スーパセンチナリアン

2022/02/09

 日本は長寿国と言われて久しくなります。日本人男性の平均寿命は81.64歳、女性では87.74歳に達しています。今世紀の半ばには女性の平均寿命が90歳に到達すると予測されており、まさに人生90年が当たり前の時代を迎えようとしています。

 そこで問題になるのは健康寿命です。現時点で平均寿命より男性で約9年、女性で約12年短く、さらなる高齢化に備え、いかにして健康寿命を平均寿命に近づけるかが、大きな社会的課題となっています。

 その問題を解決するヒントになるのが長寿者の研究です。日本でも慶応大学医学部に 百寿総合研究センターが設立され、100歳以上の高齢者(百寿者)を調査することで、健康長寿となる要因の研究が進められています。

 百寿者は1950年には全国で100人程度でしたが、2009年には4万人超え。現在は5万4000人を超えています。男女比では、1対4で女性が圧倒的です。百寿者の急増は日本や欧米だけでなく、発展途上国にも共通した現象です。

 百寿者の多くは90歳半ばまで、日常生活が自立していますが、100歳時点で自立している人は2割程度にすぎません。その2割のグループは105歳まで到達する確率が高く、中には110歳まで長生きし、スーパーセンチナリアンになるになる人がいます。スーパーセンチナリアンの研究は世界的にもまだ少ないのです。

 東京都内に暮らす百寿者男女304人を調べた調査では、百寿者の97%は何らかの慢性疾患を持っていました。高血圧が最多で、白内障や骨折、心臓病などです。しかし糖尿病は6%と大変少なく、70代の糖尿病罹患率は20%程度ですので、糖尿病にならないことが、長生きの秘訣かもしれません。肥満の人は少なかったのですが、食欲不振の極端な痩せ型もいませんでした。

 2010年の調査では、百寿者の中でも105歳に到達する超百寿者は20人に一人で2,564人、さらに110歳以上のスーパーセンチナリアは78人でした。総人口150万人に1人の稀な存在です。

 研究では、百寿者684人(そのうち105歳以上407名)とその直系子孫と配偶者、および85-99歳の高齢者からなる計1,554名を対象として、血液中の生物学的指標(バイオマーカー)を測定し、健康長寿の指標(余命、日常生活自立度、認知機能、多病)との関連を分析しています。

 その結果、炎症とテロメア長という2つの領域が、百寿者とその家族において明らかに優れていました。炎症だけが85-99歳、100-104歳、105歳以上のすべての年齢群において有意に余命と関連しました。どの年代群においても、炎症マーカー値が低いグループは、炎症マーカー値が高いグループに比べ生活機能や認知機能も高かったのです。

 一般の高齢者では加齢に伴って、染色体の末端に位置するテロメア長は徐々に短縮しますが、百寿者や百寿者の直系子孫ではテロメア長がより長く保たれており、実際の年齢が80歳代でも、60歳代の平均値に匹敵する長さを有していることがわかりました。 

 医学の進歩により人類の寿命は延びていますが、健康寿命が伴わなければ、多病や要介護により生活の質が低下した期間が増大します。老化にともなう炎症を抑える薬が開発されれば、健康寿命が延伸する可能性があります。また薬だけではなく、炎症を防ぐ様々な生活習慣と、寿命との関連を解析することにより、新しい健康増進法が見つかることも期待されます。 

 心不全のバイオマーカーとして使われる、NT-proBNPにも明らかな差が出ました。心臓の機能が低下している人ほどNT-proBNPの数値が高くなる傾向にあり、一般には、正常値は55以下ですが、400以上だと治療が必要とされます。100歳から104歳までに亡くなった人の平均値は781、105歳から109歳までに亡くなった人の平均値は665でした。一方、110歳以上まで長生きできた人の平均値は217と顕著に低いことがわかりました。 

 100年生きると若い頃に比べて、心機能が低下することは避けられませんが、数値が低い人ほどより長生きする可能性が高いこと示されたのです。つまり心臓血管系の老化が遅く、血液の循環システムを維持できている人ほど長生きすることがわかりました。

 百寿者は、食欲が旺盛で、70代の摂取カロリーと同等でした。好き嫌いなく様々なものを食べますが、中でも肉好きが多いようです。もちろん魚好きもいるのですが、ステーキや焼肉、とんかつが大好きという人が多く、みなさん食事でタンパク質を十分に摂取していました。

 今回の研究では、100~104歳までに亡くなった人の100歳時点でのアルブミン数値は平均3.6でした。一方110歳以上まで生きた人は3.92もありました。しっかりタンパク質を摂ることは健康長寿に直結するということが示唆されました。

 年取ってアルブミンの数値が低くなると、単なる栄養不足だけでなく、生活の質の低下や死亡率の上昇をもたらす「フレイル」を招く怖れが高くなります。フレイルになると、各臓器の機能が低下して、心肺機能の低下や疲れやすさ、筋力低下で転倒して寝たきりになるリスクが増します。タンパク質をしっかり摂取していた百寿者たちは、フレイルの人が極めて少なかったのです。

 糖尿病や動脈硬化を防御する働きがあると注目されているのが「アディポネクチン」という物質です。脂肪細胞から分泌される善玉ホルモンの一種で、内臓肥満があると少なくなります。百寿者のアディポネクチン血中濃度は、若い年代の2倍あることがわかっています。アディポネクチンは百寿者の体内で病気を防御してくれている可能性が高いと言われています。

 長寿をつくる環境としては、沖縄をはじめ、百寿者が多い沖縄や熊本県や高知県など温暖な地が有利なようです。

 百寿者は、誠実性が高い性格の人が多いようです。決めたことはきっちりやり抜く意志の強さがあります。男性はマイペースでいろいろなものを集める凝り性タイプが多く、女性は外交的で面倒見が良く、新しいもの好き、という特徴がありました。

 一口に100歳といっても本当にさまざまな方がおられます。共通しているのは、百寿者には糖尿病と動脈硬化が少ないこと。また、防御ホルモンのアディポネクチンが多く分泌されていること。そして、食べる意欲が旺盛でよく食べ、興味を持ったことに対して前向きで熱心に取り組むことなどです。

 こうしてみてゆくと、百寿者になっても元気に生きるためには、40~50代のうちから、糖化や酸化を防いで、慢性炎症を遠ざけるように、食事や運動、睡眠をコントロールすることだと思います。メタボや糖尿病を防ぎ、動脈硬化を予防し、毎日頭も使い、筋肉をつけておくことが、健康長寿の必要条件のようです。

 当たり前のことですが、長寿の遺伝子+日々の健康管理が、スーパーセンチナリアン、健康長寿へ続く道なのでしょうね! 蒼野も介護が必要ない100歳を目指したいなと思っています。

参照資料: 慶應義塾大学医学部・百寿総合研究センター公式ホームページ

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