大切な股関節!

2022/08/14

 最近右の腰痛と股関節の痛みが少し気になる蒼野です。歩くときに痛くはないので、毎日1万歩以上は歩いているのですが、ゆっくりストレッチする時間が取れずにちょっとサボってしまったのが原因かもと思っています。今日は健康長寿のために、特に重要な関節である股関節について調べてみることにします。

 股関節は、立つ、座る、歩くなどの私たちの姿勢や動作を支える関節です。ヒトが二本足歩行を始めてから最も重要な役割を果たしている関節なのです。股関節に不具合が生じると、動きが悪くなったり、痛みが出たりすることで、運動するのが嫌になります。

 人生100年時代、健康長寿で過ごすためには、大きな負荷の掛かる股関節を、きちんとメンテナンスしてゆく必要があります。股関節には、両足で起立していると、体重の半分の重量が掛かります。片足立ちの時には、体重の75%、歩き出すと加速度も加わるので体重の4~5倍の負荷が掛かります。階段では体重の6~7倍、ジャンプするときには体重の12倍の負荷にもなるそうです。

 体重60kgとすれば、歩行では240~300kgの負荷がかかっているということです。長く生きていれば、それだけダメージを受けやすい関節なのです。ですから体重の影響も大きいです。10kg増えれば、歩行時の負荷は40~50kgも増してしまいます。

 股関節は周囲の筋肉、骨盤や腰椎と連動して動くため、股関節が傷んだり、周囲の筋肉や骨が衰えたりすると、腰痛を引き起こし、転倒もしやすくなります。また姿勢が悪くなりやすいです。高齢での転倒は、大腿骨頸部骨折につながる事があり、骨折後の寝たきりに繋がり、死亡の誘因となることも少なくないのです。

 大腿骨頸部骨折後、1年以内の死亡率は20~24%という報告があり1)、骨折前の歩行に戻らない確率も40%と高率です2)。救急外来にも、夜間に暗がりの中でトイレに行こうとして転倒した患者様が運ばれてくることは多いので、本当に注意が必要です。

 股関節を酷使していると、加齢と共に関節軟骨がすり減ります。すり減ってくると歩き始めなどの運動時痛が出始めます。初期の内は動かしていれば、関節液が循環して行き渡るため、痛みもなくなります。ちょうどギシギシ動きが悪い機械に、油を差した様な状態です。

 さらに軟骨が擦り減ると、股関節がスムーズに動かなくなり、安静時も痛みが出る様になります。変形性股関節症です。可動域が狭くなってくると、股関節は内転して固まってきます(内転拘縮)。悪い方の足が短くなるため、膝を曲げて立つ様になる(X脚)ことから、膝も足の関節も悪くなります。

 さらに腰を曲げてバランスを取る必要も出てくるため、背中や腰にも負担が掛かり、膝と腰を曲げて立つ高齢者でよく見かける姿勢になってゆくのです。歩行も歩幅が狭くなり、左右の足の間隔が広がってよちよち歩きのように変化します。この姿勢はさらに股関節への負荷を大きくしてしまいます。

 どんどん悪循環に陥ってしまいやすいことがお分かりかと思います。これを断ち切るには、運動療法しかありません。股関節や骨盤周囲の筋肉を、ほぐし、鍛えて、筋力を保ってゆくことが必要です。腹筋群や、お尻の中殿筋や大殿筋、太もも背面のハムストリングス、太もも前面の大腿四頭筋などが鍵を握っています。

 日常に支障が出るような強い痛みがあるうちは、保存療法から開始します。出来るだけ痛みを取りながら、関節機能の維持を図ります。そして股関節周囲の筋肉を強化してゆく運動療法を加えてゆきます。まずはストレッチが重要です。

 現代人は座っている時間がとても長くなっています。腰を丸めた姿勢になりやすく、骨盤が後傾するため、太ももの裏側のハムストリングスが短くなっている人がとても多いのです。そのまま硬くなると、股関節が動きにくくなります。これが腰痛の原因にもなりやすいのです。

 前屈がその指標となります。前屈で指先が床に着けば合格です。床から15cm未満は要注意、15cm以上床から距離がある様だと、股関節悪化の悪循環に陥りやすくなります。毎日の前屈がとても重要なのです。蒼野もこのところ少しサボっていたので、気がつくと前屈がキツくなっていました。毎日必要ですので、入浴後などに習慣にするのがベストです。

 前屈以外に毎日行ってほしいストレッチが二つあります。一つ目はイチロー選手がよく行っていた、開脚して中腰の姿勢で膝の内側を押す、肩入れ股関節ストレッチです。ハムストリングや大殿筋、中殿筋、脊柱起立筋や太ももの内転筋などがほぐれます。左右各30秒ずつ2回を1セットとして、1日に3セット程度行いましょう。

 もう一つが大腿四頭筋と股関節のストレッチです。横向きに寝て膝を曲げ、上の足の足首を持って、背中側に引っ張り、太ももの前と脚の付け根を伸ばします。片側2回を1セットとして、左右とも1日に3セット程度行いましょう。

 最も重要な筋肉はお尻の横側の中殿筋です。横向きの姿勢で寝た状態から、上側の足を伸ばしたまま、股関節で持ち上げるトレーニングが効果的です(今日の写真)。ゆっくり行うと効果倍増です。呼吸に合わせて、3秒ずつかけて持ち上げて下ろします。片側4~5回を1セットとして、左右とも1日3~4セットを目標にしましょう。

 うつ伏せでお尻を意識して片足ずつゆっくりと上げる、大殿筋の筋トレや、仰向けで息を吐きながら腹部に力を入れる腹筋の筋トレも行えば完璧です。もしバランスボールをお持ちなら、バランスボールに座ってゆっくりと腰で円を描く様に回す運動を行えば、股関節を保護することが出来ます。

 自分の股関節が悪くなる兆候としては、動き始めの痛み、左右の足の長さが違う、姿勢が悪い、歩き方がぎこちない。歩行時に足の出方が違う、歩行時に肩が上下に揺れるなどです。一つでもあると、変形性股関節症のリスクがある状態です。悪循環に陥ってどうにもならなくなる前に、是非、ストレッチと筋トレを生活に入れ込みましょう。

 股関節に負担をかけないためには、減量は重要です。体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)が体格指数(BMI)です。65歳未満ならば22、65歳以上であれば22~25を目標にしましょう。痩せるためにも、筋量の維持は必要です。毎日のストレッチと、週2~3回の筋トレも欠かさず入れてゆきましょう。

 食事は野菜を中心に、タンパク質は自分の掌サイズの、肉や卵、魚、豆腐などを毎食食べる様、心がけましょう。体重コントロールのためには、茶碗半分くらいの主食が望ましいです。ベジファースト、カーボラストの食べ方を心がけましょう。

 毎日動かしていないとすぐに身体が硬くなる蒼野です。パソコンに向かう時間も多いのですが、25分集中したら、5分休む(ポモドーロテクニック)を使って、合間の5分にストレッチやお手軽な筋トレをちょこちょこやって行こうと、自分に言い聞かせているところです。

参考文献: 
1)Mortality, disability, and nursing home use for persons with and without hip fracture: a population-based study: J Am Geriatr Soc . 2002 Oct;50(10):1644-50.

2)Predictors of functional recovery one year following hospital discharge for hip fracture: a prospective study: J Gerontol . 1990 May;45(3):M101-7

参照ページ:  健康長寿の要! 「股関節」を鍛えて生涯現役の体をつくろう
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/22/012300005/012400001/?i_cid=nbpgdy_sied_paleaf_autom

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