薬剤乱用頭痛!

2022/07/11

 今日は、今までのブログでちょこっとは書いていましたが、取り上げて書いていなかった薬剤乱用頭痛(MOH)についてまとめておこうと思います。今度オンラインで頭痛の減らし方の講義をすることになり、自分の頭も整理しておきたいからです。

 MOH(=薬剤の使用過多による頭痛)は結構厄介な頭痛です。片頭痛が原因になることが多く、真面目な患者様である程、「仕事に支障をきたさないように」とか「今日は友達と舞台を見に行くので痛くなる前に薬を飲んでおこう」と考えてしまう方がおられます。どちらかというと市販薬で起こることが多く、気持ち的にも薬に依存してしまうのです。

 市販薬には鎮痛成分以外に無水カフェインなど、他の成分が入っています。複数成分の鎮痛剤(イブ、セデス、ナロンエースなど)では月に10日以上、単一成分の痛み止め(処方されるロキソニンやイブプロフェン、トリプタン製剤など)なら月15日以上を、3ヶ月飲み続けると、MOHが生じるリスクがあります。

 月の半分以上痛み止めが体内に入った状態になると、脳は痛みを感じにくくなります。痛みは本来、体内に不調があることを示す警報であるため、痛みが分からなくなると、悪いところが分からなくなってしまった、と脳が判断し、少しの痛みでも感じるように、脳の閾値(痛みの基準値)を下げてしまいます。

 つまり少しの痛みでも、とても痛く感じるようになるため、毎日、朝から晩まで痛むようになります。特に無水カフェインなどが配合されていれば、カフェイン頭痛のブログで書いたように、カフェイン離脱頭痛も併発するため、朝起き抜けから頭痛がして、辛い1日を過ごすことになるのです。

 昔は時々しか痛まなかったのに、最近は毎日頭痛がするという人は、この薬の飲み過ぎの頭痛を考えてみる必要があります。一度も病院を受診したことのない患者様であれば、まずは一度脳のCTやMRIを撮ることをお勧めします。毎日起き抜けから頭痛がする場合に、脳腫瘍が隠れていることもあるからです。

 典型的には、若い頃から頭痛持ちで、時々ズキズキする頭痛があります。市販薬で治っていましたが、だんだん薬が効かなくなって、違う薬を買ったり、量を増やしても一時的な効果しかなく、現在はほとんど毎日痛み止めを飲みますが、スッキリする時間がありません。起床時から頭痛があり、頭痛薬を飲んで1日をスタートする、というような生活です。

 重要なのは、薬を『何錠飲んだか』よりも『何日飲んだか』です。一日1錠で15日飲む方が、1日3錠で9日飲むよりも、MOHにはなりやすいのです。毎日のように痛むため、MOHは気分障害や不安障害なども伴いやすく、どうしようもなくなって受診される患者様が多いのです。

 自分でMOHかどうか判断するには、頭痛の基本である、頭痛ダイアリーを付けてみることです。何が誘因で起こりやすい頭痛なのか、薬をどんなタイミングで飲んでいるのか、薬が多すぎるのではないか、などに気づくことができます。

 治療法は一つだけです。原因となった鎮痛剤を止めることです。早ければ1週間、通常は2週間くらいすると、霧が晴れたように毎日の頭痛がなくなります。何年もこの頭痛を抱えてきた人は、離脱に1~2ヶ月かかることもあり得ます。ただ止めて時間を待つのは、その間の痛みが強いため、耐えるのが難しいです。ぜひ頭痛専門外来を受診されることをお勧めします。

 受診すると、離脱するまでの間の痛みをコントロールするために、片頭痛予防薬と、今まで使った種類とは違う鎮痛薬、片頭痛特効薬であるトリプタンやディタンなどが処方され、それらを飲みながら時間を待てば、MOHから離脱出来ます。

