疲労の科学!

2022/08/23

 昨日乳酸が疲労物質ではないと言う話を書いていて、それなら何が疲労を起こすのかと言うことが疑問に残ったので、調べてみることにしました。今日は疲労のメカニズムと対処法について書いてみます。

 筋疲労とは、筋肉の使いすぎによって筋肉が疲労し、必要な力を継続して発揮することができなくなる現象です。普通は一時的なもので、十分な休養と栄養によって回復します。頑張りすぎて休養と栄養が不十分だと、以前書いた「オーバートレーニング症候群」のリスクが高くなりますので要注意です。

 筋疲労の原因は、いまだに完全には解明されていないようです。昨日書いたように乳酸が原因という疑いは晴れたようです。乳酸とともに作られる水素イオンの作用によって筋肉のpHが酸性に傾くことや、血流が悪くなり必要な栄養分が筋肉に届かなくなること、筋グリコーゲンが枯渇すること、そしてフリーラジカルが増加することなどが原因として挙げられています。

 強い筋収縮が起こると、筋肉へ酸素や栄養を運ぶ毛細血管が圧迫され、血流量が低下します。酸素や血糖、肝臓からのグリコーゲン供給などが減少すると、筋肉は、筋肉内のグリコーゲンを解糖系でエネルギーにするしかなくなります。筋グリコーゲンが枯渇すると、ATPが作れなくなるため、筋疲労が起こるのです。

 また筋細胞では、収縮時にCa2+は筋小胞体から放出され、アクチン・ミオシンフィラメント滑走時のATP 分解を促しています。放出されたCa2+は再取り込みされることによって次の収縮に備える事ができるのですが、ATPが枯渇すると、Ca2+の再取り込み機能が低下するため、次の収縮が起きにくくなるのです。

 筋収縮に伴って、ミトコンドリアが活発に働いてATPを作り出すと、それに伴って大量の活性酸素が発生します。体内の抗酸化物質がちゃんと除去してくれている場合には問題ないのですが、それを超えると、筋肉は酸化され、筋肉内のPHが下がり(酸性に傾き)、うまく収縮できなくなるのです。

 この酸化ストレスが中枢に影響すると疲労感を感じます。これ以上動き続けない方が良いという警報の一つです。これはヒトがホメオスタシスを保つのに重要な役割を果たしています。運動を続けるためには、様々な身体の機関や組織を調整する必要が有ります。これを司っているのが自律神経です。

 身体にかかる負荷に合わせて呼吸や、心拍、体温などの調整は随時必要で、キツイ運動であればあるほど、自律神経への負荷も大きくなります。運動でミトコンドリアがエネルギーを生み出す時には、必ず活性酸素も発生します。元々体内には抗酸化酵素が備わっていますが、発生する活性酸素が多すぎると、自律神経細胞も筋肉同様、活性酸素に攻撃され、これが中枢の疲労に繋がります。

 過労状態が続けば、自律神経の働きも傷害され、防衛反応としてコルチゾールなどのステロイドホルモンが分泌され続けます。これは動脈硬化や高血糖、肥満などの原因となり生活習慣病、メタボリックシンドロームの原因になってゆく可能性があるのです。免疫も下がるため、感染症にもかかりやすく、癌のリスクも上昇します。

 筋肉や身体の疲労だけではなく、心理的な疲れも同様に、自律神経の働きに影響します。スポーツの後に身体の疲れはあっても、気持ちはすっきりと心地よさを感じたりしますが、長時間の会議で緊張したり、怒られたりすると、ぐったりと疲れてしまいますよね!

 ストレス処理は、前頭葉にある「前頭前野」と呼ばれる場所で行われます。その処理能力はその日の体調やコンディションに影響されるのです。これはストレスの受け止め方によっても変わるため、真正面からストレスに向かい合ってぶつかるよりも、自分でコントロールできないことに関しては、「関係ない」「仕方ない」「どうしようもない」と受け流す事がおすすめです。

 前頭前野でストレス刺激が沢山処理されると、脳の酸素消費量が増大します。その結果、大量の活性酸素が産生されてしまいます。それが脳や自律神経を機能不全に陥らせて、疲れやだるさを感じたり、カラダにも異常が生じるのです。前頭前野が疲れてしまうと、作業効率ややる気が低下し良眠できなくなり、さらにストレスが増悪します。

 合わせて大脳辺縁系にストレス負荷が伝わることで、自律神経が失調し、ホルモン分泌が乱れます。その結果、胃腸の不良、肩こり、頭痛、注意力低下、抑うつ感などが症状として現れます。また酸化ストレスで脳内のセロトニンが枯渇し、うつ状態になりやすくなります。酸化ストレスに反応して分泌されるインターフェロンも、セロトニンの分泌を阻害するのです。

 身体の面からも、心の面からも、悪循環が起こりやすく、過労死はこうやって起こるのだなあと、蒼野も改めて認識しました。疲労は長く残さないように、その都度回復することが、何より大事なのだと思います。

  さて対処法です。筋肉疲労に対しては、局所血流の再開や、エネルギー不足の解消が解決法となります。筋肉痛が残るほど筋の損傷や熱感を伴うような炎症がある場合、プロ野球の投手のように、一旦冷やすことが回復につながります。

 その後は当たり前ですが、ストレッチやマッサージ、入浴、交代浴(温水と冷水に交互につける)などで筋肉への局所血流を増やすようにしましょう。十分な休養と栄養が必要です。運動時に失われたグリコーゲンを補給するための適度な炭水化物や糖質、ビタミンB群とビタミンCを多く補給すると疲労回復が早まると言われています。バナナは良い疲労回復アイテムです。

 水素水も抗酸化作用があり、水素に遅発性筋痛の軽減効果があるようです。運動中に飲めば、運動時の筋グリコーゲンの消費を抑えて長持ちさせてくれる効果があるようなので、疲れにくくなることが実験的にも判明しています。水素水に入浴しても経皮的に水素が取り込まれるため、同様の効果が期待できます。

 疲れた時には7.5時間ほどの睡眠が必要です。脳の疲れの場合には、1時間に1回くらいは、体操したり、ストレッチしたり、歩いたりすると、自律神経が整いやすく、疲れにくくなります。食材としては鶏の胸肉に含まれるイミダゾールジペプチドが、酸化ストレスも軽減するため注目されています。日頃から野菜や果物などの抗酸化物質の摂取を増やしておく事は言うまでもありません。

 まとめますと、疲労は筋肉などの抹消だけの問題ではなく、必ず中枢にも影響することがわかりました。疲れの鍵を握るのが活性酸素で、しっかり対策を立てる事が重要です。治りにくい疲れは、ストレスからの中枢性の疲れであり、受け止め方を工夫しながら、悪循環に陥らないことが重要です。

 最近の蒼野の疲れはやはり座り過ぎによるものが多いようです。こまめな運動、ストレッチを心がけて、疲れにくい生活習慣を手に入れたいと思いました。

参照ページ:  健康長寿ネット    疲労とは?疲労の原因と回復方法
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/undou-shougai/hirou-busshitsu.html

過去ブログ:

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