朝から食べる時間栄養学!

2022/05/12

 今日は、時間栄養学、時間運動学について書きたいと思います。同じものを、同じ量食べた時に、太りにくくて、筋肉がついた方がいいですよね。摂取や運動のタイミングで、その健康効果が随分異なることが、最近分かってきました。それが、時間栄養学、時間運動学なのです。

 まず時間栄養学からです。どうして食べるタイミングで、身体に対しての効果が違うのか、というのは、昨日書いた体内時計が大きく影響しています。時間栄養学には、体内時計の調節という面と、摂取時間による身体の反応の違いという面があります。

 言い換えれば、食べるもの、食べる時間によって、体内時計、特に末梢の副時計がリセットされるという現象と、食べる時間によって、栄養の消化、吸収、代謝、排泄の反応が異なるという現象について、研究が進んできているのです。

 まず体内時計のリセットという点についてです。昨日、体内時計のリセットには、光と食べ物の影響があると説明しました。中枢の主時計には光が作用し、末梢の副時計には、食べ物が作用します。これらはそれぞれ独立しており、主時計と副時計が一致していると、ヒトは最も健康な状態で過ごすことができます。

 我々は、朝日が出て、夕日が沈む時間はコントロールできません。食べる時間を変えることで、副時計の針を動かして、光でセットされる主時計に合わせてゆくことが重要です。これには8~12時間、絶食した後の食事が最も影響します。普通にいえば朝食ですよね。朝何も食べないと、リセットができません。

 また夜遅く食べる習慣があると、絶食時間が短いためリセットが利かなくなります。朝食を7時に食べるのであれば、夜7時までに夕食を済ませるのが理想的です。夜食を食べると、末梢の副時計は遅れる方向に動くため、主時計とのずれがひどくなり、体調が悪くなります。

 睡眠相後退症候群という病気があります。体内時計が半日遅れてしまい、午前中はまともに動けません。自律神経がまだ未熟な、小児~思春期に多いのですが、朝頭痛や眠気で起きることができず、学校に行けません。昼過ぎになるとけろっと元気になるため、怠けているのかと思われてしまいます。フクロウ頭痛とも言います。蒼野も何人も診せてもらいました。

 夜には画面を見ないようにして、早めにご飯を食べ、朝早起きし、朝日を浴びて散歩する。その後、バラエティ豊かな和食を、よく噛んで食べることを指導します。苓桂朮甘湯という漢方薬を飲みながら、生活改善を地道に数か月続けることが出来れば、良くなります。でもなかなか生活が変えられない子も多いです。

 朝食で、体内時計のリセット効果が高いものは、糖質、タンパク質、魚油のDHA,EPA、カフェイン、ポリフェノール、しじみに含まれているオルニチンなどがあげられます。朝のフルーツは良いですね。しじみ汁も最高です。一つだけでなく、これらをバランスよく食べると特に有効です。焼き魚のついた和食の朝ごはんは最高だと思います。

 漢方薬の成分も、腎臓に効く猪苓は、腎臓の副時計を、肝臓に効く柴胡は肝臓の副時計をリセットしてくれますので、これらも朝飲むと良いです。また食事量も、夕食より朝食が多い方が、リセット効果が高いです。蒼野も含めて、夕食が多い人が多いと思うので、トライしてみる価値はありそうです。

 次に、身体に対する食事時間の影響についてです。皆様何となくご存じとは思いますが、カロリーが同じであれば、朝、食べる方が太りにくいです。朝は食事誘発性熱産生が最も高く、食べるだけで消費エネルギーが高くなります。消化管での栄養の吸収率も、朝が最も良いことがわかっています。

 例えば、ごまのセサミンとか、トマトのリコピンも最初の食事が、一番吸収率が高いです。水様性食物繊維のイヌリンの効果も高くなり、朝食べる方が、腸内細菌の変化が大きくなり、痩せやすくなります。逆に朝欠食すると、デブ菌が増え、太りやすくなるのです。

 朝の欠食+夜食は、インスリン感受性も低下し、糖尿病リスクが高くなります。レプチン抵抗性も増加して食欲が増し、嗜好もお菓子や油脂を好む傾向が強くなり、メタボリックシンドロームのリスクが増加します。

 実行は難しいかもしれませんが、16時までに夕食を終えて、朝まで食べない生活が出来れば、肥満が解消し、糖尿病が改善し、血圧が下がり、虚血性心疾患になりにくくなることも研究で判明しました。また記憶力が良くなるというデータもあります。

 また朝、タンパク質を、夕食と同じくらい摂ると、筋肉が増加しやすくなります。筋トレは午後の方が、筋肥大効果が大きいことが分かっています。筋トレ後30分が筋タンパク合成のピークなので、筋トレの前後に特にBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)を摂るのが効果的です。

 以上から考えると、蒼野が目指すべき、理想の健康生活は、朝起きたら太陽を浴びて速足で散歩し、8時に和食中心で、魚中心に、たっぷりのタンパク質と野菜と果物を摂り、昼から筋トレして、午後4時までに、糖質少な目で、軽めの食事を摂り、朝まで16時間断食して、アンチエイジングを図る、という生活なのかなと考えたりします。

 普通の勤務の日には難しいし、妻に手の込んだ朝食の用意を頼むのは、かなりハードルが高いので、無茶っぽい計画かもしれません。でも食事や運動も、量や種類だけではなく、時間を考えるのは重要な要素です。工夫しながら少しずつ進化してゆければいいなと思っています。

 さまざまな食材を、手軽に食べれるという点では、イチロー選手のように、朝からカレーを食べるのも良いかもしれませんね。一晩寝かされたカレーはとても美味しい。野菜いっぱいのベジタブルカレーや、豆カレー、魚介のカレーも良いですね。蒼野はカレー好きなので、毎朝でも大丈夫です。カプサイシンは、体内時計のリセット効果も高いので一石二鳥です。

 時間栄養学や時間運動学は、まだまだ新しい学問です。メタボリックの予防や、高齢でのフレイルの予防にも、有効に使ってゆけるものだと思います。確かに元気で長寿のお年寄りは、朝からステーキを食べる人がいたり、しっかり、さまざまな種類のおかずを食べたりしているのを、テレビで、しばしば目にします。

 食べ物は個人個人の好みや、暮らし方もあるため、正解というものはないのかも知れません。しかし、内容を変えずに、食べる時間だけ変えるのは、案外取り組みやすいかもしれませんよ! 皆様も食べる時間や運動する時間を、少しだけ意識してみませんか?

 書いていて、旅館で食べるような、美味しい朝ごはんが食べたくなった蒼野でした。

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