秋の胃腸疲労!

2022/09/05

 日中はまだまだ30度を超える日が多いですが、朝晩が少し過ごしやすくなってきましたね。我が家の愛犬も、涼しい中の散歩となると、ますます元気に走るため、長時間の散歩で、少し疲れが溜まってきている蒼野です。今日は秋の疲労について考えてみたいと思います。

 そもそも疲労や倦怠感という感覚は、我々にとって、発熱、痛みとともに、体の恒常性(ホメオスタシス)に対するアラーム機構だといわれています。「休みを取りなさい」というサインなのです。しかし現代人は、疲れを軽く考えて、スルーしてしまう人も多いのです。しっかり休めば回復する疲れも、持ち越しながら溜めてしまうと、思わぬ病気につながる可能性があります。

 特に涼しくなってくる今からの季節は、夏の疲れが出てきやすい季節です。暑い屋外と冷房のきいた室内との寒暖差にさらされ、冷たい食べ物の摂取も多いことから、自律神経は酷使されてきています。それが台風などの気圧の変動や、朝夕の急な冷え込みなどにさらされると、さらに自律神経のバランスは不安定になってしまいます。

 症状としては、身体の怠さ、疲れやすさ、食欲低下、胃のもたれ、胸焼け、頭痛や肩こり、めまい、立ちくらみ、眠気などが出てくるのです。特に内臓疲労、胃腸の疲れには注意が必要です。色々なものが美味しくなる食欲の秋に食べ過ぎることで追い打ちをかけてしまうのです。

 朝食べなくなってから、蒼野は滅多に胃腸の不調は感じなくなりました。胃腸を休める時間が有ることが大事なようです。胃のムカムカ、痛み、食欲不振や嘔気、頻回のゲップなどが、胃の機能低下のサインです。胃腸の消化機能が低下し、栄養の吸収が悪くなると、便秘や下痢の症状が出てきてエネルギーが不足し、身体全体の疲れにつながります。

 こんな時は生活を振り返って、胃腸の負担を軽減することが重要です。腹八分目以上食べている。食事時間や内容が不規則。アルコール、カフェイン、甘い飲み物、激辛料理、高脂肪食などが多い。風邪薬や痛み止め(NSAIDs)の常用。ストレスが多いと感じる生活などに注意しましょう。

 まず食べ過ぎから注意しましょう。本来の日本人の持っている消化酵素は、高タンパク、高脂質の欧米化した食生活に対応が難しいことが多いのです。調子が良い時には問題なくても、内臓が疲れた時には大きな負担となります。たくさんの消化物を代謝する際には、ビタミン・ミネラルもますます消費され不足気味になります。

 対応策としては、「まごはやさしい」の食材を使った和食に戻し、量も9割程度に落とすと、疲れが抜けてきます。深夜の食事は胃や腸が疲弊しますので、寝る3時間前までには済ませる様にしましょう。もちろんアルコールをはじめとする刺激物の摂取、高脂肪食は控えましょう。ながら食い、早食いなどは控え、よく噛んで、味わって食べることで、食べ過ぎも防げます。

 身体の疲れは、細胞の修復の遅延です。ビタミンやミネラル、たんぱく質を分解する酵素などが不可欠です。しかし通常それらは消化吸収に、優先的に使われます。蒼野も実感しているように、時々プチ断食して、消化管を休めることは、普通の疲労と同様、とても大切なことです。習慣だからといってお腹が空いていないのに食べるのではなく、空腹を感じて食べることが理想です。

 全く食べないのではなく、消化に費やされていたビタミン・ミネラルや酵素を修復に回せるように、果物や素材から作った野菜ジュースなどで補給するのも良い方法です。痛み止めの成分は胃の負担になります。痛みを止めるだけの対症療法であり、根本治療ではありません。どんな痛みかにもよりますが、緊急で耐えられない時だけにしておき、痛みの原因を考えて対処するのが大切です。

