汗のデトックス効果

2021/12/16

 我々はサウナに入ったり、ホットヨガをしたり、運動して汗びっしょりになったりすると、気分が良くなるので、老廃物、毒素が汗で排出され、デトックス出来てよかった、と思ってしまいます。それは本当のことなのでしょうか? 今日は汗によるデトックスの話を書いてみようと思います。

 まず汗の成分から、考えてみましょう。汗の含有成分は、主に塩分やミネラル、代謝による老廃物で、これに加えて、体内毒素である、ごく微量の重金属や薬物、BPA(ビスフェノールA)、農薬なども含まれます。これらの毒素は基本的には、脂肪に溶ける成分ですので、大部分が水分である汗には溶けにくいものです。

 毒素には体内の代謝により出てくる老廃物と、体外から入ってきた有害金属などがあります。体内由来の毒素の排出は、主に腎臓が担い、体外由来の有害金属の排出も、便が約75%、尿が約20%で、汗は約3%程度のため、汗の中には、毒素はほとんど含まれていないのです。

 健康や美容のトレンドになっている。遠赤外線サウナからホットヨガまで、汗びっしょりになるアクティビティはリラクゼーション効果があるだけでなく、体の毒素を排出して健康を保つと宣伝されており、蒼野もそれを信じていました。

 しかし、普通の人が、例えば1日45分間の激しい運動を行ったとしても、1日の発汗量はせいぜい2リットルほどです。そして、それだけの汗をかいても、毒素は0.1ナノグラム以下しか含まれていません。言い換えると、普段の食生活で体内に取り込む毒素のうち、汗で出る量は0.02%に過ぎないのです。さらに運動を激しくしたとしても0.04%程度までしか増えません。つまり、どんなに大量の汗をかいたとしても、その日体内に摂取した汚染物質の1%すら排出できないということになります。

 重金属の排出については、主となるものは便です。汗と尿を比較した場合、赤外線サウナで10人、蒸しサウナで7人、残りは運動で汗をかいた合計20人について行った重金属に対するデトックスの研究では、カドミウムが尿の約11倍、ニッケルが約14倍、鉛が約16倍、ビスマスが約18.5倍、アルミが約5.5倍、尿からよりも、汗からの排泄量が上回っていました。

 汗中の重金属の排泄では、2012年の調査で24の研究がありました。カドミウムは尿より汗からの方が排泄されており、鉛や水銀も比較的多い割合で汗からも排泄されていました。日常的に、頻回に汗をかく機会を増やしてゆけば、累積排出効果で、汗からのデトックスは有益なものになる可能性がありそうです。

 汗の元々の大きな作用は、体温調節です。排泄量から言えば、デトックスについては、オマケの作用なのかもしれませんね。発汗は哺乳類の多くに見られますが、冷却のために大量に汗をかくのは、ヒトやウマなどの限られた動物のみなのです。

 この発汗能力の高さが、ヒトがマラソンのような長距離走を行える、一つの理由でもあります。アフリカの狩猟民族が、発汗とエンドルフィンを利用し、獲物が体温上昇で走れなくなるまで追いかけて狩ることは、過去ブログの『ランナーズハイ』のところでも書きました。

 今は冬ですので、熱中症の心配は少ないですが、体温が上がった際に、必要最小限の量だけかき、体温調整をしてくれる発汗力を維持しておくことは、とても重要です。いつも屋内にいて、エアコンに体温調節を任せていると、汗腺の働きが鈍ってしまいます。元気に来夏を過ごすためにも、発汗トレーニングは、常に意識しておくべきです。

 いい汗をかく運動習慣を取り入れ、15分間でじんわり汗をかく程度の温度の湯船に、毎日入りましょう。体を内側から温めるには、スクワットしてから入浴すると、より発汗量が増え、運動も発汗力もクリアでき、忙しい日々を乗り切る体力もついていきます。

 サウナも、1回のデトックス効果に関しては、微々たるものではありますが、血流が良くなることでの美肌効果、疲労回復効果、水風呂とサウナを繰り返すことによる、アンチエイジング効果などがあり、取り入れてゆきたい健康法です。

 疲労回復効果の中でも、気持ちが良いという心理的効果で、エンドルフィンやダイノルイフィンといった脳内麻薬が分泌され、ストレス軽減、リラックス効果なども相まって、脳疲労を改善してくれる効果は、特筆すべき効果です。注意点としては、15分毎に、できれば塩分や少しの糖分が入った水を、500mlずつ飲む必要がありますので、すぐに飲める水分を用意して入りましょう。

 サウナには、ダイエット効果はありません。出てきた汗の分、体重が減りますが、痩せてはいないのでご注意を。またお酒を抜くために入る人がいますが、これは危険ですのでやめてください。二日酔いで、体内に出てきているアセトアルデヒドは、汗ではほとんど排出されません。先日、飲酒後にサウナで気を失って転倒し、おでこに裂傷ができた人を縫うことがありましたので、皆様も十分にご注意を!

 毎日の15分の湯船と、2週間に1回の、スーパー温泉でのサウナが楽しみな蒼野でした。

参考書籍:  医師がすすめる少食ライフ     石黒 成治