最近はウェアラブルデバイスで、運動を管理している人も増えてきている様ですね。蒼野はまだ持っていないので、スマホの歩数計が毎日の運動の指標になっています。ウェアラブルデバイスの発達によって、運動と病気や死亡率の関係が新たに判明してきている様です。今日はそんな最新研究のご紹介です。
イギリスの平均年齢61.8歳の25241人を、ウェアラブルデバイスデータで6.9年追跡し観察した研究が昨年の12月に報告されました。運動に限らず日常生活中の活動の中で、脈と息が上がる様な少し激しい活動(VILPA=Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity)に注目し、全死亡と、癌死、心血管病死との関係を解析しました1)。
年齢、性別、軽度および中程度の強度の身体活動、喫煙、アルコール、睡眠時間 35,36、果物と野菜の消費、教育、心血管疾患および癌の親の病歴、薬の使用などの、死亡の交絡因子の影響を除去しています。
その結果、期間中に852人の死亡者が発生しました。VILPAはどの死亡率とも逆相関しており、1日3回、1回につき1~2分程度の活動を行うと、全死因およびがんによる死亡リスクが38~40%低下することが判明しています。CVD 死亡リスクの 32%~34% の減少に関連していました。
これはけっこう衝撃的な結果ではないでしょうか? 40歳以上のほとんどの成人は激しい運動やスポーツを行なっていません。しかしウェアラブルデバイスで測定すると、日常生活にVILPAを行なっている人は9割くらいおられ、平均で1日8回45秒ずつで、合計6分程度は行なっていました。運動を行わない人でも、日常生活にVILPAがあれば、中強度運動をおこなっている人と同等の健康効果が出る可能性が高いのです。
1日3分意識して身体を動かすだけで、死亡率が下がるのです。研究の中での具体的なVILPAは短時間の最高の早歩きや、体重の5~10%の荷物を持った早歩き、7%の上り坂の早歩きなどです。エスカレーターやエレベーターを避けて階段を上がったり、キャスターがついていないバッグを抱えて歩けば良いだけなのです。
外出で車ばかり使うのはやめましょう。早足で公共機関を使いましょう。デスクワークやテレビ鑑賞でも、時間ごとに立ち上がり肩回しや股関節回し、踵上げや方足立ち、スクワットなどを行ってみましょう。拭き掃除やガーデニング、DIYの大工仕事などもVILPAにすることができます。
2020年に策定された、世界保健機関(WHO)の「運動・身体活動と座りがちな行動に関するWHOガイドライン」では、運動や身体活動を行い、体を活発に動かすことは、あらゆる年代の人にとって有益で、すべて種類の身体活動が勧められるとしています。コロナ禍になって特に座る時間は長くなっています。
どうしてこんな短時間の運動でも、死亡率が下がるのかについては、まだ結論は出ていません。蒼野の考えとしては、運動することによって筋肉から分泌されるマイオカインの影響で、すべての生活習慣病に関わる慢性炎症が抑えられる可能性が関与しているのだろうと思っています。
2021年の論文に、やはりウェアラブルデバイスを用いて、日頃の身体活動と内臓脂肪や肥満、脂肪肝の関係を見たものがあります。平均年齢56歳の228人にウェアラブルデバイスをつけて、座位時間、軽度の運動時間、中強度の運動時間などを測定し、体脂肪量、内臓脂肪量、脂肪肝との関係を調査しました2)。
座位時間は平均で7~11時間、中高強度身体活動(MVPA)は88±56 分でしたが、30分の座位時間をMVPAに変更するだけで、体脂肪量は1.3%有意に減少し、MRIで調べた内臓脂肪量は7.8cm2 減少。脂肪肝も0.89倍に変化しました。座り続けるのではなく、やはり時間毎に動くことの重要性が証明された形です。
運動と炎症性因子との関係についての論文もあります。長い座位時間、肥満、インスリン抵抗性などは、体内の慢性炎症と関連しており、生活習慣病の原因の一つになっています。2047人のアイルランド人の調査で、ウェアラブルデバイスを使って、7日間連続の身体活動を調べています。
こちらも座位時間30分を中強度身体活動に振り替えると、インスリン抵抗性を下げ、内臓脂肪を減らし炎症を抑えるアディポネクチンが上昇し、補体C3やIL-6、白血球などの炎症因子が有意に低下している事が判明しています3)。運動で炎症反応は低下するのです。
これらの論文の「中高強度身体活動(MVPA)」は、エネルギー消費量が安静時の3倍以上の運動のことです。これを日常生活の中で行うのがVILPAです。これなら運動嫌いの人でも、生活習慣に取り入れることが出来るのではないでしょうか?
1日3回、1分ずつ、脈が上がる様な運動をやってみましょう。もちろんまとめて5分ほど動いても構いません。可能な方は1日4~5分のHIIT(高強度インターバルトレーニング)でも同等の効果が確認されていますが、運動習慣のない人にはこちらの方がハードルが高いと思います。
生活習慣病で苦しまないために、そして健康長寿には、ちょっとでも動くことが大事なのだと思います。蒼野は今年の目標の一つとして、起床後のストレッチと軽い筋トレ、朝散歩、犬の散歩、夜の歯磨きの時の片足立ちを続けようと思っています。
今朝も少し遠くの青信号を渡るために、小走りをしてみた蒼野でした。
参考文献:
1)Association of wearable device-measured vigorous intermittent lifestyle physical activity with mortality. ; Nature Medicine volume 28, pages 2521–2529 (2022)
2)Objectively Measured Physical Activity and Body Fatness: Associations with Total Body Fat, Visceral Fat, and Liver. ; FatMed Sci Sports Exerc. 20211;53(11):2309-2317.
3)Does replacing sedentary behaviour with light or moderate to vigorous physical activity modulate inflammatory status in adults? Int J Behav Nutr Phys Act. 2017 Oct 11;14(1):138.
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