 予防薬としては、メンタル的にも薬物に依存にしていることが多いことから、予防薬の一つでありトリプタノール(抗うつ剤)を少量使うと効く人が多い印象です。蒼野は早く離脱を抜けれるように、数種類の予防薬とベースの違う痛み止めを用意し、どうしても痛くなった場合にはトリプタンやディタンで対処するようお話ししています。

 漢方が合いそうな証であれば、薬をやめるときにしばらく飲んでみるのも有効です。首が凝って吐き気を伴う片頭痛には『呉茱萸湯』。天気頭痛には『五苓散』、肩こりがひどい場合には『釣藤散』や『葛根湯』。生理関連の頭痛や、MOHの場合には『川芎茶調散』が乱用状態からの離脱を助けてくれる漢方薬となります。

 あとは自分が反応して頭痛を起こす頭痛の誘因を、生活の中で避けてゆくことが重要となります。片頭痛は頭部の血管が拡張すると起きやすくなります。以前も書きましたが、おさらいのつもりで、珍しい誘因も含めて書いておきます。

 血管を拡張するアルコールと特に赤ワインは頭痛になりやすいことで有名です。市販薬でのMOHの人はコーヒー好きも多いです。カフェイン離脱頭痛の人はコーヒーを飲むと少し落ち着くからです。カフェインの効果が切れると、血管が拡張し片頭痛を誘発します。

 カフェインと同様に、チョコレートや柑橘系の果物は、チラミンが交感神経を興奮させ、一旦血管が縮みますが、その後血管を広げる時に片頭痛を起こしやすくなります。中華料理や、チェーン店、ラーメン店、ジャンクフードなどに多いグルタミン酸Naや人工甘味料のアスパルテームも同様で、血管を収縮する作用があります。

 唐辛子のカプサイシンで血管が拡張すると、頭痛を誘発しますし、血液中の二酸化炭素濃度が上昇しても血管が拡張します。マスクやスキューバダイビング、息を止めて力を入れても頭痛につながります。満員電車では温度もCO2濃度も高くなります。

 ホットヨガや温泉、岩盤浴などの温熱でも血管は拡がります。サウナでととのうのも、血管の収縮と拡張を繰り返すことで頭痛が起こる人がいます。

 光の刺激でも片頭痛は起こりやすいため、スマホやパソコンのブルーライト、ゲレンデや炎天下の屋外、横断歩道、意外に映画やカラオケなども原因となります。匂い刺激でも起こるため、きつい匂いや香水、柔軟剤、タバコなども嫌な人が多いですよね!

 気圧変化としては、雨の前、台風、飛行機。女性ホルモンの変動で起こるPMSの頭痛、セロトニンの低下が起こる地震の前や、ストレスやストレスからの解放、休日にダラダラ過ごすこと。寝過ぎ、寝不足、大泣き、脱水、空腹なども誘因となります。

 薬が手持ちにない場合の応急処置としては、脳と頭皮の血管を縮めると緩和しやすいので、頸動脈を冷やしましょう、カフェインと糖分を一緒に摂ると相乗効果があるため、砂糖入りの冷たいコーヒーを2本買って、まず頚の両方を冷やします。その後ゆっくり飲むと片頭痛が治る場合があるので覚えておきましょう!

 片頭痛の80%の人には、肩こりや首こりを原因とする緊張型頭痛も併発しています。二つの頭痛はどちらかにはっきりと分類できるものではなく、ひどい頭痛の時には、トリプタンもしくはディタンと一緒に鎮痛剤も飲むと良いのです。

 蒼野は頭痛持ちでは無いのですが、妻や娘は頭痛持ちです。頭痛患者様も沢山見てきて、その辛さは少しは分かるような気がします。要素が沢山あって、頭に入りにくいとは思いますが、頭痛講座で丁寧に説明しますので、是非自分なりの頭痛対処法を会得して、薬剤乱用頭痛も含めて、頭痛に悩まされない人生を手に入れてくださいね!

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