 胃腸は自律神経の命令で、食べ物が入ってきた時には、対応して膨らんだり、胃酸などの消化酵素を分泌したり、蠕動運動を起こしたりします。ストレスは自律神経に大きく影響します。消化が進まず、胃がもたれたり、痛みが出たり、お腹が張ったりします。交感神経が亢進した状態では、消化活動は起きにくくなるのです。

 仕事などのストレスの後には、少し身体を動かしたり、湯船に浸かったり、気持ちが良くなることをして、交感神経を緩めましょう。消化管は副交感神経が優位な状態で、機能が高まるため、気持ちを落ち着けてから食事に臨むことを意識しましょう。

 自律神経のコントロールには、6時間以上の睡眠、夜間の音楽やアロマ、マインドフルネスなどのリラックス、ストレッチなどを試してゆきましょう。楽しいことが大切ですので、趣味や、ちょっとした工夫で、生活の中で遊びを見つけてゆきましょう。

 蒼野くらいの年齢になると、カルビの食べ放題などはキツイですね! 若い頃は大丈夫だったのに、脂ものを食べ過ぎると胃のもたれを感じます。脂肪を消化する為には、膵液と胆汁の分泌が必要なのですが、加齢でこれが減ってきます。十二指腸以降の消化が遅くなるため、胃の中に残っている脂ものが、一気に腸に流れ込まない様、胃の動きにブレーキをかける反応が起こるので、それ以上は食べれなくなるのです。

 胃の不調の慢性化は防ぎたいですよね! 長期にわたって負担をかけ続ける原因としては、暴飲暴食や過度の飲酒・喫煙、ピロリ菌の感染、加齢による胃の老化などが考えられます。内視鏡で覗いてみると、慢性胃炎は、胃粘膜の表面に軽い炎症がある「表層性胃炎」、炎症によって胃粘膜の表面がただれる「びらん性胃炎」、胃粘膜そのものが委縮して薄くなる「萎縮性胃炎」、胃の粘膜の表面が分厚くなる「肥厚性胃炎」に分類されます。

 放置すると胃がんのリスクにもなる萎縮性胃炎の一番の原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染と言われています。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。日本では胃がんの人の99%にピロリ菌感染が関わっているといわれています。また現在60歳以上の人では5割以上が感染していると言われています。

 実は蒼野は胃カメラを飲んだことがありません。胃透視は毎年していて、全く胃の不調はないので大丈夫だと信じているのですが、一度診てもらった方が良いかも知れません。もしピロリ感染が疑われれば、2種の抗菌薬とPPI(プロトンポンプ阻害薬)と呼ばれる胃薬を併用しての除菌治療を勧められることになります。

 しかし、最近では薬剤耐性菌が増えてきていることによる3割程度の除菌の失敗や、除菌後の再感染例が少なく無いという報告もあります。日本人のデータはまだはっきりしていないのですが、ピロリ感染の多い日本人の全員に、抗生剤を使用すると、どれだけの薬剤耐性ピロリ菌が出てくるのか恐ろしいものがあります。

 ピロリ菌陽性で自覚症状がない場合、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を発症するのは生涯10%程度、胃がんは約3%です。また除菌後に逆流性食道炎が起こるリスクが上がる場合があるそうです。蒼野の私見としては、症状がない場合、胃カメラで胃ガンのチェックをしていれば、腸内細菌叢を痛めてしまう除菌治療は行わなくても良いように感じました。

 豆知識として、原因不明の「慢性蕁麻疹」や、顔が赤らみ、毛細血管の拡張やニキビに似た発疹(丘疹)が生じる「酒さ」にピロリ菌感染が関与している可能性があるという論文がある様です1)。治らずに困っている時には、ピロリ菌の除菌を試す価値があるかも知れませんね!

 胃腸の疲れを意識しながら、食欲の秋を楽しみたいなあと思う蒼野でした!

参考文献:1)Effects of Helicobacter pylori treatment on rosacea: A single-arm clinical trial study: The Journal of Dermatology.  https://doi.org/10.1111/1346-8138.13878

参考書籍: 医師が教える内臓疲労回復    松尾 伊津香  中田航太郎

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