10月からの医療費!

2022/09/13

 2022年10月1日から、一定以上の所得のある75歳以上の窓口で払う医療費が、1割から2割に値上げになります。値上げラッシュの今の時期に、医療費まで支払いが倍と考えると、結構辛い感じがするのではないでしょうか? 今日は医療費の問題について、経済には詳しくない蒼野なりの私見を書いてみたいと思います。

 コロナ禍やウクライナの問題があって、現在食品や家電、ガソリンなど物の値段が高騰してきています。一般的にはインフレと呼ばれます。景気が拡大して、賃金が上昇し、需要が供給を上回り、物の価値が上がるインフレは歓迎すべきなのですが、今回のインフレは、世界での供給が滞って、物が手に入れにくくなるために起こったインフレですので、全く嬉しくありません。

 それとは別に、日本の少子高齢化は、着実に進んで行きます。日本人口に大きなボリュームを占める団塊の世代が、2022年から75歳以上の後期高齢者になります。戦後の1947~1949年は、日本がベビーブームに沸いた時期です。この3年間に810万人が生まれ、それは他の年に比べて突出した数だったのです。

 1947年生まれの方が75歳を迎えるのが今年です。2024年には団塊の世代の約600万人が後期高齢者になるということになります。後期高齢者医療制度の医療費の財源は、75歳以上の高齢者自身の保険料は10%で、国や地方の税金が50%、残りの40%は74歳以下の人が加入する健康保険から支援金として負担することになっています。

 そして、この支援金を支払うために、現役世代の健康保険料は年々増加しているのです。今後ますます負担が増加することを避けるために、余裕のある高齢者には自己負担割合の引き上げを求めるというのが今回の値上げの理由と、厚生労働省は説明しています。

 全員が値上げになるという訳ではありません。ちょっと難しいのですが、1、世帯の中に課税所得28万円以上の人が、1人でもいることと、2、年金年収とその他の合計所得金額が、単身世帯は200万円以上、後期高齢者が複数いる世帯は320万円以上の、二つを満たした場合に2割負担になるということです。元々383万円以上の年収がある方は現役と同じく3割で負担されていました。

 試算によると、後期高齢者全体の23%がこれを満たすとされています。医療費が高額になった場合には、今まで通り高額医療の補助も使えるため、厚生労働省によると、年間平均で2万6千円負担が増えるだけだと説明されています。

 高額医療については、入院がほとんどなので、基本的には外来での支払いが多くなるということになります。外来を受診する患者の6割が2倍の負担になると見られています。急に2倍になると受診控えなどにつながることも懸念され、移行期間の3年間は、ひと月の負担の増加額が、最大でも3000円に収まるようにするとしています。

 今まで1割負担で月5000円払っていた人は、本当は月1万円になるけど、8000円に抑えますということになります。しかし今回の制度改革で、75歳以上の医療費のために現役世代が負担する保険料は2025年度でみても一人あたり年に800円しか減らないと試算されていますので、まずは第一弾と言う事で、今後も徐々に2割負担の対象は広がりそうです。マイナンバーカードなどからの資産情報なども判断に使われそうですね!

 蒼野としては、日本が高齢化のピークを迎える2040年を乗り越えるためには、こうやって負担を増やすだけでは、問題が解決しない気がしています。一番取り組むべきなのはやはり予防医学だと思うのです。病気にならなければ医療費は要りません。人生100年時代を迎えた今、健康寿命の延伸が、問題の根本解決手段になると思います。

 高齢者の健康に大きく関わるのが、疾病予防、重症化予防、そしてフレイルの問題です。しかし後期高齢者で健康に関心があり、気をつけている人は実はとても少ないのです。健康診断を受ける人は後期高齢者では25%に過ぎません。

 関心が無く、健康の知識も無ければ、現代の歪んだ食生活や、家電や交通の発達による運動量減少はそのまま、高齢者の生活習慣に直結してしまいます。仕事をしなくなり、社会と繋がりがなくなって、自宅でゴロゴロ過ごしていれば、全員がフレイルになってもおかしくないのです。

 現在病気が無い、あるいは薬で症状が緩和されているので困っていないという状態だけでは、完全な健康状態ではありません。ある時から日常生活に制限がある状態へと移行します。現在の日本ではこの期間が男性で8.84年、女性で12.35年あると言われています。

 そしてそのうちに日常生活動作が、自分で行えない要介護2レベルに移行し、人生の終わりに近づいてゆくことになります。この歩行や入浴、薬や金銭の管理に支援が必要な状態が、男性で1.51年、女性で3.30年あるのが現実なのです(2016年)

 これを防いで、健康寿命を延伸するには、やはり暮らし方になります。高齢になると認知症の問題も大きくなりますので、自宅に引きこもらなくても良い、社会作りがポイントになると思います。加齢によって衰える部分があっても、働けるところが増えたり、地域の活動に参加しやすい制度を作ったりすることは重要だと思います。

 地域活動の参加頻度と要介護リスクとの関連を調べた論文があります1)。65歳以上の11992人を9年間追跡し、ボランティア、趣味、町内会などの活動への参加頻度と、介護度について前向きに調査を行いました。

 要介護リスクは、参加していない場合を1とすると、1種類の活動に参加する場合は 0.79、2種類の活動に参加する場合は 0.82、3種類の活動に参加する場合は 0.70と低下していました。参加することで頭を使い、歩行時間も長くなり、メンタルも良くなることが影響したと推測されています。

 2040年に向けて、高齢者の健康寿命を伸ばし、働ける期間を伸ばし、医療費を削減してゆくためには、医師の仕事も診察室での仕事だけでは難しいと思います。病気の治療だけでなく、日常生活の指導や運動習慣をつける事による病気の予防、社会参加できる連携、働く際のメンタルのサポートなど、医療と社会を繋ぐところでも活躍してゆく必要があると思います。

 日本人は、国民皆保険に慣れてしまい、病気になって困るまでは、健康に関心が無い人がまだまだ多いのが現実です。最近健診の仕事をした時も、健康に関心がある人は、少数派であることを感じました。また逆にデジタル社会となったことで、健康情報が溢れすぎで、何が本当か分からなくなって来ている時代でもあります。

 蒼野の想像の世界ではありますが、どんどんAIも発達しているので、食事、運動、睡眠などの生活習慣や、痩せや肥満、検査データ、遺伝子解析や腸内細菌解析なども含めて、個別にリスクの評価と介入ができる時代が来てもおかしく無いように思います。予防の方が断然お金は掛からない上、元気な人が増えるのだから、一石二鳥以上の効果がある方法だと思います!

 本当に激動の時代だと思います。絵空事のような事を、つらつらと書いてしまいましたが、社会を変えるにはやはり政治なのかなと思います。坂本龍馬の様な、日本の夜明けを作る人が出て来てほしいなあと願う蒼野でした!

参照文献:

1)Association between social participation and incident risk of functional disability in elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006.   J Psychosom Res 2018;111:36-41

参考ページ: 2040年に向けて2020年からの医療界展望 
                https://www.recruit-dc.co.jp/contents_feature/no2001a/

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