鬱を消す食事!

2022/06/01

 今日は鬱を防ぐ食事の話です。昨日のMIND食を調べていて、鬱に関しても食事の影響が大きいという論文はたくさん出て来ました。鬱病は、世界的にも増加傾向にあり、自殺につながる疾患でもあることから、大きな問題になっています。鬱と食事の関係についての論文をいくつか紹介したいと思います。

 最初の論文は韓国の全国データを検討したものです。韓国における成人のうつ病有病率は、2006年5.6%、2011年6.7%、2013年10.3%と増加しています。2014年の韓国国民健康栄養調査で19歳以上の成人4,349人のデータが分析されました。

 鬱病有病率は、野菜や果物の摂取量が増加するにつれ、男性で6.4%から2.5%、女性で11.4%から6.6%へ減少していました。これは年齢、エネルギー摂取、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、外食の頻度などで調整しても有意な所見でした1)。

 次の論文は、イタリアで集計された、過去の観察論文のレビューで、31件の研究より、25万5,076人中、鬱病2万人の食事データを分析したところ、EPA、DHAを魚類から最高量摂取した群では、最低量の摂取に比べて、鬱病のリスクが低下していることが判明しています。1日量はEPA+DHAで1.8g摂ればリスク低下が認められました2)。

 うつ病では、脳内のセロトニンが不足していることが判明しているため、セロトニンの材料となる食事中のトリプトファンとビタミンB6の含有量についての研究もあります。トリプトファンは必須アミノ酸ですから、体内で合成できません。論文ではトリプトファンを多く含む食事の摂取が抑うつ症状の軽減に有用であることが示されました3)。

 トリプトファンの摂取が少ないと、脳内のセロトニンは減少します。食肉、卵、チーズ、魚に多い。このため、精神の安定にはこれらの動物性のタンパク質を摂取する必要があります。インスリン抵抗性があると、脳内に取り込まれにくくなるため、糖尿病があると、鬱になりやすくなります。

 また、食事パターン全般についての10件の文献レビューからの論文では、ほとんどの研究において、健康的な食事パターン(果実、野菜、赤身肉、ナッツ、全粒穀物が豊富、加工食品や糖質食品が少ない)と各年齢層における鬱病やうつ症状との間に逆相関関係が認められています4)。

 食事についての研究は観察研究や文献レビューが多いのですが、中にはランダム化比較試験も行われています。南オーストラリア大学で、魚油を補充した地中海スタイルの食事が、うつ病成人患者のメンタルヘルスを改善できるかどうか検討しています。

 うつ病成人患者を、2週間に1回の食料提供・3ヵ月間の地中海食の調理ワークショップ参加・6ヵ月間の魚油補充を実施した群(地中海食介入群)と対照群にランダムに割り付けて検討しています。対象は18~65歳の152例(地中海食介入群:75例、対照群77例)です。

 鬱病の減少は、地中海食スコア、ナッツの消費、野菜の多様性との相関が、有意に認められました。鬱以外のメンタルヘルスの改善においても、同様な相関が認められ、野菜の多様性とマメ科植物消費の増加において最も顕著でした。ω3脂肪酸の増加、ω6脂肪酸の減少、メンタルヘルス改善との間には、いくつかの相関が認められました5)。

 以上、魚をいっぱい食べて、肉や卵や乳製品のタンパク質をしっかり摂り、多種多様な野菜とナッツ、フルーツなどを沢山摂ると、鬱にはなりにくく、鬱になっていても治りやすくなるということのようです。認知症を防ぐ食事とほぼ一緒ですね。

 外国の研究が多いことから、特に地中海食が勧められているようです。鬱病、アルツハイマー型認知症だけではなく、脳全般の疾患予防、心臓病やがんや、糖尿病などの生活習慣病予防のためにも、地中海食や、塩分少なめの伝統的な和食などがもたらす良い影響は大きいということなのだと思います。

 具体的にはアミノ酸スコアを考えて、動物性タンパク質7対植物性タンパク質3の割合で、体重×1~1.5g/kg/日の十分なタンパク質を摂取しましょう。魚の比率を増やす、特に青魚のEPA、DHAを増やすと、気分が上がります。

 多種多様な野菜や果物、ナッツなど、要素で言えば、ビタミンD、B1、B2、B6、B12、葉酸などのビタミン。鉄や亜鉛の不足とうつ病に関連性があるといわれていますので、不足しないように摂りましょう。腸内細菌の代謝による補給が重要ですから、善玉菌を増やすための腸活は必須です。

 糖質や食品添加物の入った超加工食品の摂取過剰は、ここ10年間で倍増し、現在20人に1人発症していると言われる、鬱病の増加に影響していると考えられます。インスリン抵抗性がある状態では、脳内にトリプトファンが入ってゆかなくなるため、メンタルの低下の原因になりやすいのです。

 産後鬱などは、出産による鉄分消費が補えずに起こるとも言われています。鉄分が不足すると、疲労・焦燥感・無関心・集中力の低下などのうつ症状が現れます。日本人のほとんどで不足しやすいミネラルですので、十分な注意が必要です。

 まとめますと、鬱を消す食事は次のようになります。

  1. 食事は3食は欠かさずに、特にタンパク質を体重×1g/kg/日以上摂りましょう。
  2. ゆっくりと、家族や仲間といっしょに、よく噛んで食べましょう。
  3. 糖質のとりすぎに注意、ジュースなどは摂らず、甘くないものを飲みましょう。
  4. 野菜はなるべく多くの種類を、毎食たっぷりと(1日350g以上)
  5. 魚は週に3回以上。
  6. 主食は玄米や胚芽米、全粒粉パンなどを適量で。
  7. オリーブオイルなどの良質の油を摂りましょう、揚げ物やスナックなどの酸化した油やトランス脂肪酸は避けましょう。
  8. 豆やキノコ、海藻、ナッツ、果物を摂りましょう。
  9. 乳酸菌や食物繊維で腸内環境を整えましょう

昨日とほぼ、同じやないか! と自分でも思ってしまいました。

 あとは、最低6時間以上の良質の睡眠と、朝散歩でセロトニンを増やしたり、週150分の運動習慣を守れば完璧です。いっぺんには難しいかと思いますので、一つずつでも増やせると良いですね! 鬱も認知症も、生活習慣病も、防ぐための生活習慣は同じなのですね!

 おかげさまで、生活習慣が整ってきて、落ち込むことはほとんどない蒼野でした。

1)Low fruit and vegetable intake is associated with depression among Korean adults in data from the 2014 Korea National Health and Nutrition Examination Survey. :J Health Popul Nutr. 2019;38:39

2)Dietary n-3 PUFA, fish consumption and depression: A systematic review and meta-analysis of observational studies. : Journal of affective disorders. 2016 Nov 15;205;269-281

3)Effect of diet on serotonergic neurotransmission in depression.: Neurochemistry international. 2013 Feb;62(3);324-9

4)Dietary Patterns: A New Therapeutic Approach for Depression? :Current pharmaceutical biotechnology. 2019;20(2);123-129

5)A Mediterranean-style dietary intervention supplemented with fish oil improves diet quality and mental health in people with depression: A randomized controlled trial:Nutritional neuroscience. 2019 Jul;22(7);474-487. 

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