね!
医療崩壊も心配ですが、コロナ後遺症で働けなくなる人が増えるのも心配です。状況に素早く対応できる日本であってほしいと願う蒼野でした。
参考ページ: https://longcovid.jp
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