耳鳴り

2022/03/13

 蒼野の外来で結構困るのが、耳鳴りの患者様です。お年寄りだったりすると、治る確率が低く(2~3割くらい?)、対処法などの説明にも時間がかかり、また理解してもらうことも難しかったりするので、忙しい時などには、対応が難しくなってしまうこともあるからです。今日は耳鳴りについて深掘りしてみたいと思います。

 「静かになって、寝ようと思ったら、耳鳴りがうるさくって眠れないんですよ! 何とかしてください。」と言われます。耳鼻科は受診済み、「加齢によるものだから慣れるしかないです」などと言われている場合も結構あります。耳鳴りの原因は一つではなく、すごく効く薬もないため、耳鳴り難民になっていたり、諦めていたりする患者様は多いのです。

 高い音もあれば、低い音もあります。音の大きさや頻度も様々です。軽症の人では、小さな音がストレスや疲れがたまった時のみに聞こえたり、寝る前の静かな場所でだけ起きたりします。重症の場合は、他の音が聞こえにくく、会話が難しい場合もあります。

 耳鳴りを気にするあまり、鬱になったり、不安症や不眠症になったりします。耳鳴りがストレスになって、自律神経が乱れ、肩こりやめまい、立ちくらみ、頭痛などを併発する場合もあります。

 耳鳴りは、自分の回りでしているはずの音がないにもかかわらず、様々な音が聞こえる症状がほとんどです。中には腫瘍や血管、筋肉の動きなどで生じる音が聞こえている場合もあります。自覚的耳鳴と他覚的耳鳴です。

 自覚的耳鳴は,聴覚皮質の異常な神経活動により引き起こされるものです。平たい言葉で言えば、聞こえにくくなったのを、脳が補填しようとして、聴覚野が過敏になり、聞こえる感度を上げてしまうために、聞こえないはずの音を、脳が作り出してしまうことで生じます。

 音を感じるのは蝸牛の有毛細胞ですが、加齢によって、手前側から数が減少したり、抜け落ちたりして、高い音が聞こえにくくなってきます。60代前半で5~10人に1人、後半で3人に1人、75歳以上で7割以上と報告されています。いわゆる加齢性難聴です。

 脳が高い音を作り出すため、キーンという難聴が特徴的です。初期であれば、補聴器で難聴の治療を行う事で改善することがあります。また耳鳴りに近い音を出す、サウンドジェネレーター機能がある補聴器で、耳鳴りの8割~9割の音量を補聴器から流して聞くことで、耳鳴りがあっても気にならないようにする耳鳴り順応療法(TRT)という治療法があるのです。

 蒼野は耳鼻科医ではないため、聴こえの検査は出来ません。キーンと言う中高齢者の耳鳴りには、上記の説明をしたり、寝るときだけであれば、スマホのアプリなどで、川の流れの音や滝の音などを流して、耳鳴りが気にならなくなるようにすることをお勧めします。音響療法と言います。蒼野は耳鳴りはありませんが、Sleep soundsというアプリを使っています。気持ちよく眠れているのでお勧めです。

 若い人の耳鳴りは、ヘッドホン、イヤホンの使い過ぎなどによる、騒音性難聴が多いようです。大きな音で有毛細胞が傷害される為です。やはりキーンという高音の耳鳴りになります。一旦大きなダメージを受けた有毛細胞は再生しません。耳鳴りも治りにくいという訳です。

 2015年にWHOは、中高所得の国の12歳から35歳の年齢層の約50%がスマートフォンなどで大音量で音を聞き続けていると報告していますので、これは身近な問題です。音量を大きくしないことが重要です。イヤホンを購入するときには、高くても「ノイズキャンセル」機能付きのものを選びましょう。周囲の騒音をかき消すような大きな音で聞いている場合は危険です。1時間以上聞いてはいけません。

 蒼野も通勤の帰りに、歩きながらYouTubeの健康動画をイヤホンで聞いています。交通量の多い道路ではついつい音量を上げてしまっていました。最近妻の高い声が、聞き取りにくくなっているので危険信号だったのです。もちろん加齢もあると思うのですが、早速、ノイキャンのイヤホンに買い替えないとと思っています。

 低い音の耳鳴りの場合は、耳垢栓塞,中耳炎、耳管が詰まって耳抜きが出来ないなど、内耳に至るまでの障害で聞こえにくくなって起こったりします。まず耳掃除からやってみましょうね!その他、メニエール病や突発性難聴や、聴器毒性のある薬剤など、難聴、耳鳴りの原因は多種多様ですので、突然起こった場合や、治りにくい場合は、やはり耳鼻科受診が必要だと思います。

 他覚的耳鳴は、実際に雑音があって、耳鳴りとして感じる場合です。血流豊富な腫瘍や、脳動脈瘤、血管狭窄や、硬膜動静脈奇形など、実際に聴診器で音が聴こえることもあります。稀な耳鳴りですが、脈と共に拍動する、ドックンドックンとか、シューシューとかいう耳鳴りは、MRIなどの詳しい検査が必要です。

 病院で耳鳴りを訴えると、耳鳴りの薬が出されるのですが、保険病名で耳鳴りとあるのはストミンAという薬だけです。内耳の血流を改善する薬ですが、正直あまり効きません。自覚的な改善効果は「抗うつ薬」「抗不安薬」「睡眠薬」などが優ります。またリボトリールという抗てんかん薬も、脳の過敏性を抑えることと、眠くなるため良くなったと言われることが多くなります。

 しかし蒼野はこれらの薬はあまり出したくありません。これらの薬はベンゾジアゼピン系のものも多く、依存になりやすく、無いと眠れなくなったりするからです。認知症の合併症も気になります。それだったら体操などで首こりを改善して、血流を増やしたり、耳周囲のツボや凝りのツボに留置鍼(パイオネックス)を貼ってみることから始めて、音響療法やTRTで、気にならなくなる治療が良いと思っています。

 耳鳴りは、通常は死んだりする病気ではない為、興味がないDr.も多かったりします。開業医さんだったりすると、薬を出して、依存になって通い続けてもらったほうがメリットが大きいです。でも、せっかく病院やクリニックに行ったのに、薬も出してもらえないと言うクレームも出たりするため、どこに行っても、薬は出されます。蒼野はまず漢方薬、飲めない時は副作用の少ないストミンAや、アデホスのような血流改善剤を、最初に出すことは多いです。

 外来の限られた時間で、上記の事を説明して理解してもらうのは、結構厳しいです。まずはちゃんと知ってもらう事が大切だなあと思っています。加齢性難聴は誰でも起こる事なので、それに加えて首凝りや、ストレスがかかると、耳鳴りとして出てくることが多いように思います。耳鳴りは無くならないので、軽減させたり、共存できるような治療がお勧めなのです。

 今日は耳鳴りについての蒼野の私見を書かせてもらいました。次の楽天マラソンで、どのノイキャンのイヤホンを買おうかなあとワクワクする蒼野でした!

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