片頭痛薬 レイボー!

2022/05/16

 今日は新しい片頭痛の薬、『レイボー』のご紹介です。片頭痛がある方には、治療の選択肢が増える嬉しいニュースではないかと思います。海外では2019年から使われていますが、日本では、今年の1月20日に承認となり、6月8日から使える様になります。片頭痛の急性期に使える、新しい種類の痛み止めとなります。

 片頭痛の急性期治療については、今までは通常の痛み止め(NSAIDs)とトリプタン製剤しかありませんでした。急性期治療について復習したい方は11月17日のブログをご参照下さいね。
( https://blue-zone-life.com/migraine-5/ )

 片頭痛の発症機序については、未だ確定していないのですが、さまざまな誘因によって、頭部にある三叉神経が刺激されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質が出てきます。これが血管に作用すると、血管が過度に拡張して周囲の神経を圧迫し、脈で押されるたびに、ズキンズキンと痛みを感じるとされています。

 またCGRP自体によって局所の神経炎症反応が起こったり、痛みの増強が起こることも示されています。つまりCGRPが出なければ頭痛は起こらないのです。レイボーは頭部の三叉神経にある、セロトニン5-HT1F受容体と言うものに作用します。セロトニン5-HT1F受容体にレイボーが作用すると、CGRPの分泌が抑制されるのです。

 セロトニン5-HT1F受容体作動薬はジタンという種類の薬で、ジタンの中で一番最初に発売された薬が、このレイボー(ラスミジタン)という薬になります。

 片頭痛を起こす元になる反応を止めることで、片頭痛が起こらなくなる薬ということになります。ちなみに今まであった片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤は、三叉神経にある5-HT1D受容体と血管内皮細胞にある5-HT1B受容体に作用する薬になります。5-HT1D受容体にトリプタンが作用しても、CGRPの分泌が抑制されるので、痛みが治まるのです。

 5-HT1B受容体が刺激されると、血管が収縮します。レイボーは三叉神経のセロトニン5-HT1F受容体にだけ作用する薬なので、周囲の血管には影響が出ない事が大きな特徴となります。血管が縮まらない分、副作用を気にする事なく、使う事ができるためです。

 トリプタンは血管内皮細胞にある5-HT1B受容体に作用することで、血管を収縮する作用を伴っていたため、心筋梗塞、虚血性心疾患、脳血管障害、一過性脳虚血性発作の既往、末梢血管障害、コントロールされていない高血圧症などの、血管がもともと細い人や、血圧が高い人には使う事ができませんでした。

 またトリプタンを飲んだ時に、人によっては、キューッと胸が苦しくなったり、息苦しくなったりする様な人が、時々おられます。レイボーはそういう人にも使える可能性が広がる薬となります。レイボー投与ができない患者様は、レイボーに対して過敏症の既往がある人のみとなっています。

 レイボーの剤形は、レイボー錠50mg:324.70円と、レイボー錠100mg:570.90円となります。3割負担ならこの値段の3割です。やはり少し高い薬にはなりますね! トリプタンは片頭痛早期に使わないと効きにくいとされていますが、レイボーは少し遅れて飲んでも効く様です。まだ蒼野自身に処方経験がないため、感触はわかりません。

 日本人であれば、通常1回100mgから使用する事が勧められています。1日200mgまで使えます。一旦頭痛が治まってまた再発した時に追加できます。トリプタンやNSAIDs、片頭痛予防薬との併用も、許可されています。飲むと2時間以内に有意に頭痛が改善するというデータがあります。

 副作用としては、重篤なものは少ないのですが、浮動性のめまいと眠気が多く報告されています。日本人に対する本剤の安全性について行われたLAIH 試験では、重篤な有害事象は起こりませんでした。しかし軽度のめまい等については、100mg錠の内服で70.7%に認められています。

 めまいと眠気の副作用を考慮し、内服後の運転はお勧めできません。ドライブシュミレーターを使った調査では、内服後90分の時点で、運動能力に影響が出ることが分かりました。8時間後には影響は認められませんでした。

  トリプタンも、レイボーも妊娠中は必要性があれば、使える薬となります。しかしトリプタンは授乳中には、授乳を内服後12~24時間は止める必要がありました。レイボーの場合は、有益性が上回る場合には、断乳時間を設ける事なく使用できる様です。

 併用注意としては、鎮静、精神安定、睡眠導入や、アルコールの併用はお勧めできません。頭痛予防薬であるプロプラノロールや三環系抗うつ剤のトリプタノールなどとの相性はあまり良く無いようですので、処方する時には気をつけようと思います。

 またSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリ ン再取り込み阻害剤)、MAO阻害剤(パーキンソン病治療薬)などの併用は、不安、混乱、イライラ、興奮などの精神症状と発熱や錐体外路症状を起こすセロトニン症候群が稀に(0.1%未満)起こる事があるため、注意が必要です。

 16か月間内服した試験でも、長期投与で、副作用が増強することはありませんでした。初めて使う際にも、条件は無いようですので、片頭痛で辛い思いをしている患者様には、お勧めしても良い薬のように思います。片頭痛の妻にも処方してみようかなと思っています。

 2021年は、新しい頭痛治療元年とも言われ、片頭痛予防の注射薬が三種類ほど、次々と発売になりました。いずれもCGRPに作用する薬です。二種類はCGRP抗体製剤注射を月に1回打てば、分泌されたCGRPにくっ付いて無効化するCGRP抗体が、片頭痛反応を止めるCGRP抗体製剤です。名前はエムガルティとアジョビといいます。

 もう一種類はCGRP受容体抗体製剤です。CGRPが作用する受容体にくっ付いて、受容体を無効化する薬です。名前はアイモビーグといいます。蒼野が処方した患者様は、頭痛回数がかなり減る人が多く、喜ばれています。しかしこれらは抗体製剤なので、薬価が1本14,000円します。3割負担でも、結構な額になります。

 今回のレイボーはそれに比べると、使いやすい薬かと思います。片頭痛は、日常生活を脅かす影響がとても強い疾患です。ひどい片頭痛発作がある人は、やはりいざという時の薬が必要だと思います。今後処方してみて、感触が良ければまた報告しますね!

 今日は片頭痛がある人に向けてのブログになってしまいました。片頭痛が辛い人は、一度は頭痛専門のDr.に相談してみると楽になるかもしれませんよ!

今までの片頭痛の記事をもう一度、下記に挙げておきますので、良ければご参照下さいね!

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