ホメオスタシスと体重

2022/05/04

 皆様はホメオスタシスという、身体のシステムをご存知でしょうか? これは外界がたえず変化していても、体内の状態を一定に維持できる能力のことです。この言葉自体「変化しない」「同一の状態」という意味です。これがあるおかげで、人類は生き残ってきたとも言える、必要不可欠な身体の働きです。

 ホメオスタシスを知っておくことは、健康長寿のためにとても重要です。知らず知らずに陥ってしまった、悪い生活習慣や考え方なども、身体や心がそれに慣れてしまうと、変えようと思ってもホメオスタシスが邪魔をすることが多いのです。今日はホメオスタシスについて、考えてみたいと思います。

 ホメオスタシスについて、教科書で出てくるのは体温です。脳の視床下部が体温のセットポイントを決めています。36.2度が自分の体温と決めていると、夏の暑い時や運動で体温が上がると、身体は発汗して気加熱で対応を下げようとします。あなたは服を脱いだり、クーラーのスイッチを入れたりします。外気温が40度を記録しても、体温は36.2度がキープされるのです。

 逆に寒い冬には、身体は震えて体温を上げようとします。あなたはダウンを着て、温かいスープを飲んだりします。体温が一定に保たれるように、身体は反応し、行動するようにできているということです。視床下部からの命令で、外気温が氷点下でも、36.2度がキープされるのです。

 視床下部からの命令は、自律神経に伝わって、身体に作用します。自律神経の働きが悪くなっていると、ホメオスタシスが保ちにくくなり、体調が悪くなります。外界の変化が大きいと、対応が難しくなるため、季節の変わり目などに気温変化が激しいと、体調が悪くなりやすいということですね。

 ホメオスタシスは、他にも様々なところで働いています。身体の中に細菌やウイルスが、増殖しない様にするとか、水分や塩分、血糖値などを一定に保つとか、怪我や病気を治す、飢餓の時に体重を維持する、など多岐にわたっています。

 ホメオスタシスのシステムは、自律神経系・内分泌系・免疫系という「3大システム」に支えられています。身体の中に、いつもと違うことが起こった時に、この3つを調節することで、ホメオスタシスを保つのです。

 自律神経は、呼吸・心拍・血圧・体温・発汗などをコントロールしています。内分泌は、血液中にホルモンを分泌することです。血糖値に対するインスリンや、ストレスに対するコルチゾール、性周期などに影響する女性ホルモンなど、分泌するホルモンの種類や量を調整することで、ホメオスタシスを維持しています。

 免疫系も大事ですね。異物や病原に対する防衛反応のことです。侵入してきた細菌、ウイルスや癌、異物などを免疫系がブロックしてくれていることで、ヒトは、病気や怪我を自分で治すことができるのです。

 良いことばかりのような、ホメオスタシスですが、ダイエットなどの、生活習慣の変化にも、強く反応するため、痩せるのも、太るのも難しかったり、短期的に痩せたりしても、その状態を保つのが難しかったりすることに、大きく関与しています。

 先日リバウンド率95%のお話を書きましたが、これには視床下部の体重のセットポイントが変えられていないことが関係しています。短期的に痩せても、体温が36.2度と決まっていたら、その温度に戻るように、体重が80kgとセットされていたら、80kgに戻りやすいのです。

 ダイエットの場合、現状維持の本能であるホメオスタシスは、1カ月で体重の5%以上落とすようなダイエットをしたときに最大限発動されます。急に痩せるのは、人類史上は飢餓状態で生命の危機です。少しでも体脂肪を温存する様に、身体は代謝を低下させます。少しカロリーが入れば、脂肪として溜め込みます。省エネモードになるため、痩せにくくなるのです。遭難した人が、わずかな食料で何日も生きれるのはこのおかげです。

 またこのために、ダイエットの途中で、体重が全く変わらなくなる停滞期に入ってしまうという現象も起きます。停滞期に入ったら、ダイエットのペースを落としましょう。食事を少しだけ多くすることが大事です。脳が「この摂取カロリーなら餓死しない」と判断すれば、ホメオスタシス効果が薄れ、減量期に再突入しやすくなります。

 停滞期に、ダイエットしても意味がないと思って、やめてしまうのは、最もやってはいけないことになります。代謝が落ちているので、ダイエット前よりも簡単に太ってしまい、セットポイントがさらに高くなり、痩せにくくなってしまうからです。生活習慣病がどんどん近づいてしまいます。

 停滞期の打破には、チートデーを設けることも良い方法になります。1日だけ、できれば1食だけ、食事制限することなく好きなものを食べると、脳が飢餓状態は無くなったと判断して、省エネモードを解除するからです。カロリーだけでなく、バランス良く、栄養豊富な食事にするのはポイントです。

 注意点としては、極端な暴飲暴食にならないよう、チートデイで食べる1日の総カロリーは「体重×40kcal」までにしておきましょう。また食べ過ぎた日をチートデーにしようと思うのもNGです。計画的に週1回くらいにしておかないと、食べ過ぎる日が増えやすくなり、ダイエット効果がなくなります。

 停滞期はダイエットで体重が5%減少した頃から始まり、2週間から1ヶ月、長い人では2ヶ月くらい続く人もいます。これは誰もが経験する、自然な現象で必ず終わりは来ます。この時期は代謝を上げるために、それ以上食べる量は減らさずに、筋トレを行いましょう。筋肉量の多い、臀部や大腿部を鍛えるのが効率的なので、スクワットがお勧めです。

 蒼野は実感はできませんが、女性の場合、排卵前後から生理前の期間に黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が多くなり、身体が水分や栄養をため込みやすくなります。身体がむくんだり、体重が減りにくくなったりするため、停滞しやすくなります。気分的にも元気がなくなる時期なので、無理はしない様にしましょう。しかし決して諦めないことがとても重要です。

 体重のセットポイントは、ゆっくり、運動も入れながら、無理なくダイエットしても、そう簡単には変わってくれない事は、知っておいてください。ダイエット後に体重が定着するまでには、3ヶ月~1年程度かかると言われています。その間体重がキープ出来れば、初めてダイエット成功と言えるのです。

 繰り返しますが、健康長寿のためのダイエットには、減量+キープが必要です。減量期は最低3ヶ月は必要ですので、最短でも6ヶ月、安全なのは1年3ヶ月以上かけて行う必要がある、大事業なのです。でも適正体重が、視床下部にセットできれば、健康維持がとても楽になります。

 皆様のリバウンドなしのダイエット成功に、少しでも役に立ちたい蒼野でした。

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